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映画『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』を映画館で観てきました。
前回のブログでは作中で遊郭をどのように描いたか書きました。シビアな内容でした。この映画作品は既に放送されたアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』のラスト2話を映画上映しています。そして後半は4月にこれから放送されるアニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』の第1話になっています。刀鍛冶の里編の第一話は原作のマンガ『鬼滅の刃』では第98話「上弦集結」が中心になっています。映画来場者特典の冊子もこの「上弦集結」がテーマです。
上弦とは“上弦の鬼”のこと。『鬼滅の刃』は大正時代を舞台にした話で1000年に渡り、鬼たちを倒そうとする鬼殺隊の活躍を描いています。鬼の始祖であり最後に倒す大将(ラスボス)が鬼舞辻無惨。その下に十二鬼月という12体の強い鬼がいて、その下に一般鬼がいます。十二鬼月のうち下位6体を下弦の鬼、上位6体を上弦の鬼としています。下弦の鬼は壱から陸まで。上弦の鬼も壱から陸までいて、各々数字が小さいほど強くなります。下弦と上弦とでは強さが比較になりません。
鬼は人を食べて暮らしています。陽光を浴びると身体が消滅してしまうので夜に活動して人間を襲っています。不死に近い再生力と生命力を備えていて、太陽の光を浴びる以外は日輪刀という特別な武器で首をはねないと死にません。
鬼を退治するために組織されているのが鬼殺隊。1000年間鬼と戦い続けています。「遊郭編」で113年ぶりに上弦の鬼(陸)が倒されます。鬼のトップである鬼舞辻無惨(通称、無惨様)は十二鬼月が鬼殺隊(鬼側は鬼狩りと呼んでいます)に倒されると会議を開きます。アニメ版の最初「立志編」で下弦の伍が鬼狩りに倒されたときも、残った下弦の鬼を一同集めて滅茶苦茶なことを言って、下弦の壱(つまり下弦の鬼の中で一番強い鬼)を残し無惨様自ら下弦の鬼4体を殺してしまうのです。これが無惨様パワハラ会議と言われていて有名です。あまりに実社会におけるワンマン経営者と社員のやり取りのようだと。短いながら会社員経験のある私には、とてつもないリアリティを感じました。この作者は天才だと思いました。
さて今回の映画ではやはり上弦の鬼(陸)が鬼殺隊に倒されたことに怒り心頭な無惨様は残った上弦の鬼、壱から伍までを呼びつけます。再びパワハラ会議が始まるのでした。通称、上弦パワハラ会議。原作では密かな名シーンです。映画館の大スクリーンで美しい映像美で上弦パワハラ会議を見るとそれはまた何とも言えないものでした。またリアルな人間模様(鬼ですが)が描かれていました。
参加した上弦の鬼達はちょこちょこ鬼殺隊に討伐されてメンバーが入れ替わる下弦の鬼とは違い圧倒的な強さを誇ります。前回上弦の鬼が倒されたのは113年も前です。そのため下弦の鬼達よりも無惨様への対応が慣れています。どこかワンマン社長と一緒に会社を大きくした古参役員のような。
冒頭から無惨様は上弦の陸は負けると思ったと愚痴をこぼします。無惨様は全ての鬼の動向を把握する能力があります。上弦の陸の作戦ミスを指摘しつつも終わったことだからもういいやと切り捨てます。無惨様の目的は青い彼岸花というアイテムを探して太陽の光を浴びても死なない体になること。それを捜索するのに鬼殺隊が目障りで殲滅させたいのです。青い彼岸花は未だに見つからないし、鬼殺隊も滅ぼせていない。上弦の鬼達は何をやっているのかというわけですね。
上弦の壱、弐、参は圧倒的戦闘タイプで探索に向いていません。たぶん壱は最初から探す気が無さそう。弐もヘラヘラと言い訳をしています。参は「無限列車編」で鬼殺隊の上層隊員である柱を倒したのに無惨様に滅茶苦茶怒られたので黙ったまま。肆はすみません、すみませんと平謝り。伍だけが鬼殺隊の隠されたアジトを見つける手がかりを得ましたと無惨様に報告します。唯一有益な情報を持ってきた伍をよくやったと褒めることなどしない無惨様は、中途半端な情報を嬉々として報告するな、と伍の首をはねてしまいます。上弦の鬼は下弦の鬼と違って強いので首をはねられたくらいでは問題ありません。なお無惨様はどの鬼でも容赦なく殺せる力があります。
無惨様は猛烈に頭がよく太陽の光を克服すための薬を自ら研究しています。また時に子ども、時に遊女に化けて人間世界に溶け込み情報収集を行っています。つまりできる人(いや鬼)なのです。一人だと手が回らないので鬼を増やして働かせているのです。本心は同族の鬼を増やしたくはなく、自分一人で十分と考えています。鬼達が結託して裏切ることがないように鬼が連携して行動しないように制限をかけていて、命令しないと鬼達は連携しません。自ら仕事ができるので仕事ができない部下が信じられないという会社創設者そのもの。しかも鬼ですら本心では信用していないので上弦の鬼達にも、期待していない、上弦だからといって容赦しないぞ、と否定・脅しのセリフを言います。壱、弐は慣れているのか意に介していないようですが。
さらに伍が得た情報が確定したら、そこに肆と一緒に向かえと指示を出す無惨様。伍は自分の手柄なのに上役(肆)と一緒なのかよと不満。こういうところも実際の会社でよくある話です。ワンマン社長の鶴の一声で物事が決定してしまうという。
無惨様がいなくなったらなったで、上弦の鬼達のパワーバランスが如実に描かれます。
参は弐より先に鬼になったのに階級を抜かされてしまっています。弐はそこのことを引き合いに出してバカにします。後輩が先に昇進して上司になってしまう。会社でありがちなことですね。鬼も実力社会なので上の鬼を倒せば少ない数を与えられ昇進します。不動のナンバー2である上弦の壱は落ち着いていて参や弐をいさめています。これも現実の会社でありがちな感じです。
だいたいの少年ジャンプ作品だと、強敵が一堂に現れて主人公たちがこれだけ強い敵と戦うのかとその先を期待させるものですが、『鬼滅の刃』の場合、無惨様を前にすると妙なリアリティが出て面白いというか。実際に企業勤務経験があると本当に。「無限列車編」で煉獄さんを倒したあの上弦の参が、上弦パワハラ会議ではバカにされている。相対的に上弦の壱、弐、そして無惨様はどれだけ強いのかと想像を掻き立てますが。
また多くの作品におけるラスボスが持つ野望が無惨様にはありません。世界征服をするとか鬼の世界を作るとか人間を滅ぼしたいとか。とにかく自分一人が安定して快適に暮らしていきたいという願いのみ。同族の鬼達も信用していない。後々話が進んでいくとその態度が大きな影響を受けるはめになる。実力があったのに事業で失敗してしまうカリスマ経営者のようなところがあります。
マンガのときでは感じなかったもの。映画館で美しい映像美と声優たちの迫真の演技が加味されて、より迫力のある、ある意味より馬鹿馬鹿しいものがありました。改めて『鬼滅の刃』の作者は天才だと思いましたし、それを映像に昇華したスタッフ、声優さん達の素晴らしさを実感したものでした。
甲野 功
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