～山勢松韻先生、文化勲章受章～

 

 

もう過ぎたことですがお箏の大家、山勢松韻先生が文化勲章を受章しました。

 

＜朝日新聞デジタル　松本白鸚さんら６人に文化勲章　ひふみん・ユーミンら文化功労者に＞

 

一体どうしてこのニュースを取り上げたかというと、治療院の近所に人間国宝である山勢松韻先生が住んでいます。その山勢松韻先生が文化勲章を受章し１１月３日の文化の日に親授式が皇居で行われたのです。その偉業に地元はおろか同じ町内で働くものとして、お祝いの気持ちがあります。

 

今年の文化勲章は計６人に贈られました。受章したのは松本白鸚氏（歌舞伎俳優）、上村淳之氏（日本画家）、榊裕之氏（奈良国立大学機構理事長：電子工学）、別府輝彦氏（東京大名誉教授：発酵学）、吉川忠夫氏（京都大名誉教授：中国思想史・中国史）、そして山勢松韻先生（箏曲家）です。箏曲の分野で文化勲章を受章したのは初めてのことだといいます。山勢松韻先生は歴史を残したことになります。

 

さて文化勲章とはどれだけ凄いことなのでしょうか。すでに山勢松韻先生は人間国宝となっています。人間国宝になることより栄誉なことなのでしょうか。そこら辺が分からなかったので文化勲章について調べてみました。

文化勲章は日本の勲章の一つで、科学技術や芸術などの文化の発展や向上にめざましい功績を挙げた者に授与される、階級の無い単一級の勲章です。対象が学者や芸術家になるので歌舞伎、画家、箏曲と並んで学者も受賞したわけですね。昭和１２年（１９３７年）の文化勲章令により制定されました。戦前からある歴史ある勲章ですね。毎年１１月３日の文化の日に親授式が皇居で行われ天皇陛下から直接授与（親授）されます。文化功労者選考分科会の意見を聞いて、文部科学大臣が受賞者を推薦し、閣議により決定されます。文化勲章は文化功労者からおおむね５名を文部科学大臣が選考し、内閣総理大臣に推薦するのです。なお文化功労者以外の者でも必要と認められる場合には選ばれることがあり、この場合は文化勲章に併せて文化功労者にもなります。なお今年の文化功労者には加藤一二三氏（将棋）、松任谷由実氏（シンガーソングライター）ら２０人が選ばれています。

 

それでは山勢松韻先生とはどのような方なのでしょうか。“山勢松韻”は襲名するもので現在三代目になります。そのため、正確には“三代目”山勢松韻先生です。少し複雑ですが“山勢松韻”は箏曲の山田流山勢派の宗家家元です。山田流とは江戸時代の山田検校を祖とする箏曲の流派です。「検校」とは盲人の最高位で、つまり山田検校は視覚障害者でした。同じように江戸時代に活躍した鍼・按摩の杉山和一も検校でした。山田検校から始まった山田流に山勢派が誕生します。その山勢派でみると、現“三代目”山勢松韻は六代目になります。山田流山勢派は初代が男性、二代目と三代目は女性。（山田流山勢派）三代目が“初代”山瀬松陰で四代目が飛んで五代目が“二代目”山瀬松陰、六代目が現“三代目”山瀬松陰となります。

 

今回文化勲章を受章した山勢松韻先生は昭和７年（１９３２年）生まれの８９歳。来月には９０歳です。幼い頃から姉である「”二代目”山勢松韻」を師事しました東京藝術大学音楽学部に進学し、大学修士課程修了（芸術学士）。ＮＨＫ邦楽技能者育成会第一期修了。平成１２年（２０００年）１月１日に山田流山勢派六世家元を相続し『“三代目”山勢松韻』を襲名。

 

昭和６１年（１９８６年）、昭和６２年（１９８７年）、平成元年（１９８９年）と３度にわたり文化庁芸術祭賞受賞。

平成８年（１９９６年）芸術選奨文部大臣賞受賞。

平成１０年（１９９８年）紫綬褒章受章。

平成１３年（２００１年）重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定。

平成１４年（２００２年）日本芸術院賞。

平成２０年（２００８年）芸術院会員。

平成２５年（２０１３年）文化功労者。

そして今年令和４年（２０２２年）に文化勲章。

輝かしい経歴です。受賞歴の他にも多数の職歴を重ねています。

 

山勢松韻先生はあじさい鍼灸マッサージ治療院のある東京都新宿区市谷甲良町にあります。地域の名士どころか、本当にご近所さんです。歩いて１分もありません。それくらい近いのです。前を通ると箏の音が響いてきます。昔からよく見かけるので素性を知らないと本当に近所のおばあさんという感じです。

今回の文化勲章は山勢松韻先生の中でも、市谷甲良町にとっても大きな出来事のようで治療院のすぐそばにある掲示板には文化勲章受章のニュースに山勢松韻先生直筆のコメントが添えられてありました。地域の近所の名士が達成した偉業を祝福します。

 

甲野　功

 

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