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~社交ダンス業界の復興が見えた~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 日本インター
日本インター

 

 

2020年から始まった新型コロナウィルスによるパンデミック。多くの産業が大打撃を受けました。当初は楽観視していたものの瞬く間に全世界に感染拡大し、日本では緊急事態宣言、諸外国では都市のロックダウンが起きました。史上初の近代オリンピック延期という事態になりました。東京はオリンピック開催において、辞退・通常開催・延期開催という3つのパターンを全て経験した稀有な都市になりました。

今なお影響が残っているいわゆる“コロナ禍”。特にダメージを負った業界は飲食業界、旅行業界がまず挙げられます。実務面として医療業界もそうです。この3つの業界に関する報道が2020年以降繰り返しなされてきました。

もちろんこれら以外にも多岐に渡って影響を受けました。その一つに『社交ダンス業界』があります。

 

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号のクラスターでは船内で行われた社交ダンスのパーティーが大きく関与したと報道があり、かなり早い段階でやり玉にあがった感じがありました。今ほどこの病気・ウィルスについて分かっていなかった時期。不特定多数の人間が接触して踊り、飲食をすることは、いかにも感染拡大を招いたと印象付けました。それから数多くの社交ダンスイベントが中止となり、社交ダンス教室も統廃合が進んだと思います。

 

私は大学から学生競技ダンスの世界を知りました。

最初から最後まで社交ダンスを競技として行う。参加者大学生のみ。学校を背景とする団体競技。最初は分かりませんでしたが社交ダンス業界においても、それは特異な世界でした。この業界はプレイヤー別にプロフェッショナル、アマチュア、学連(学生競技ダンス連盟)の3つに分類できると言えるでしょう。プロか否かで考えればプロフェッショナルかアマチュアかの2拓になり、学連はプロフェッショナルではないのでアマチュアに分類されるのですが、かなり特殊な文化を持っています。現在は社交ダンス経験者の学生が増えてきていますが、私が大学で始めた四半世紀以上前の頃は、ほぼ全員が未経験者。大学4年間で完結する世界。出場選手は同世代(同時代)の大学生のみ。同期となれば4年間ずっと競技相手になります。

 

4年間で卒部という形になるので常に世代交代が進みます。卒部後(あるいは途中で脱退したのち)にターンプロといってプロフェッショナル選手に転向するパターンとアマチュア選手として競技を続けるパターンが競技ダンス選手としての道。それ以外に趣味として嗜む、きっぱりとやめるという選択肢もあります。職業として携わる場合はもちろん、いちアマチュア選手として、愛好家として、OBOGの社会人としてと、どのような状況でも多かれ少なかれ学連の、社交ダンスとの関りは残るものです。かく言う私も学連と出会わなかったら人生は大きく変わっていたことでしょう。社交ダンス業界と間接的な繋がりが(個人事業主としても)経営面であります。

 

2020年の前半はそれまで来院されていた競技ダンス選手、社交ダンス愛好家の患者さんが一切来なくなりました。2020年2月末から5月までは外出することも危険だというくらいの社会状況が東京都内、特に都心部にありました。当院がある新宿区は“夜の街、新宿”としてクラスター発生多発地として認識されていました。歌舞伎町など目の敵。都知事がいる東京都庁とは大して距離があるわけでもないのに。都外からの患者さんは足を運べるはずもありません。

 

何よりイベントが全て中止で練習も踊ることもできなくなりました。ダンスパーティー、競技会、練習会、合宿。全てが中止。ダンススタジオも軒並み営業自粛要請で閉まりました。例年であれば通年で開催される競技会も、競技会シーズンの狭間にあるダンスパーティーも海外での遠征もできなくなり、プロ選手及びインストラクターは活動を断たれました。例年であれば渡英するプロフェッショナル選手の後輩たちも日本に残っていました。かといって暇ができたから田舎に帰ってのんびりすることもできず。東京から地方に移動することは強い抵抗がありました。私の知り合いのプロフェッショナル選手達は本当に何もできない状態でした。

学連も同様で大学が開かないので校舎で練習ができません。競技会も開くことができません。毎年新入生を集める4月も活動ができないので部員が減る傾向に。2020年時点で部員だったものも、この状況では活動ができないため、少なくない人数が辞めていったと聞きました。

社交ダンス愛好家はその多くが高齢者。当然罹患したら高リスクであるため社交ダンスを控えることになります。本人がやる気でも、家族がよしなさいと止める。ダンススタジオが再開したとしてもお客さんが戻るには時間がかかったところが多くあるようでした。このような愛好家によって一流ホテルを使用した大規模なダンスパーティーが開けるわけです。ダンススタジオの経営的打撃は大きかったことでしょう。

 

プロ選手、学連選手、アマチュア選手、愛好家。全てのプレイヤーで活動できなくなったため当院に来院していただいた社交ダンス関係者はゼロになったのでした。

 

あじさい鍼灸マッサージ治療院は医療機関にカテゴライズされたため、東京都から営業自粛要請対象外であり、ずっと営業が継続できました。もちろん社交ダンス関係者以外の患者さんがいるので影響は比較的小さかったと言えます。これがダンススタジオを筆頭に社交ダンス関連を本業にしている人々は私より遥かに大変だったはずです。

2020年以降、いくつかの大手ダンススタジオで閉業、合併、規模縮小というニュースが目につきました。バレエ・ヨガなどダンスファッション全体を扱ってきた大手メーカーChacottは社交ダンスからほぼ撤退。名前の知っている先生が廃業したという話も聞きました。プロ選手の知り合いは誰もが大変だと声を揃えたものです。

学連も新入生勧誘ができない上に部活動ができないので部員が激減。超強豪校だった大学が2020年を境に成績がガタ落ちになったところもありました。何より大会も合宿も練習会もできなくては学生競技ダンスという文化そのものが消える恐れがあります。誰もが4年経てば卒部という形で巣立っていくシステム。

 

一時期には、本当に社交ダンス業界は衰退すると思いました。

 

ところが他の産業と同様に、社交ダンス業界はしぶとく生き残り、復興に向かって立ち進んでいます。

閉鎖されるダンススタジオがあれば新しく始めるところもあります。テナント料が下がることでむしろ開業しやすい場合もあったようです。またコロナ禍を前向きな機会に若い人間に経営を譲る動き。新しく挑戦する方もいます。また遅々として進まなかったネット決済やSNS対応、競技会の配信、リモートレッスンといったIT周りのインフラが大きく前進しました。著作権、肖像権を盾に閉鎖的だったSNSへの露出と動画配信がコロナ禍によって大きく進展したと言えます。

また海外から選手を招待できなくなったため国内選手の横の繋がりが深くなった気がしています。どの世界も同じことがあるのでしょうが、社交ダンス業界も団体の分裂が繰り返されてきました。特にロンドンオリンピックに続き東京オリンピックでも種目採用される夢は叶わず、オリンピック種目のために向いていた意識が無くなっていました。スタジオレッスンやダンスパーティーなどで一緒にダンスをすることができない、大人数の選手を集めて競技会を開催できない、といった不利を映像コンテンツとして届けようという動きが起きます。プロフェッショナル選手からすれば苦肉の策だったことでしょう。YouTubeやTikTok、Instagramにダンスをしている動画を投稿する。それまではプロのダンスを無料で視聴することはかなわなかったのですが、そんなことを言ってられません。またショースタイルで団体の垣根を越えて選手が集結して一つの作品を作り配信する。競技会も有料・無料を問わず動画配信が当たり前になってきました。

 

そして社交ダンス業界の復興を形として見えたのが先の日本インターです。正式には『第43回/2022年日本インターナショナルダンス選手権大会』。日本武道館で6月18日、19日に開催されました。日本インターはずっと日本武道館で開催してきましたが、今年は3年ぶりの開催となりました。東京オリンピックに向けた改修工事、パンデミック、東京オリンピック開催のため、同施設を使用できず。やっと元の場所に戻ってきました。当たり前のように日本武道館を使用していると思う方も多いでしょうが、日本武道館を使用するのは信用・実績が無いといけません。単に使用料を払えば借りられる場所ではないのです。もちろんお金は必要ですが。日本武道館を使用できるというのは運営であるJBDF(公益財団法人日本ボールルーム連盟)の組織力とそれまでの信用があってのことです。

日本武道館という昨年東京オリンピックで柔道競技会場になった日本を代表する施設。キャパシティーも大きく数多くの観客を集めることができます。当然入場料で入る金額も大きいわけです。更に広告を出すスポンサーや協賛企業がいます。ブースを出展することで現場での売上が見込めます。大会パンフレットは2000円と安くない値段と言えますが膨大な出場選手の情報を得るためには手元に置いておきたいアイテム。パンフレット販売額もバカにならないと思います。

 

そして今大会は有料動画配信を行っており、地方あるいは海外の人も視聴可能です。東京まで来て入場はできないが配信料を支払っても観たいという人はかなりいることでしょう。また会場で生観戦した上で、その後の確認のためアーカイブ視聴するために買う人もいると思われます。何より映像コンテンツとして今後も番組コンテンツとして2次利用が期待できるわけです。今はDVDにしてもなかなか売れない時代です。反面、データ配信で長く販売するのに適しています。

 

そしてチケット購入もサイトでできました。私が学生の頃はダンススタジオや個人の先生を通して購入していたもので、なかなか一般の人には分かりにくかったと思います。さすがに日本インターナショナルクラスのビッグイベントではチケットぴあで買えたかもしれませんが、多くの社交ダンスイベントは手売りが基本でした。今回、私の知り合いが同級生が日本インターに出場するから応援に行きたいという希望によって、現地観戦が決まりました。一応知り合いに確認しましたがどこでチケットを買っていいのか見当もつかないですし、どの席がいいのかも分からなかったといいます。

 

また今大会では「観る専パック」が導入されました。これは数年間から始まった企画で社交ダンスに興味はあるがよく仕組みが分からない一般客に向けて、引退したプロの先生がガイド付きで大会を楽しめる格安プランです。私の知り合いもそうですが一人で会場に行ってもなかなか理解できない世界であります。競技会中にいちいち、種目にはスタンダードとラテンアメリカンがありまして~とか、プロフェッショナル部門とアマチュア部門の違いは~とか、説明がアナウンスされません。どの選手が注目とか、どこが凄いのかなど説明してもらわないと厳しいでしょう。

長らく部外者は要らない、関係者だけで会場が埋まるという姿勢が見えていた社交ダンス業界も積極的に新規観客、それも社交ダンスをしない観戦を楽しむ層に目を向け始めたと言えます。奇しくも一緒に踊ることが難しくなった社会環境が積極的に世間に情報を発信する推進力になったと言えます。

 

そしてプレイヤー、競技選手も日本武道館という場で踊れることを楽しみにしていたという声をたくさん目の当たりにしました。例年は2日間に分けて、主に<アマチュアスタンダード部門&プロフェッショナルスラテン部門>、<プロフェッショナルスタンダード部門&アマチュアラテン部門>で開催していましたのが、今年は2日目の6月19日にアマチュア・プロフェッショナル両部門全部門を1日でするというスタイルになりました。スタンダード、ラテンの両方に出場する選手は大変ですが、観客は1日で全部門の競技が観られるという利点がありました。私も各部門に知り合いの選手が出場するので1日にまとまっている方が助かります。

 

それでは初日の6月18日は何をしていたかというと、アマプロダンス選手権が開催されました。プロアマダンスとは男性、女性の片方がプロの先生という競技会。社交ダンス愛好家にはプロの先生としか踊らない、踊りたくないという人もいます。社会人となると決まった相手と都合を合わせてダンスを続けることが難しいことがままあります。仕事の都合、家庭の都合などで急に練習がキャンセルになることも。そのため競技に専念する選手の多くが結婚していることが多いです。職業として行うプロでは結婚しない人もいますが。好きな時間にプロの先生と社交ダンスを楽しみたいという客層があり、せっかくなら競技会も体験したいというニーズもあります。それを可能としたのがアマプロダンス。近年この分野が大きく拡大し、どんどん大規模な競技会に成長しています。プロの先生側からすると生徒さんのモチベーションが上がりレッスンをたくさん入れてくれるわけです。更に日本武道館というフロアーで踊れるという体験。

副産物的にあるのがオールスター戦の様相です。先ほど書いた通り社交ダンス団体は分裂を繰り返してきました。同じ社交ダンスをしている選手なのに大会に出場できない、いわゆる大人の事情があります。それがプロアマダンスでは“お客様のために”出場するので、それまで一緒になることがなかった大御所の先生が同じフロアーに立つことがあります。また現役を引退したレジェンド先生と現役バリバリの先生がお客様と出るとはいえ競技をする。長らく社交ダンス業界を観てきた人からすると夢の対戦が実現してしまうのです。私はパンフレットのアマプロダンス出場選手をみて本当に驚きました。引退したあの先生も他団体のあの先生も出ている!と。それをまとめて日本インターナショナル初日にまとめてしまうというスケジュール。

アマプロダンスという手法は大打撃を受けた社交ダンス業界にとって大きなアイデアだと思います。

 

日本インターの会場には各店舗が出店していました。ドレス&練習着、シューズ、衣装小物、CD・DVD、専門雑誌、などなど。当院も一部社交ダンス業界に関わって売上があるところ。社交ダンスという枠組みに関わる企業、団体、組織はかなりあります。実はまだまだ大きな市場を持っているのが社交ダンス業界だと感じました。

 

中にいると悪い面ばかり目立って、悲観的な意見を発信する関係者もいるのですが、ブレイキン(ブレイクダンス)やバレエの関係者の話を聞くと社交ダンスは羨ましいと言います。まずプレイヤーの年齢がまさに子どもからお年寄りまで。幅広く対応しています。小学校低学年と80歳のお年寄りが同じ会場でダンスができるのが社交ダンス。イギリスから来日した世界的選手が躍った後に高齢者のデモンストレーションを行っている。プレイヤーの幅が広いからパイも広いわけです。そのため参入企業が増えて競技会、イベントの規模も大きくなります。同じ鍼灸師でブレイキン出身の方が、後楽園ホールの社交ダンス競技会に訪れた際に、その出場選手の数と年齢層、出店しているブースの数、大会規模に驚いたと言います。今回日本武道館での競技会に足を運んでその意見を再認識しました。当たり前のように一流ホテルに百人規模を集めてパーティーをいち個人経営のスタジオが行ってきたのが社交ダンス業界。実はダンス業界全体からすると、まだまだ大きな市場なのではないでしょうか。何かの話で聞いただけですが、日本で最もプロプレイヤーが多いのが社交ダンス業界だとも。

 

2020年以降苦しい時期が続いてきた社交ダンス業界。パンデミックが収束する兆しが見えた頃には新たなダンス団体が発足し、その影響を日本の団体も受けることに。アマチュアとプロの区分をどう捉えるかなど諸問題はいくつかありますが、新型コロナウィルスという危機を前にして遅々として動かなかったことが進んだことは良いニュースだと思います。今後の社交ダンス業界の巻き返し、復興に期待が持てると感じた日本インターナショナルダンス選手権大会でした。

 

甲野 功

 

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