開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
新宿区の神社やお寺を紹介する企画。今回は新宿御苑前駅からすぐにある太宗寺です。
住所でいうと新宿二丁目。「新宿」を感じさせる場所にあります。都心にあるお寺なのでこじんまりとしているかと思いきや、なかなか広々とした境内。そして見どころ満載です。
浄土宗の寺院で、山号は霞関山、院号は本覚院。本尊は阿弥陀如来です。江戸時代がはじまる直前の慶長元年(1596年)頃に僧である太宗が開いた草庵「太宗庵」が前身です。その後、安房国勝山藩主内藤正勝の葬儀を行ったことを契機に内藤氏との縁が深まり、寛文8年(1668年)に内藤正勝の長男である内藤重頼から寺地の寄進を受け、太宗を開山として太宗寺が創建されました。元禄4年(1691年)に内藤氏は信濃国高遠藩に移りますが、太宗寺はその後も内藤氏の菩提寺として歴代藩主や一族の墓地が置かれ、その敷地は広大なものでした。しかし戦後昭和27年(1952年)から行われた区画整理で内藤家墓地は縮小されます。その区画整理により太宗寺の敷地は形が変更されて今のような環境になるのです。
さてこの内藤氏。新宿の歴史にとても深い関りがあります。太宗寺は内藤家の菩提寺として繁栄し、門前町もできました。そこには内藤宿という宿場もありました。もちろん内藤家からとった名称です。そこが「内藤新宿」として発展するのです。
「新宿」とは新しい宿(やど)と書きます。つまり新宿とは甲州街道に新しく設置した宿という意味。江戸時代、中心は日本橋でそこを起点に五街道(東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道)がありました。各街道では1里(約4km)ごとに宿場が整備されたのですが、最も新しい甲州街道では日本橋の次は高井戸宿でその間4里の距離。これでは遠すぎて物資を運ぶ人も馬も負担が大きいため日本橋⇔高井戸間で新しい宿場を作ることになりました。そこで目を付けたのが内藤宿。内藤新宿として新たな宿場としたのです。内藤新宿は四谷に近いことから四谷新宿と言われることもあります。そして東海道の品川宿、中山道の板橋宿、日光街道(奥州街道)の千住宿らと並び江戸四宿と呼ばれるのです。
現在新宿の中心は新宿駅になっていますが、江戸時代は今の新宿3丁目から新宿御苑辺りが中心でした。成木街道(青梅街道)の起点として甲州街道から分岐する新宿追分があったところ。
内藤新宿という名称から新宿と内藤家の繋がりは深く、その菩提寺として太宗寺の役割は現代にも通じるものです。創建が江戸時代手前(戦国時代)と比較的歴史は浅いのですが今の世界的に知られる新宿が発展する起点だったのかもしれません。
その太宗寺には観るべきものがたくさんあります。
まず銅造地蔵菩薩坐像。屋外に大仏様のようにある、かなり大きな仏像。都会の一角にマンションを背にある姿は違和感とインパクトがあります。正徳2年(1712年)に造られた江戸六地蔵の第三番で、東京都指定有形文化財(彫刻)です。
地蔵菩薩像の横には閻魔堂があります。なかには都内最大の閻魔大王像があり、“内藤新宿のお閻魔さん”といわれます。閻魔像は新宿区指定有形民俗文化財。そして“葬頭河の婆さん”と呼ばれた奪衣婆像(新宿区指定有形民俗文化財)。
続いて地蔵菩薩像の向かいにあるのが塩かけ地蔵。大量の塩を被っていて雪が積もったかのよう。なかなかお目に掛かれないです。
塩かけ地蔵の横には不動堂があり三日月不動像と布袋尊像があります。額に銀製の三日月を戴くのが名前の由来である三日月不動像は新宿区指定有形文化財(彫刻)。布袋尊像は新宿山ノ手七福神の一つです。
不動堂の横には内藤家の墓所が広がります。そこに新宿区指定史跡となる内藤正勝の墓があります。寛永6年(1629年)に葬儀が営まれ、内藤家墓所の中核を担います。
内藤家墓所の隣は立派な造りの本堂。その横に切支丹灯篭がたっています。これは内藤家墓地から発見されたものですが、灯篭に刻まれた人物像がマリアではないかと言われています(真偽は不明)。新宿区登録有形文化財(歴史資料)になっています。
他にも江戸時代前半に制作された観無量寿経曼荼羅(新宿区指定有形文化財(絵画))、区画整理事業の際に内藤家墓地より出土した鏡・銭貨・人形・眼鏡など910点の副葬品である太宗寺墓地出土品(新宿区指定有形文化財(考古資料))があります。本当に多くの歴史的価値のあるものがあって、太宗寺境内は「新宿ミニ博物館」と言われるほどです。
江戸時代以降近代に繋がる新宿を考える上でとても重要なお寺が太宗寺です。新宿駅からもそう遠くない所にあり、新宿御苑からすぐそば。歴史が好きな方には是非足を運んでもらいたいお寺です。
甲野 功
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