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~あん摩マッサージ指圧師として再会した~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 あん摩マッサージ指圧師として再会
プロになって再会しました

 

 

私は大学を卒業した後に一般企業に就職しました。就職直後からこの会社が、というよりサラリーマンが、合わないものだと感じて過ごしていました。父親はずっとサラリーマン。母親は当時としてはまだ珍しかったフルタイム勤務の地方公務員。組織の一員として働く両親のもとに生まれて。2歳上の姉は大学卒業後に就職し、今でもその会社で働いている。そのような家庭環境で育ったのに。元々の性格は安定志向であり、企業勤めで堅実にやっていくことが好きなタイプだと思っていました。

 

ところが企業に就職すると新人研修が終わったくらいから毎日が非常に苦しくなりました。大学時代に情熱を持って過ごしていた日々が懐かしくなるばかり。東証一部上場のきちんとした会社。土日はお休み。ボーナス(賞与)も出る。実家暮らしで通勤時間は片道40分あれば着きます。今考えるととても恵まれた環境だったと思うのですが、会社員生活が嫌で仕方ありませんでした。

 

希望した部署の配属は叶わず。

理科系大学を卒業した私は、営業担当という仕事がリスペクトできず。

仕事ができるようになるほど他からの雑務を押し付けられる。完璧にこなせば益々雑務が舞い込んできて。しかしその仕事は本来の自分の業務ではない。社内にいないでお客を回れと部のトップは言うが、常に10~20くらいのタスクが同時並行で積み重なっていてそれどころではない。

フレックスタイム制だと言って、ダラダラと遅めに出勤し夜遅くまでいる技術畑に合わせるため帰宅が遅くなる。

日報、週報、月報、半期報、会議の議事録。毎日ひたすらテキストを作り続けているが、誰もきちんと読まない。しかし提出しないと注意される。会議の議事録を出せば、大事なことが書かれていないと、やり直し。詳細に書けば、長すぎて読む気が起きないからもっと簡潔にまとめろ、とクレームがくる。

チームのNo2が異動と退職をして社会人3年目にはチームのNo2に。チームリーダーが激務で1週間のリフレッシュ休暇を取るため、部長会議に代理で出席。その直後に病気にかかって約2週間の欠勤(9日間の入院)。

入院先に見舞に来た上司と同僚。ノートパソコンがあるからここでも仕事ができるよと冗談を言われたが全く笑えなかった。

 

入院中にこの職場を辞めて新しい道に進む決意をします。人生について本気で考えました。

退院後、職場に復帰してから退職後のことを真剣に考え、幾つか道を模索。結果、サラリーマンをきっぱりとやめてリラクゼーション技術を学ぶ専門学校に入ることを決めました。

24歳の10月でした。

 

それから約20年。その都度考えて必要な知識、経験、免許を求めて複数の専門学校を通い、今に至ります。民間のリラクゼーションも、国家資格のあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師も、鍼灸マッサージ専門学校教員免許も、必要だと考えてとりました。

どの学校も連続して通ったことは無く、現場で1年働いてやはり必要だと考えた上での進学。もちろん学校選びはしっかりとしました。学校選び=進路選び。一度入院先で死にかけたので、本当に納得できる悔いなくできる進路なのか、と向き合ったのでした。働いた先も、繁華街のリラクゼーション店、鍼灸整骨院、クリニック、大学病院とその時々で考えて勤め先を選びました。大学卒業後の就職で結果的に上手くいかなかった経験があったので。そして今独立開業して、自分の職場を持ちつつ少し講師業をしながら、自営業として働いています。

 

これまでの経験を次の人に活かしたいと、進路相談を受けるようにしています

 

会社員を辞めて鍼灸師になりたいと考える人。

国家資格を取りたいと考えているがどの資格がいいのか分からない人。

自分でサロンを始めたいが国家資格は取りたくない人。

既に医療系の仕事をしているが鍼灸師も取りたいという人。

鍼灸マッサージ教員養成科進学を考えている人。

リラクゼーションから鍼灸の学校に入り、リラクゼーションから治療に切り替えることに悩んでいる人。

他にもありますが、このような人々から相談を持ち掛けられました。

 

その中に3年前の2月、当院に相談をしにいらっしゃった女性がいました。あん摩マッサージ指圧師という資格があることを知り、目指してみようと考えていると。彼女は私と同じように企業勤めの経験があり、リラクゼーションの業界にもいたことがあると言います。あん摩マッサージ指圧師という国家資格があることを知ったが、業界のことが分からないということでした。

 

私は彼女の話を聴いた上で、同じ3年間勉強するならば鍼灸師も同時に取得できる本科(鍼灸マッサージ科)を考えてみてはどうですかと提案しました。私自身も、あん摩マッサージ指圧師が取りたいと進学を決意し、周囲の助言で鍼灸も取れるところの方がいいよとアドバイスを受けて本科があって通える学校を研究した上で進学した経緯があります。今でも鍼灸師も取得して良かったと考えているので。しかし彼女は鍼灸をしている自分が想像できないということで専科(あん摩マッサージ指圧師科)を選ぶということでした。

 

そうなると晴眼者(視覚障害のない健常者)向けの専科は3つの学校しかなく(2022年7月現在)、地理的にも長生学園か浪越学園(日本指圧専門学校)のどちらかになります。彼女はそこまで調べており、双方の資料を取り寄せて学校見学にも行くということでした。私はあん摩マッサージ指圧師の先輩として、どういう仕事ができるのか、どのような境遇におかれているのか、そして長生学園と浪越学園は同じあん摩マッサージ指圧師専門学校でありますが、内容はかなり異なるという話をしました。その当時は浪越学園のことは割と知っていて実際に浪越指圧の手技を受けたこともありました。しかし長生学園については情報がほとんどなく、独自の技術体系を持っているらしいということしか言えませんでした。

 

2度目に彼女が来院したのが3月に入ったとき。翌4月から進学するとなるともうギリギリという頃。その日は夜に当院で鍼灸師(鍼灸学生を含む)向けの勉強会を開催する日でした。この勉強会は彼女の相談と全く関係のないところで持ち上がった話だったのですが、偶然にもその会に長生学園卒業生が参加します。これはまたとない機会だと思い、勉強会の前にその長生学園卒のあん摩マッサージ指圧師免許持ちの方と会ってもらって、学校のことを話してもらいました。なお、そのあん摩マッサージ指圧師さんとは私もその日初対面。私も長生学園のことを聞いてとても参考になりました。

 

そしてそのまま彼女は鍼灸師の方々と混じって柔道整復師業界の話を聴くということになりました。今思い返してもおかしな状況と凄い巡り合わせでしょう。これからあん摩マッサージ指圧師専門学校に入ろうという一般の方が、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師達と一緒になぜか柔道整復師のことを学ぶのですから。

その後、彼女は浪越学園の方を選んで翌4月から進学したのでした。入学後に、勉強が大変でどうやったらいいのですかという相談をしに一度いらっしゃいました。それからはメールや手紙で近況報告を受けてきました。

 

初めての相談から3年間が経過し、今年2月末のあん摩マッサージ指圧師国家試験を合格、この春から晴れてあん摩マッサージ指圧師になった彼女。仕事を始めたというお知らせを受けて昨日施術を受けに行ってきたのです

かつてあん摩マッサージ指圧師になりたいと相談をしに来た方と、3年後に、同じあん摩マッサージ指圧師となって再会しました

 

プロとして働き始めた彼女に、お金を払って施術を受けに行きました。彼女は緊張したそうで、まさか甲野先生に施術することになるとは、と話していました。私も進路相談に乗った社会人の方がきちんと免許を取って臨床現場に立っていることに、感慨深いものがありました。年代は異なりますが、私も会社員という立場を捨ててあん摩マッサージ指圧師を目指して進学した過去がありますから。

 

数年前から相談を受けるようになって、本当に国家資格を取って新しいステージに立った方がいる。これは私も積み重ねた年月でもあります。

昨日はとても嬉しい再会でした。

 

甲野 功

 

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