開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
4月23日の土曜日は一日鍼灸専門学校の学生さんが来院しました。
まず午前中に学生向け公開セミナーを実施。テーマは「東洋医学と西洋医学の比較、経絡と中医学の比較」でした。
”公開セミナー”というのは参加者を外部から募るという意味です。新型コロナウィルスが流行る前に私の知識をアウトプットする機会として始めた学生向けセミナー。人に話すことから学び、資料作成することで考えがまとまる。そのような状況を自ら作りました。そうしないと一人で開業しているため、学生時代のような定期試験も組織に属している場合の同僚や上司から見られることもなく、律する場がありません。定期的に持とうと考えました。
新型コロナウィルス流行により緊急事態宣言、まん延防止策などがあり誰でも参加どうぞというスタイルを控えて、既に知っている学生さんを招いての非公開セミナーを実施してきました。昨年年末に一度外部受入れる公開体制で再開するも、また非公開に戻しました。今月になってまた外部に参加者を募るスタイルに戻して行ったのです。
話すテーマ自体は過去に行ったもの。一度作成した資料を改良しています。タイトルもマイナーチェンジをしており、以前は「経絡と中医の比較」でしたが今回は東洋医学と西洋医学の比較を加えました。東洋医学(伝統医療、東洋思想、鍼灸などのニュアンスを含む)と西洋医学(現代医学、標準治療、科学などのニュアンスを含む)をまず対比させます。私が代々理科系の家系に生まれたこと、自身が東京理科大学で物理(特に半導体)を学んだことを踏まえて物理学と生理学の違いから話を進めます。そして私が鍼灸マッサージ専門学校時代に持った“鍼灸は科学とは言えないのではないか?”という疑問に触れました。そこから西洋医学と東洋医学は何が違って何が共通しているのか。そのように話を進めます。根底に理科系脳による、東洋医学の胡散臭さ、を根底にあった私がそれをどう咀嚼して今に至ったのか。そのストーリーに乗せて話しました。
続いて鍼灸の3代流派(派閥)について説明します。
10名の鍼灸師がいれば10の鍼灸があると言われるくらい十人十色、千差万別の世界。大きく3つに分類してその特徴を挙げます。更にそこから世間で認知されているであろう「東洋医学」の範疇にあたる、学生にとっては「東洋医学概論」で学ぶ、経絡治療と中医学の比較をしていきます。この点は業界のパワーバランスや状況によって影響を受けるものであり、客観視することがなかなか難しいところだと考えています。参加者はこの春に入学した1年生から最高学年の3年生までいました。1年生にはかなり理解に苦しむ内容だったと思います。3年生になるとそうそうと納得するものだと思われます。
全編に渡ってあった裏のテーマは比較すること。比較することで短所長所、特徴がはっきりします。個人的には比較鍼灸学(という内容の学問)が必要だと考えていて、個々の流派がメリットをあげるだけでなく他と比較してどのような立ち位置なのかを研究、考察することが必要だと思います。そうでないと初学者の学生さんは混乱しますし、一般の患者さんはもっと複雑でよく分からないものに鍼灸がなるのではないかと。
セミナー終了後はざっくばらんに参加者で意見交換をする場を設けました。参加者には私が初対面の学生さんが3名。初対面ではありますが過去にSNS上でやり取りをした方が1名。完全に今回が初めてという方が2名。過去に当院のセミナーに参加したことがある方が2名でした。つまり互いに初対面が多いという状況だったので最初のうちは探り合いという控えめな雰囲気。それが段々とこれからの鍼灸について意見が出始めると議論が活発になりました。
セミナー最初に自己紹介をしてどうして鍼灸専門学校に進学したのか、卒業後鍼灸師になったらどうしたいのかを個々に軽く語ってもらいました。学校も年齢もバックボーンも違う参加者がそれぞれのスタンスで感想、展望、意見、具体的施策を出します。それが私にとって刺激的でまた参考になりました。はっきり言って鍼灸(東洋医学)に何の憧れも期待も持たずに専門学校に入学した私とは、参加した皆さんと進学のモチベーションが違います。今更ながらこれだけ情熱を持ってこの業界を選択したことに感謝したくなりました。また学生だから、プロ(鍼灸師)でない今だから、考えていることが興味深いわけです。ありきたりな表現ですが“明るい未来”を感じました。
セミナー終了後にずっと残った学生さんが3名。そこに午後から学生ペア割でまた別の学生さん2名が来院しました。20日、21日に開催した非公開セミナーに参加したある学生さんがクラスメイトを連れて、体験と見学を兼ねて来院しました。互いに鍼灸学生さんなので、双方が良かったら見学しませんかと提案。午前中のセミナーに参加した学生さん3名も見学することになりました。
学生ペア割の方は個々の主訴(辛いところ、症状)から希望の施術内容を選んでもらいます。それを踏まえて私が解説しながら実際に施術します。お一人目は按摩指圧、二人目は鍼をメインにしました。施術において各ポイントとなるところで、ペアの方に被験者の身体を触ってもらって前後の状態を確認してもらいます。私がなぜこの手技を行うのか、どのような効果を狙っているのか、機序はどのようなものかと予想しているのか。毎度のことながら時間がかかってしまいますが説明解説をしながら進めていきます。
普段の学生ペア割のときと異なるのは他に3名見学する方がいること。交代で着替えるときに学生さん同士で雑談をしていました。専門学校が異なるので情報交換の機会になります。
後半の学生ペア割は実技、実際の臨床を体験・見学する時間になりました。学生さん達は学校の授業や附属施術所とは違った体験ができたのではないでしょうか。鍼灸マッサージ専門学校教員免許持ちである以上、学校に勤務していなくとも学生さんに何かを教える義務はあると考えています。少なくとも母校の校長はそうであるとしています。開業しているからこそ所属する学校にとらわれずに他校の学生さんが集まって交流できた。それが特に大事だと思います。
前半のセミナーのときと同様に他校の生徒と比較するから自分のことが明確になる。立ち位置が分かる。反対に現在の学生さんの様子から10数年空いている自身の学生生活とのジェネレーションギャップを埋めて頭の中を更新することができます。「昔は」「自分の頃は」という言葉が意味を成さないことを知らないといけません。
前半の学生さん達と交わした議論。後半の臨床見学。その場に居合わせた学生さん達に財産になってもらいたいですし、また私には大きな経験として蓄積されました。
甲野 功
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