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~鎌倉葛岡原神社~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 葛岡原神社
鎌倉 葛岡原神社 

 

 

大河ドラマが鎌倉を舞台にしているため、今年は鎌倉の史跡を巡る教育バラエティー番組がたくさん放送されています。鎌倉殿関連に乗っかろうという。私は歴史や史跡が好きなので目に入るのですが、今年どれだけ鶴岡八幡宮をはじめ鎌倉の史跡をテレビで観た事でしょう。鎌倉以外にも、大仏繋がりで奈良の大仏や源頼朝と北条政子との縁のある伊豆山神社もよく見かけました。自然とそれまで知らなかった鎌倉の歴史を学ぶことになりました。

 

今回は鎌倉の外れ、あまり有名ではありませんが紫陽花の名所としても知られる葛岡原神社を紹介します。

 

葛岡原神社

 

場所はなかなか行きづらいところになります。鎌倉駅から銭洗い弁天を越えて坂道を登った先に。あるいは北鎌倉駅から大仏ハイキングコースに入って山道を登っていくか。源氏山の方で市街地から離れた山中にあります。この不便さも鎌倉の歴史を知ると意味が分かってきます

 

葛岡原神社は古事記に登場する神様を祭った神社ではありません。日野俊基を主祭神として祭っているのです。徳川家康を祭った東照宮や菅原道真を祭った天満宮などに比べると知名度が低いのではないでしょうか。私は葛岡原神社について調べるまで日野俊基という人物を知りませんでした。

 

日野俊基は鎌倉時代後期の公家で、後醍醐天皇の忠臣として鎌倉幕府倒幕に活躍した人物です。日野俊基は幼い頃から学問の道に優れ大変有能な人物でした。後醍醐天皇より見出されて、優秀な側近として活躍します。後醍醐天皇は鎌倉幕府を打倒する計画をたて、日野俊基もそれに加わっていました。しかし、正中元年(1324年)に起きた「正中の変」において討幕を計画したと鎌倉幕府に逮捕されます。後醍醐天皇のとりなしにより、翌年には京都に戻ります。そして、元徳3年/元弘元年(1331年)に発覚した討幕計画である「元弘の乱」で再び鎌倉幕府に捕らえられ、現在葛岡原神社のある場で処刑されます。日野俊基の死後、元弘3年(1333年)に鎌倉幕府は滅亡し、後醍醐天皇による「建武の中興」(建武の新政)が行われるのです。

 

時代は流れ明治維新により武士が政治の中枢にいる時代が終わります。明治の世になり討幕の先駆者として後醍醐天皇の下に馳せ参じた忠臣たちを讃える動きが高まり、日野俊基も「建武の中興」の礎となった忠臣の一人として明治17年(1884年)に明治天皇より従三位を追贈されます。明治20年(1887年)に最期の地である葛原岡に、御祭神として神社を創建することになりました。それが葛岡原神社です。

日野俊基は後醍醐天皇の「建武の中興」への道を開いたことから“開運の神様”、また優れた文化人だったことから“学問の神様”として崇敬されているといいます。

 

辞世の詩として

古来一句 無死無生 万里雲尽 長江水清

古来の一句 死も無し生も無し 万里雲尽きて 長江水清し

を遺しています。

意訳は『古来より「死もなく生もない」という言葉がある。自分も精一杯頑張ったが、残念ながら、万里の果てに雲が尽きる様に、今は万策尽き果て、この様な結末となったが、理想の為に力尽きたのだから、生や死はもはや問題ではなく、少しの恨みもない。今は、長江の水が清らかな如く、自分の心は一点のけがれもなく、さわやかである。』となります。

 

ここで鎌倉という土地に注目してみましょう。日本で最初に幕府が開かれた土地。武士による本格的な統治が始まった場所。いざ鎌倉へ、という言葉も残っています。三方を山に、一方を海に囲まれた天然の要塞で攻められにくいことが幕府を開く場所に選ばれた理由だといいます。鎌倉に侵入する道を険しくし大量の兵士が通れないように工夫したといいます。葛岡原神社のある場所はその当時鎌倉の境界線でした。死を鎌倉の土地から離すために、葛岡原は処刑場になっていたそうです。ですから日野俊基はここで処刑されたのです。それを知った上で北鎌倉駅から山を越えてこの場所に辿り着くと歴史を感じます。

 

また徳川幕府最後の将軍徳川慶喜により大政奉還がなされて政治の中枢が徳川家(武士)から天皇に返還された明治維新。そのタイミングでそれから500年以上前の“初めての討幕”に尽力した公家を称える動きが起きて神社に主祭神として祭るという。

 

現在の葛岡原神社には日野俊基に関わる史跡という一面と、開運・縁結びのパワースポットという現代的な一面があるように思えます。女性必見の縁結びパワースポットとして紹介されており、それに見合ったものが境内にあります。それが鳥居横の「魔去る石」や縄で繋がれた「縁結び石」、本殿の「昇運の神龍」でしょう。現代的な参拝客を集める工夫もしつつ、鎌倉時代の歴史を教える史跡としてもある。そのような神社であると思います。

 

甲野 功

 

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