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~長女の組紐体験~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 長女の組紐体験
組紐体験

 

 

昨日、長女を組紐体験に連れて行きました

 

工芸体験をしてみたいという長女。昨年はガラス工房に行って吹きガラスをしました。箱根ではサンドブラスト体験も。今度は日本の伝統的な工芸をやってみたいと思ったようです。その理由は私がテレビ東京の『世界!ニッポン行きたい人応援団』という番組をよく観るからでしょう。この番組は海外在住で日本の文化が好きだけれど日本に行ったことが無い方を番組が日本に招待するドキュメントバラエティーです。現代的な日本文化に憧れる人も多く登場するのですが、日本人でも知らないような伝統工芸や文化に注目してそれを学びに来日される方が少なくありません。その中で組紐を愛してやまない外国人の回がありました。そしてテレビ放送された大ヒット映画『君の名は。』。新海誠監督の作品で作中に組紐が登場します。

 

そして何より近所の神楽坂で組紐体験ができることが分かりました。これは組紐体験がいいだろうと先月予約を取ったのでした。場所は「道明」のギャラリー。

 

有職組紐道明(DOMYO神楽坂ギャラリー)

 

上野にお店があることは知っていたのですが神楽坂の路地裏にギャラリーを構えているとは知りませんでした。一度長女と下見に行ったときに、神楽坂下の石畳みの路地にありました。数年前は別のお店だったので意表をつかれました。本当はもっと前に行きたかったのですが予約状況のため今月までずれ込みました。

 

着物愛好家には有名だという「道明」。着物の帯締めを作っていて、高価だと言われるそうです。妻が着物を着るので見たことがありますが、どれくらいの価格帯なのかは分かりません。会場で説明してくれた講師の方がそう言い、着物を着た参加者がうなずいていたので、そうなのでしょう。

 

会場には私達を除いて4名の参加者がいて全員が女性でした。講師の方が男性でした。体験の前に「道明」の説明がありました。創業は1652年だそう。一瞬1952年と聞き間違えたのかと思いました。慶安5年・承応元年です。江戸時代です。100年企業どころの話ではありません。それだけ古くからあるとは思わず心底驚きました。創業当時は糸商で武士の刀の下緒を作っていたとか。明治に入り武士の世が終わると着物の帯締めを作るようになったとか。組紐自体は更に歴史が古く、正倉院に納められたものから組紐が見つかっているとか。仏教と一緒に日本に伝来したのだとか。日本史の授業を受けているようでした。

 

道明」の歴史を聞いた後は組紐体験です。私は付き添いで、長女のやることを見ているだけ。実際にやってみたら楽しそうですが複雑だというのが傍目の感想です。やるのは奈良組と言われる組み方です。奈良時代の組紐の遺品にこの組み方が沢山残っていることからこの名が付きました。12本の糸があります。長女は糸の色から一つ台を選びます。職人が使うものは胡坐や正座をして作業をするのですが、特注の高い作業台で椅子に座ってすることができるものです。テレビ番組や映画の作中で観たものと一緒でした。もっと糸の数を増やすこともできるそうです。

 

中央の丸い穴に重りで吊るされた糸の束。そこから12本の糸が放射状に出ていて6本が同じ色で薄いピンク色。残りは2本ずつで3色の糸でした。これを一定の規則に則って組んでいきます。文字で表現するのは難しいのですがなかなか複雑でした。中心から左・右、前・奥の4ブロックに糸を分けます(各3本ずつ)。右奥のグループで内側の糸を左手で、左前のグループで内側の糸を右手で軽く摘みます。それらを時計回りに対角線のグループの外側に起きます。右奥グループで摘まんだ糸を左前の外側に、左前グループで摘まんだ糸を右奥の外側に。その手を引かずに置いたグループの糸たちを手のひらと手の甲で位置を直し、そのまま奥は奥の、前は前の隣のグループで内側の糸を摘まんで反時計回りに対角のグループの外側に置きます。そして手を戻さず置いたグループの糸たちをまた直します。それを繰り返します。

最初は非常に混乱します。私は作業をしないので冷静にいられるので長女の動作をずっとチェックして間違ったやり方をすると止めます。横から見ているだけなのでできることで、実際に糸を触っていると混乱することは間違いないでしょう。それを繰り返していくと段々と中央の穴から垂れた重りに奈良組の紐が伸びてきます。

 

道明」の糸は絹糸、つまりシルクでしかも手で染めているもの。ご存知の通り絹糸自体が高価である上に手染。そして組むのも手作業。それで商品が高額になるのです。

 

長女は黙々と規則的な作業を続けていきます。そして次の作業ポイントが。捻じった糸がほどけてしまうのです。12本の糸と書きましたが1本1本はより細い絹糸が集まっています。それが捻じれて一本の糸になっています。奈良組をしているとその糸がほどけて幅が広がってきます。そうなると綺麗な奈良組になりません。ほどけてきたときは細い糸を捻じってまとめる必要があります。この作業が加わることでより複雑になります。そのときに手が止まるのでどの糸から作業を再開していいのか分からなくなるのです。中央の糸の状態を見て下になっている糸のグループを摘まんでいきます。これが作業を混乱させる要因で、他の参加者はミスをしてしまい途中から組み直すことをしていました。私は横から長女の動きを確認して間違った工程をするときは指摘し、二人で作業しているようなものでした。

 

ある程度の長さまで奈良組を続けます。長女はブレスレットにするということで手首も細いこともあり、早めに作業が終わりました。だいたい60分くらい。かなり神経を使ったのではないでしょうか。何せ手を休めようと作業台から手を離したら順番が分からなくなってしまうのです。短い長さでもこれくらい時間がかかることが分かります。

 

組みあがった紐、最初は腫れぼったく最後の方は綺麗に細くまとまっていました。熟練度が完成品に出るわけです。そして見事な柄です。よく考えられたものだと思います。そして形状記憶合金のように、曲げて形を変えてもそれを保っています。しかし伸ばすと伸縮性がある。この特性が刀に使えば都合がよく、帯締めに使えば動いても体(帯)にフィットするのだとか。機械で組むと出せない手組みの利点なのだそう。

 

ブレスレットの金具を付けてもらって完成。オシャレなアイテムが完成しました。接着剤が固まってから長女は付けてみました。

 

今回は初心者の体験コース。おそらく単純なものだったのでしょう。より幅が広い、より模様が複雑な、より長いものはもっともっと手間暇がかかり技術が必要なのでしょう。伝統工芸の一端を見学という形ですが体験することができました。実際に手を動かした長女はもっと学ぶことがあったのでしょう。親子ともに良い体験ができました。

 

甲野 功

 

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