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~まだまだ育児をするパパは生きづらい~

OTEKOMACHI サイトより
OTEKOMACHI サイトより 産後うつは男性も同じ割合「ママはどうしているのか」にへこむパパ

 

 

最近このような記事が出ました。

 

OTEKOMACHI 産後うつは男性も同じ割合「ママはどうしているのか」にへこむパパ

オピニオン・小林味 2022.9.15

 

タイトルから産後うつになるのは男性も同じ割合という情報がみてとれて、Twitterで取り上げる鍼灸師がいました。

 

この記事を読み、ずっと心に残っていた、いや今も残っている嫌な感情が喚起されました

 

記事の内容を読んでいただければ分かりますが、育児休暇を取るなどして育児に積極的なパパが、育児はママがするものという思い込み(=アンコンシャスバイアス)によって、疎外感を味わい産後うつになり得るという内容です。産後うつは出産した女性がなるもので父親には関係ないという常識を覆す主張です。ただそれは本質ではなく、筆者が訴えたいことの根幹は、育児の男女共同参画が思い込み(アンコンシャスバイアス)によって進んでいないことを知ってもらいたい、ということなのです。その内容は私自身の経験とあまりに合致していて大いに共感できました。

 

記事に出ていた育児休暇を取得したあるいはしているパパの意見を抜粋します。

 

・男性が産後の育児や自身の心身について相談できる場や機会が限られている。行政で紹介されるのはだいたい「母親向け」の相談先やイベント。育休を取ったはいいが、その後の相談先がわからない。産後うつなど男性自身が知らないことも多いので、会社や社会で父親講座や両親学級があるといい。

 

・子育て支援施設のスタッフが女性しかいないことが多い。行くと、「男性なのに偉いですね、すごいですね」と言われる。誰にどこまで相談できるかわからず、結局、相談できないことも。男性の子育て経験のあるスタッフがいないということは、子育ての経験談も女性の悩みに偏りがちで、男性の悩みにも寄り添えるように、子育て支援施設のスタッフのダイバーシティーを考えてほしい

 

・相談窓口、行政の支援策、イベントなどの名称に「ママ」「母親」が多く、男親が窮屈な思いをすることが多い。言葉の使い方も再検討が必要なのではないか。

 

・父親が健診や予防接種に連れていくと、必ず、「ママはどうしているのか」「なぜママじゃなくパパなのか、ママが来ない理由は何か」「ママはなんと言っているのか」を聞かれる。「父親は母親から連れていくように言われて連れてきただけで、子育てのことは何もわかっていない」という視点で質問される

 

私は育児休暇を取得したことはありませんが(自営業なのでそのような概念・システムそのものがない)、この意見に大いに納得します。私はとにかく「何で男が育児しているの?」という無自覚な視線をたくさん浴びてきました。

 

私達に第一子が誕生したとき、私は新宿区内のクリニックに勤務していました。しかし4月に子どもを保育園に預ける同時期に鍼灸マッサージ専門学校の教員免許を取る学校に進学し、自営業として出張専門の鍼灸マッサージ師として独立しました。早生まれの子どもは生後数ヵ月の0歳児で保育園へ入園。時を同じくして学生兼自営業となった私は時間の融通が勤務時代よりつくので率先して育児や家事をしてきました。

 

私が育った家庭は父が単身赴任で地方に居て週末にしか帰宅せず、母は小学校教諭で月曜日から土曜日まで働いていました(当時の公立小学校は土曜日まで授業があった)。1980年代前半。その頃では珍しい共働き家庭で、両祖母の支援もなく(両祖父は死去)フルタイム勤務の母がほとんど子育てをしていました。物心ついたときから保育園に通い、小学校に上がったら放課後は学童保育に行きました。それだけでなく、二つ年上の姉とよく近所にある親の友人宅で面倒をみてもらっていました。小学校の学年が上がり、友だちの家に遊びに行くようになると共働き家庭は少数派で珍しいということに気付きました。その環境が不幸などと感じたことはありませんが、いざ私が親になったときはしっかりと育児をする父になろうという気持ちを持っていました。週末しか家にいない父。働きながら家の事、子どもの事をしていた母。時間に融通が利く立場なのだから私は父ができなかったことをしようと

 

学校に通いながら赤ちゃんの世話をする日々。当時を振り返るとかなり負担がありました。一緒に寝ていたので夜泣きとなれば私も起きます。当時は布おむつだったので毎日手洗いして漂白剤につけてから洗濯。沐浴、入浴もさせていました。保育園の送りをしていました。上の子は夜中に発熱することが多く、深夜にタクシーで救急外来に連れて行くこともしばし。その頃はコンタクトレンズを外したのかどうかも分からなくなり二重につけていたり、コンタクトレンズが丸まって目の奥にへばりついていたりしたこともありました。自営業1年目で確定申告の前は精神的に追い込まれて座っていても息が乱れるような状態になりました。専門学校2年生の時に実験研究の被験者になり毎日血圧を計ったときがあったのですが、下の血圧は100mmHgを超えていました。健康状態はかなり悪かったと思います(学校を卒業したら血圧は基準値に戻りました)。これまでの人生でギックリ腰になったのは上の子が生まれてから1年間の時期だけでした。

 

初めての自営業、専門学校の勉強という負担があった上での第一子の育児。大変は大変でしたが、これは自分が望んだ結果で、我が子を育てるのは当たり前という気持ちでした。ずっと猫を飼っていた経験が活きたのか赤ちゃんを世話することに抵抗がありません。何より我が子は可愛いですし。「育児を手伝う」などという考えは頭にありませんでした。

 

ただし実際にしてみると不快な経験を少なからずしました

 

それがまさに記事にあるような“子育てはママがするのが当たり前でしょう、という思い込み”です。言い換えると“パパが何でそんなに子育てしているの?”という視線です。体力、精神共に追い詰められていた当時の私にはこれがとても心をえぐりました。

 

記事の声はまさにそうでした。

育児の悩みに答えるような記事の多くは、いかにパパが無能で使えない存在であると周知して入ったばかりの学生バイトのようにいちいち指示しないと動かないですよ、と書いています

子育て関連の資料、イベントはどれも主語が母やママ。イラストも女性ばかり。お父さんの存在は無いもののように扱われる

それが日本の現実だからと言えばそうなのですが、散々社会は男女平等、男女共同参画を謳っていたのではないか、と思いました。

保護者会に行けばだいたい「お母さま方」という呼びかけ。少ない割合ながらも私を含めてお父さんも出席しているのに。

路上で突然鼻血が出た子どもの対応をしていたとき、知らないおばさんが駆け寄ってきて、さもあんたじゃ何もできないでしょうからやってあげるわよ、とティッシュを出してきました。勝手にうちの子に触るなという気持ちと自分は常日頃子どもの世話をしているのだ!といういら立ちがありました。

子どもがインフルエンザに罹り看病していたら私も発熱し、クリニックへ検査にいったところ「普通はお母さんがうつるのですけどね」と女医に言われました。その言葉は単なる統計上の話なのかもしれませんが、必死に子どもに向き合った結果、医者に言われる言葉なのかと悲しくなりました。

 

精神的に追い詰められていた時期でもありますが存在を否定されるような気持ちがあり、10年経ってもあの当時の怒りや悲しみ、いら立ちは消えません。投げかけられたその態度や言葉には悪意がなく無自覚なのです。バカにしようと意思が見えるならまだ納得できます。昭和を引きずったオジサンに言われるのならば時代錯誤だなと割り切れます。現在進行形で育児関連に携わるひとや子育てを経験したであろう年配女性に言われたり態度を取られたりすると、本当に自分の存在、日々の行動を否定される気がします。パパがもっと育児に参入しようと掲げながら、それを阻害しているのは女性や社会の方ではないのか、と感じるものでした。

 

これは理屈、理論ではなく感情です。日本の歴史的背景を考えれば、生物的に体力のある雄が外に出た方が合理的だとか、悪意はないのだから、といった理屈や理論では処理できません。毎日寝付いてくれなくてずっと抱っこをして、お風呂に入りたくないと1時間くらいごねて、急な体調不良で小児科を受診して病児保育をしてくれるところにタクシーで連れて行って、という中で働いて授業に出て課題をこなしてという体験が、感情を動かします。ある同業者がこの記事について「母親だけでなく父親へのケアもそれなりに必要になってくるかもな」という意見を述べていたことにイラッときた私は「“父親へのケアもそれなりに”ではなく“父親へのケアも当然”必要なのですよ。」と釘を刺してしまいました。記事を読んでいるのか?という気持ちもあり。どれだけ技術があったとしてもこの人の鍼灸は絶対に受けたくないなと思いました。たかだか大した意味もないコメントにそこまで思うのか、と言われそうですが感情がおさまりません。反対に反面教師として患者さんへの言動を本当に気をつけようと気持ちを引き締めました。

 

最後にこの記事のしめの部分を抜粋します。記事を書いたライターが一番訴えたい内容でしょう。

女性活躍が推進される中、マイノリティー(少数派)である働く女性は、様々な壁にぶつかってきました。今もまだ女性活躍やダイバーシティー&インクルージョンは多くの企業において道半ばです。一方、男性は家事や育児の分野でのマイノリティーで、そこでは、女性が仕事において経験してきたのと同じく、様々な「アンコンシャスバイアス」が存在します

 

「男性はこうあるべきだ(あるもの)」、「女性はこうあるべきだ(あるもの)」という思い込みは、男女ともに苦しむことが多いと思います。男性の育児に目を向けることは、アンコンシャスバイアスに気づき、互いに尊重しあう世の中にするチャンスです。全ての人の個性が尊重される社会をつくる一歩になることを願っています。

 

男女雇用機会均等法が施行されて女性が本格的に社会や企業に参画していった頃から生じている壁の経験を今度は本格的に家庭に参画する男性が味わっているようです。育児ができないパパ、やりたくてもできない職種のパパも当然います。反面、妻と死別して男手で子育てをしたり離婚してシングルファーザーになった人もいます。父母関係なく子育てするのが当たり前になってもらいたいです。そして父母関係なく社会で活躍する。

 

甲野 功

 

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