開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
私はかなり前から医療マンガをよく読みます。医療マンガとは医師や医療従事者が主人公の医療現場を題材にしたマンガです。そもそも私がこの仕事(あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師など)に就こうと思った最初のきっかけは中学校のときに読んだ「スーパードクターK(真船一雄著)」でした。少年マガジン誌で連載されていて、時代背景として仕方ないと思いますが、「北斗の拳」に大いに影響を受けていると思われる劇画タッチで筋肉ムキムキな謎の医師Kが超人的な能力で難手術を解決するという話です。本名不明、常にマントを羽織り、突然「この手術は俺が執刀する!」と乗り込み、手術が終わると「後の処置は任せた」といって消えていく。今の時代ならば少年マンガでも無理のある設定です。しかしこの作品で医療の世界を知り興味が湧いたのでした。手塚治虫著のブラックジャックよりも手術の様子や体の状況が詳しく描かれていたからでしょうか。
その後鍼灸マッサージ専門学校に入ってからは医療マンガが良い参考書になります。少年マンガの場合、漢字にルビがふってあり難解な医療用語も読み方が分かります。人物のキャラクターやストーリーから知識が紐づけられて定着します。それは今でも変わらず、気になった医療マンガは購入して手元に残すようにしています。今でも購入しているのは「K2(真船一雄著)」。なんと中学校の時に読んでいたスーパードクターKシリーズで続編という形です。30年以上経過しても関連作品が出ているという。
そして今年から手に取るようになったのがドクターエッグスです。
Dr.Eggs ドクターエッグス(三田紀房著) 集英社
<Dr.Eggs ドクターエッグス|集英社グランドジャンプ公式サイト>
三田紀房氏はためになるマンガを描いているのでチェックしています。代表作は「ドラゴン桜」でしょうか。鍼灸マッサージ専門学校時代にこの本から勉強方法のヒントを得たものです。最近は菅田将暉主演で実写映画化された「アルキメデスの大戦」も有名です。それらの作品を抑えて私が一押しなのが「エンゼルバンク」と「インベスターZ」です。前者は「ドラゴン桜」のスピンオフ作品として始まり就職エージェントに転職した主人公を通して社会の解説をします。後者は中高生が投資をして中高一貫の母校を運営するための資金調達をするというもの。どちらも社会と経済の仕組みを学ぶよい教材だと考えています。
その三田氏による医療マンガが始まりました。山形県の医学部に入学した主人公が医師になるための勉強をして成長する姿を描いています。毎回相当取材を重ねる三田氏。とてもリアルで実際の医学部学生もこうなのだろうなと思います。当院に訪れた鍼灸専門学校の学生さんに紹介したら全巻買って回し読みしているそうです。
私が東京医療専門学校鍼灸マッサージ科に入学するときに考えたのは、医師とは言わないまでも医学部の3年生くらいの知識はつけないといけないのだろうなということ。3年生というのは何となくで、医師国家試験前の最上級生にはもちろん届かないけれど3年生くらいなら知識量は必要なのではないかと漠然と予想したのです。医学部に入ったことがないので実際の所は分かりませんが。とにかくしっかりと医学の勉強をしないといけないと気を引き締めたものです。
ドクターエッグスは医学部学生の話なので興味深いわけです。
なお上にあげたK2も医学部の話がありました。K2というタイトルの通り、実質2名の主人公Kがいて、一人は完成された名医のK(神代一人)でもう一人は登場時小学生だった成長過程のK(黒須一成)。黒須一成は超名門大学の医学部に入学し同級生と切磋琢磨しながら成長し、現在医師免許を取得して医師として修業中です。そのためK2の作品から医学部学生の様子がある程度知ることができました。ただK2の主人公の一人黒須一成は最初の作品スーパードクターKの主人公Kのクローン。名医の遺伝子レベルを持ち血筋もスーパーサラブレッドです。
それに対してドクターエッグスの主人公は高校時代に成績がいいというだけの理由で担任の勧めにのっかり地方の医学部に入学してしまったのです。親族に意志がわけでも、医師という職業に強い憧れがあるわけでもない。勉強ができる普通の高校生が医学部に入学してしまい、自動的に医師になることを目指すことになったという話。その分、リアルな心理描写があります。
現在3巻まで発売されており、作中で主人公は2年生。長い解剖学実習が終わり定期試験の勉強が大変です。
解剖実習は医学部特有のカリキュラムでしょう。数日の解剖見学や海外での解剖実習は鍼灸学生でもあるでしょうが、長期間に渡りご献体を文字通り解剖し観察するということはしません。その様子がとても丁寧に描かれています。解剖学は医学の基本であります。それをマンガという分かりやすく(余計なものを省いて、学生の心情や状況を説明して)描いてくれる。
骨の形状をスケッチする。解剖標本を顕微鏡で観察してレポートを書く。膨大な解剖学用語を覚えることに四苦八苦する。教員養成科時代に行ったことと同じことをしています。作品を読むことで当時の記憶が蘇りますし、こういう考えが必要なのかと未熟な主人公の姿を照らし合わせながら考えてしまいます。
三田氏が描く作品には必ず経済的合理性のようなものを感じます。1巻では入学したばかりの学生に、君たち一人が医師免許を取るまでにかかる費用だと、1億円の札束を模した紙の束を持たせるシーンがあるのです。
医師一人を養成するのに4億円かかると言われている。
当然学費では足りず残りは税金でまかなっている。
だから6年で一人前の医師となり社会に貢献する、出資してもらった金額に利子をつけて国に返すように。
そのように教授に言われます。
ほとんどの医療マンガは難手術に挑む主人公という話。医療現場というリアリティーの中で、医学を通して病魔や外傷との戦いをみせます。経済について触れているのは非常に珍しいことだと思います。そのような視点を物語に入れるところが注目するところです。
また主人公は先輩に必ずサークルに入れ、一人でいると学校を辞めるからと諭されます。それもリアルな話だと思いました。
これまでの医療マンガとは見せ方の違うドクターエッグス。3巻までで難病患者は出てきません。ひたすら医師になるための学生生活を描いているという。だからこそ追っかける価値のある作品なのかなと、今の私の立場で思うのです。
甲野 功
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