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先日、重要だと思われる判決が東京地方裁判所で出されました。それは大手ポータルサイト(口コミサイト)『食べログ』の運営『カカクコム』に3840万円の賠償支払いを命じたのです。
日本経済新聞 食べログ側に賠償命令、評価点下落「優越的地位の乱用」
2022年6月16日 13:19 (2022年6月16日 21:41更新)
この記事によると『食べログ』での評価が不当に下がった結果、売上が減少したとして、焼き肉・韓国料理チェーン店「KollaBo」を展開する『韓流村』が2020年5月に訴訟を起こした判決によるものです。『食べログ』での評価点を決めるルールにあたる“アルゴリズム(計算手法)”の妥当性が争われた初の司法判断とみられています。
『食べログ』は利用者が飲食店を利用した際に5段階評価を『食べログ』サイトに投稿します。その平均点が公表され、利用者はその点数を参考にしてお店を選びます。当然ながら平均点が高ければ評価が高いということですから集客が見込めます。また『食べログ』サイトからお店の予約を入れる導線がしかれており、お店の評価を含めた情報を確認してそこから予約に進むという流れができています。“アルゴリズム”は評価点数や表示順位を決める際の独自基準として用いられています。これは『食べログ』に限らず他分野のポータルサイトでも用いられています。
問題はどのように点数を算出しているのか、アルゴリズムの中身はどうなっているのか、が公表されておらずブラックボックス状態であるのです。今回訴訟を起こした原告である『韓流村』は2019年5月、運営する21店舗の評価点が平均約0.2点下落し(他の報道では最大0.45点下落した店舗があるとのこと)、そのせいで『食べログ』経由の来店客が月5,000人以上減ったとしています。事情を知らないと0.2点程度関係ないだろうと感じるかもしれませんが、これはかなり大きな数字となります。印象が大きく悪くなりますし、実際に月5,000人が同サイト経由の来客が減ったとしています。これは『食べログ』が2019年5月21日にチェーン店の評価を一律減点するよう基準を変更した(アルゴリズムを変更した)ことが原因だとして、2020年に5月に原告は被告『カカクコム』(『食べログ』運営会社)に対して約6億4000万円の損害賠償などを求める訴訟を起こしていました。
そして今回、東京地方裁判所は3840万円の賠償支払い命令を下したのです。なお被告は即日控訴したといいます。
この判決のポイントは、ポータルサイトのアルゴリズムの妥当性を判断する初めての司法判断であろう、ということ。原告は損害賠償を請求するとともにアルゴリズムの使用差し止めを要求していました。しかしこの判決ではアルゴリズムの使用差し止めに関しては認められませんでした。
判決の決め手として、裁判長は被告側がアルゴリズムを握っている状況が独占禁止法で禁じている「優越的地位の乱用」に当たると判断したことです。記事によると『「カカクコムが不利益な要請を行っても(飲食店側が)受け入れざるを得ない立場」として優越的地位にあると認定した。』とあり、原告側は被告側よりも弱い立場にあるとしています。記事は『その上でアルゴリズムの変更は「あらかじめ計算できない不利益を与えるもので、公正な競争秩序の維持から是認される商慣習に照らして不当であり、優越的地位の乱用に該当する」と強調。「チェーン店が不利益になることを容認して変更しており、故意または重大な過失がある」と結論づけた。』と続いており、原告側の経営状況が不利になると分かった上でアルゴリズムを変更したと判断したと読み取れます。
他の報道によると、2021年6月に裁判官が公正取引委員会に見解を求めており、同年9月に意見書が公正取引委員会から出されました。裁判所は公正取引委員会に独占禁止法の解釈に対して意見を聞いた上での判決であります。
文春オンライン 〈食べログに3840万円賠償命令〉“点数急落”韓国料理チェーン店が勝訴の裏に「異例の意見書」
実情はどうなっているかというと(報道によれば)『食べログ』には約82万店が掲載され、サイトの月間利用者数は8,700万人(2022年時点)。公正取引委員会が行った2020年の調査では消費者の約83%が点数を参考に飲食店選びをしているとあります。規模も利用者も非常に大きなプラットフォームであり、影響力が非常にあることがうかがえます。飲食店は『食べログ』に頭が上がらない状況と言えるでしょう。
この状況は飲食店に限らず私のような個人経営の鍼灸マッサージ店にも該当するわけです。ポータルサイトに登録してその点数で評価を判断されてしまう。集客の首根っこを掴まれている。そのような状況が起きうるのです。
私もかつて大手ポータルサイトに登録したことがありましたが、その評価点数は非常に疑わしいものでした。口コミが全くないのに評価平均3.01点のように勝手に点数が表示されています。反対に利用者が4点や5点の評価点数を入れたとしても平均点が動かないことも。単純な算数ができていないわけで、分母が0ならば0.00点にしかなりませんし、5点だけが一つ入れば5.00点になるはずです。ところが実際にはどうやって計算したのか不明の平均点が表示されるのです。飲食店のように口コミ数(評価数)が膨大になれば分かりますが1~2件の評価では平均点は簡単に計算できるわけで、間違いようがありません。ではなぜそのような平均点になるかというと、サイト独自の“アルゴリズム”によるからだというわけです。これが有料会員になるとなぜか口コミ数が入らなくても平均点が上がることが知られています。しかも掲載順位も関係していて、地域や疾患など特定の条件を入れて検索をかけたときに有料会員の方が上位に表示されます。それは平均点と関係が無いと思われる場合があると。
このことはずっと前から『食べログ』では声が挙がっていて、有料会員を辞めたら一気に点数が下がった、有料会員になったら何もしていないのに点数が上がった、ということがSNSに投稿されていました。更に良かれと思い、お店の改善を促すために好ましくない点を指摘した投稿がサイト運営側から削除されたという話もあります。これではサイト側が情報を操作していて消費者の声を反映していないと判断されてしまうのです。今回訴訟を起こした原告もチェーン店が一律点数を下げられたと訴えています。個人店よりチェーン店だから飲食店の質が低いと不当に点数を下げられたとしているのです。どのような基準で点数を付けているのかアルゴリズムを開示せよという要望にサイト側は応じません。
私も同じような経験があります。ある大手ポータルサイトに登録したのですが全く集客に繋がりません。有料会員に1年間入ったのですが効果は無く。そしてある時に全く身に覚えのない口コミが投稿されました。私は一人で運営していますし、全ての施術記録を取っていますから間違いなく来院された人の内容ではありません。その投稿に「来院された方ではありませんね、どなたでしょうか?」と質問を投げかけたところ、運営側から規約違反のコメントだとして質問は削除されました。どういう規約なのでしょう。どう考えてもサクラが勝手に投稿したものとしか考えられません。それではこの口コミ自体が嘘なので削除をしてくれとサイト側に申請したところ却下。自院が掲載されたページにありもしない口コミが掲載され、それをどうすることもできない。これがここのやり方か、と憤りを感じ、有料会員を辞めると共に掲載自体を止めるように申請を出しました。しかし全く対応してくれずサイトに当院のページは残ったまま。あきれ返って屋号と住所など最低限の情報だけを残して画像や店舗情報を消してしまいました。
もしもこのポータルサイトに集客が依存していたら言いなりになるしかないでしょう。暗にお金を払わないと集客できないよと圧力を掛けられるわけです。そうならないように私はポータルサイトの類から手を引くことにしました。
更には私の許可なく勝手にサイトに掲載されているケースもあります。当院のホームページから情報を得てサイト運営が入力したのでしょう。そして適当な案内文と点数を勝手に付けられています。
今回の『食べログ』賠償支払い判決は本当に大きなものになると考えています。控訴したのでまた数年は裁判が続くかもしれませんが、大手ポータルサイトに言いなりになっていた店舗側が不当だと声をあげるきっかけになるかもしれません。そしてこの判決が報道されることで『食べログ』の信頼が崩れる可能性があるわけです。ユーザーが投稿した数字は無視されて運営側の都合で点数が決まっていると認知されれば、その評価を信頼することはなくなります。現に誰が投稿しているのか、どうやって点数及び掲載順位が決まっているのか、不明なポータルサイトの情報よりも、個人が見えるSNSアカウントの情報を信じる傾向が強まっています。それが悪い点もありますが。健全な運営をしてこなかったツケを支払うきっかけとなる判決だと個人事業主の私は強く感じています。
甲野 功
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