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先週発覚した柔道整復師国家試験問題漏洩事件。関係者2名が逮捕されました。そして先週の土曜日に柔道整復師専門学校に家宅捜索が行われるというショッキングな報道が出ました。
『
「柔道整復師」の国家試験の問題が漏えいした事件で、警視庁が漏えい先とされる仙台市の専門学校を家宅捜索しました。
警視庁が家宅捜索したのは、若林区の「仙台医健・スポーツ専門学校」です。「仙台医健・スポーツ専門学校」は、公益財団法人の理事・三橋裕之容疑者(64)と国家試験の試験委員・黒田剛生容疑者(62)が2022年2月、柔道整復師の国家試験の問題に関する情報をメールで送信した漏えい先とされていて、警視庁は8日午前、この学校から関係書類を押収しました。また、その後の捜査関係者への取材で、2人は「仙台医健・スポーツ専門学校」を含む4つの専門学校に試験問題に関する情報を漏えいしていた可能性があることが分かりました。警視庁は、専門学校が情報をどのように利用したかなど、捜査を進めています。
』
柔道整復研修試験財団の理事である三橋裕之容疑者が国家試験の問題に関する情報を、自身が講師をしていた仙台市にある専門学校「仙台医健・スポーツ専門学校」の教員へメールをして教えたという疑いがあります。それに対して該当専門学校に警視庁による家宅捜索が行われたのです。柔道整復研修試験財団にも家宅捜索が行われましたが、専門学校にも。東北放送は映像でその様子を報道しています。専門学校は当然ながら通っている学生がいます。現在、3年生は卒業認定試験をしている時期だと思われますが母校が家宅捜索されると報道されるというのはどのような心境でしょうか。
さてこの柔道整復師国家試験問題漏洩。容疑者が逮捕されましたが、その動機は何でしょうか。逮捕者2名は数十年前に柔道整復師免許を取得していますから自身が合格するためなどという理由ではありません。問題を事前に知って得をするのは受験生、そして専門学校となります。受験生は自分の将来に直結することですから当然として、柔道整復師専門学校も合格者を多数出して高い合格率を世間に示すことは生徒集めにおいて重要なことです。何度か書いていますが、柔道整復師国家試験の受験数はここ数年減少の一途をたどっています。すなわち柔道整復師志望者が減少しているということ。それに伴い養成機関(専門学校、大学)は減っています。多くの学校は生徒集めに苦労していると想像できます。
そうなると逮捕された容疑者から問題情報を得て、受験生の合格率を上げることは専門学校側にとってメリットになります。どのように試験問題の情報が漏洩したのかも重要ですが、誰の意図でこのような事態になったのかも非常に大切です。つまり容疑者が専門学校側に情報を売ったのか、専門学校側が容疑者に依頼して情報を買ったのか。それを確かめる意味もあり専門学校への家宅捜索をしているのでしょう。
連休明けから新しい報道がされると予想していたのですがそのようなことがありません。ネットの書き込みや噂レベルでは様々な情報が飛び交っています。ここは報道機関が出した情報(報道内容)と公的に公開されている情報をみていきましょう。
今回家宅捜索が入った『学校法人滋慶学園 仙台医健・スポーツ専門学校』。この学校の今年3月に行われた第30回柔道整復師国家試験から第25回までの過去6年分の結果を挙げます。一部報道にあった、昨年77%だった合格率が今年は97%に急上昇したとあります。正確に数字をみていきましょう。
※第〇回は実施回数。国家試験は年に一度。第30回は2022年開催。以後1年ずつ過去に遡る。()内は全国平均。全体受験者数は仙台医健・スポーツ専門学校でその年受験した生徒の総数。新卒受験者数は現役生、既卒受験者数は過去の国家試験が不合格の浪人生の数。
第30回(全国平均 全体合格率62.9%、新卒合格率81.0%、既卒合格率16.9%)
全体受験者数58名、合格者数41名(全体合格率70.7%)
新卒受験者数37名、合格者数36名(新卒合格率97.3%)
既卒受験者数21名、合格者数5名(既卒合格者数23.8%)
第29回(全国平均 全体合格率66.0%、新卒合格率85.6%、既卒合格率21.6%)
全体受験者数41名、合格者数27名(全体合格率65.9%)
新卒受験者数22名、合格者数17名(新卒合格率77.3%)
既卒受験者数19名、合格者数10名(既卒合格者数52.6%)
第28回(全国平均 全体合格率64.5%、新卒合格率84.8%、既卒合格率16.5%)
全体受験者数59名、合格者数40名(全体合格率67.8%)
新卒受験者数45名、合格者数36名(新卒合格率80.0%)
既卒受験者数14名、合格者数4名(既卒合格者数28.6%)
第27回(全国の平均 全体合格率65.8%、新卒合格率86.1%、既卒合格率26.3%)
全体受験者数55名、合格者数34名(全体合格率61.8%)
新卒受験者数32名、合格者数29名(新卒合格率90.6%)
既卒受験者数23名、合格者数5名(既卒合格者数21.7%)
第26回(全国の平均 全体合格率58.4%、新卒合格率78.5%、既卒合格率16.7%)
全体受験者数75名、合格者数43名(全体合格率57.3%)
新卒受験者数43名、合格者数38名(新卒合格率88.4%)
既卒受験者数32名、合格者数5名(既卒合格者数15.6%)
第25回(全国の平均 全体合格率63.5%、新卒合格率82.9%、既卒合格率22.5%)
全体受験者数85名、合格者数45名(全体合格率52.9%)
新卒受験者数48名、合格者数36名(新卒合格率75.0%)
既卒受験者数37名、合格者数9名(既卒合格者数24.3%)
今年第30回と第29回を比べると新卒受験合格率が大幅に上昇しています。第30回は受験者が37名で1名しか不合格者がいません。この結果は目を見張ります。また第29回に新卒受験者数が22名だったのが翌年第30回になると37名と15名も増えています。新型コロナウィルス流行で入学者数が一時期激減したと考えられなくもありませんが、気になる増え方です。第26回、第27回と全国平均を上回る新卒合格率を出していて第28回、第29回はそれを下回っています。そして第30回の新卒合格率が非常に高いことが数字を並べると見えてきます。
この結果の推移が何を意味しているのか。試験問題の漏洩したこととの関係は。それを現在捜査中であるのでしょう。憶測はやめて報道を待つことにしましょう。
仙台医健・スポーツ専門学校は三橋容疑者が問題のキーワードを教えたと報道されています。もう一つ注目されてしまうのが、黒田剛生容疑者が講師を務めていた東京柔道整復専門学校です。黒田容疑者は今年9月30日まで講師を務めていました。また東京柔道整復専門学校を運営する学校法人杏文学園の理事も務めていました(現在は名簿から消えています)。つまり直接関係があります。学校法人の理事という事は経営に関わる立場であったはずで、東京柔道整復専門学校の合格率が高く生徒が多数集まることは利益になると考えられます。報道によれば昨年9月の国家試験問題を決める幹事会議のやり取りを無断録音していたとありますから昨年から計画的に行動していたことが伺えます。
『杏文学園 東京柔道整復専門学校』の国家試験成績を確認してみましょう。仙台医健・スポーツ専門学校と同様に第30回から第25回までの実績です。
第30回(全国平均 全体合格率62.9%、新卒合格率81.0%、既卒合格率16.9%)
全体受験者数150名、合格者数146名(全体合格率97.3%)
新卒受験者数148名、合格者数146名(新卒合格率98.6%)
既卒受験者数2名、合格者数0名(既卒合格者数0.0%)
第29回(全国平均 全体合格率66.0%、新卒合格率85.6%、既卒合格率21.6%)
全体受験者数129名、合格者数127名(全体合格率98.4%)
新卒受験者数125名、合格者数125名(新卒合格率100.0%)
既卒受験者数4名、合格者数2名(既卒合格者数50.0%)
第28回(全国平均 全体合格率64.5%、新卒合格率84.8%、既卒合格率16.5%)
全体受験者数154名、合格者数149名(全体合格率96.8%)
新卒受験者数148名、合格者数146名(新卒合格率98.6%)
既卒受験者数6名、合格者数3名(既卒合格者数50.0%)
第27回(全国の平均 全体合格率65.8%、新卒合格率86.1%、既卒合格率26.3%)
全体受験者数145名、合格者数136名(全体合格率93.8%)
新卒受験者数143名、合格者数136名(新卒合格率95.1%)
既卒受験者数2名、合格者数0名(既卒合格者数0.0%)
第26回(全国の平均 全体合格率58.4%、新卒合格率78.5%、既卒合格率16.7%)
全体受験者数152名、合格者数150名(全体合格率98.7%)
新卒受験者数149名、合格者数149名(新卒合格率100.0%)
既卒受験者数3名、合格者数1名(既卒合格者数33.3%)
第25回(全国の平均 全体合格率63.5%、新卒合格率82.9%、既卒合格率22.5%)
全体受験者数142名、合格者数138名(全体合格率97.2%)
新卒受験者数139名、合格者数138名(新卒合格率99.3%)
既卒受験者数3名、合格者数0名(既卒合格者数0.0%)
もうこの数字は異質です。毎年130名ほどの新卒受験者数を出しながら不合格になる受験者はわずか数名。特に第26回は「魔の26回」と言われてはり師・きゅう師国家試験も同様に非常に合格率が下がった年です。その第26回でも149名もの新卒受験者で不合格者が0名。同じ合格率90%でも100名が受験して90名が合格するのと10名が受験して9名が合格するのでは実情が違います。きちんと勉強している受験生は合格する試験なのでいかに不合格者を出さないかが重要です。この受験者数でこの合格率は本当に別格なのです。
ちなみに第30回柔道整復師国家試験における1校あたりの新卒受験者数は平均30.0名です(全体新卒受験者数3,125名、受験学校数104校。)。しかも平均30.0名というのは新卒受験者が0の学校を受験学校数から除いていて計算しています新卒受験者が0の学校(既に閉校、募集停止している学校もある)を含めると受験学校数は117校となり新卒受験者数は平均26.7名です。1校当たり約27名の新卒受験者数に対して東京柔道整復専門学校は130名ほど。既に述べたようにここ数年右肩下がりで受験者数が現状している状況で。
東京柔道整復専門学校のこの合格率が何を意味するのか。黒田容疑者が直前まで講師を務めていた以上、今後捜査が入ることが予想できますし、当校は警察に協力するとTwitterで投稿しています。
更に報道によると三橋容疑者が情報を送ったのは東京、仙台、神奈川(横浜)の合計4校だといいます。まだ他にも専門学校があるということ。捜査が入ったという情報は報道されていません。
柔道整復師国家試験問題の漏洩。専門学校にも影響を及ぼし、すなわち学生達にも影響が及びます。私も11年前に柔道整復師国家試験を経験した者。これが関係の無い国家試験に関することだったらここまで気にしません。あの頃、朝から晩まで学校の学生ホールや自習室で同級生たちと勉強して試験に臨みました。成績不良者は特別補講を受け続け、本番2日前まで受験票が渡されませんでした。それくらい必死に勉強して受験しています。実力が及ばず不合格になり翌年既卒受験者として合格した同級生もいます。そのような経験をしているので、国家試験で不正行為があったというのは割り切れるものではありません。家宅捜索が入った専門学校、逮捕者が講師を務めていた専門学校の卒業生は疑惑の目が向けられます。そして来年第31回の国家試験は該当する専門学校の合格率に厳しい目が向けられるでしょう。きちんと何が起きていたのかはっきりさせないと後々苦しくなることでしょう。
今後の捜査結果が公になることを願っています。
甲野 功
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