～あん摩マッサージ指圧師の先生にオイルマッサージをしました～

 

 

先日は同業者のあん摩マッサージ指圧師が来院しました。オイルマッサージ施術希望でした。

 

あん摩マッサージ指圧師。厚生労働省が管轄する国家資格免許で３年以上の学習と練習を積んだうえで年に１回しかないあん摩マッサージ指圧師国家試験に合格しあん摩マッサージ指圧師免許を得ないとなることができません。私は鍼灸師（正確にははり師ときゅう師）に同時になる鍼灸マッサージ科で学んだので、３資格免許（あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師）を同年に受験し取得しました。

今回来院されたのは日本で２つしかない（視覚障害のない健常者向け）あん摩マッサージ指圧師だけを養成する学校の一つである日本指圧専門学校卒の先生。あん摩マッサージ指圧師のみの先生です。日本指圧専門学校は「浪越」といった方が通りがよく、あの故浪越徳次郎氏が創設した学校です。浪越指圧を教える学校という印象が私にはあります。

色々と縁が合って昨年から向こうの職場にお邪魔したり、私が先生の指圧を受けたり、今年に入って東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科卒業論文発表会に一緒に出席したり、してきました。今回、当院にお越しくださりました。オイルマッサージコースの予約を承りました。同じあん摩マッサージ指圧師ですから技術を参考にする、開業している院の雰囲気を学ぶといったことも含まれます。

 

あん摩マッサージ指圧師というやや長ったらしいまとまりのない名称。単にマッサージ師とかすればいいのでは、と一般の人は疑問に思うことでしょう。この名称は「あん摩（按摩）」と「マッサージ（ｍａｓｓａｇｅ）」と「指圧」の３種類の徒手療法を統合しているからです。

１０００年以上前に中国から伝わった技術に按摩があります。世間の人が想像するマッサージは技術的にこの按摩であることがほとんど。衣服の上から体を揉む、押すといったことをします。大宝律令にもその言葉が掲載されている古来よりある技術であり職業です。特に視覚障害者の生業として音楽家と並び、昔からありました。視覚障害者のことを「あんま」と呼ぶことがあるのはかつての視覚障害者の多くが按摩師だったからです。

我々あん摩マッサージ指圧師のいうマッサージ（ｍａｓｓａｇｅ）は明治時代に軍医が海外から取り入れた技術で皮膚を直接撫でる技術です。発祥はヨーロッパでかの医聖ヒポクラテスも医師たるものｍａｓｓａｇｅができなければならないと語ったとか。当院では分かりやすくするため“オイルマッサージ”という名称を掲げています。

そして指圧。国家資格成立にあたり按摩、マッサージ以外の徒手療法全てを含み、代表した名称として「指圧」を採用したといいます。ですから単に指で押すことを指圧というわけでは（あん摩マッサージ指圧師の中では）ないのです。浪越指圧が有名ですが、もう一つのあん摩マッサージ指圧師のみの専門学校である長生学園が教える長生術は、分類では指圧に入りますが浪越指圧とは技術的に別物です。私の母校である東京医療専門学校では呉竹指圧というものを教えますが、浪越指圧にかなり似ていますが異なる点が多々あります。

 

あん摩マッサージ指圧師という免許でありますが按摩・ｍａｓｓａｇｅ・指圧という３つの要素を含んでいます。そして養成学校の特色があります。鍼灸と比較するとその差異は不明瞭で技術交流は少ないといえるでしょう。東京医療福祉専門学校は吉田流按摩という古法按摩の技術を今も伝えます。鹿児島鍼灸専門学校の指圧は術者のスタンス（体勢、姿勢）が浪越指圧や呉竹指圧と異なります。他にも私が知らない各学校、各流派の特徴があることでしょう。近年は長生術、浪越指圧を体験して学んでいます。

このように同業者でありながら武器としているものが結構違うのです。同業者だからこそ違いが分かるともいいますが。今回来院された日本指圧専門学校卒の先生は私の手技を受けてみたいということです。またオイルマッサージ（ｍａｓｓａｇｅ）の実際を知りたいということも。

 

あん摩マッサージ指圧師には３つの要素（技術）があると書きました。臨床で３つ全てをしている先生は多くありません。特に按摩と指圧は使いやすいのですがｍａｓｓａｇｅは比較的大変です。滑剤という滑らせる器材を用いて、それはオイル、パウダー、クリームなど。そのための設備と手間が加わります。少なくともマッサージオイルなど、ふき取り用のタオル、防水性のシーツなどを用意しないといけません。私は開業するにあたり最初からオイルマッサージをする前提で考えて準備していました。それでも今の設備環境になるには数年かかっています。来院された先生は今後オイルマッサージを職場で導入することを想定して、体験するという目的がありました。

 

同業者同士という事でオイルマッサージに入る前に按摩と指圧を混ぜた、普段私が行っている手技をしました。繰り返しますが指圧と一言でいっても浪越と呉竹では細かい違いがあるのです。術者同士はその違いがより理解できます。それを踏まえて。続いてオイルマッサージ。ここに私のこだわりを入れておきました。それは按摩・指圧・オイルマッサージの３種類を連続で受けてもらうということ。元々起源も技術も異なるもの。どう違うのか。刺激や狙う部位がどう変わるのかを体験してもらいたかったのです。特に浪越指圧とオイルマッサージでは、技術体系はもちろんのこと受けた感触が大きく違います。各々の得意不得意といるところなども。

 

オイルマッサージをする上での細かいノウハウみたいなこともお話しました。使うなら水溶性オイルの方が圧倒的に楽だとか。当初は従来の脂溶性マッサージオイルを使っていたのですが洗濯がとても大変で。またオイルとクリームでは圧の加わり方が変わる。オイルやクリームという素材を選ぶことができるのでどの製品を採用する科の選択肢が生まれること（指圧だけならそれを考える必要がない）。下にホットシートを敷いて温めるようにする。などなど。実際にやってみて分かったことを伝えました。

 

施術後はやはり業界の情報交換になります。どうしてここで開業したのか、業界状況、今後の予測、経営手法など。自分のところで参考になることを学ぶものです。私も新しい業界の取り組みが始まるというお話を聞き新しい情報を得ることができました。

 

最後に私の子ども達と作ったグッズに興味をもたれました。チャリティマッサージのとき渡しているオリジナル缶バッジとキーホルダー。デザインや印刷は私が行いましたがバッジ作成や素材の写真撮影を長女が行いました。非売品で関係者かチャリティマッサージ参加者にしか渡していないもの。とても気に入ってくれました。キーホルダーを持ち帰って、後日車のキーに付けていますというお報せをもらいました。携わった子ども達も喜ぶことでしょう。

 

あん摩マッサージ指圧師同士、横のつながりが足りないと感じています。今回も素晴らしい機会になりました。

 

甲野　功

 

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