開院時間
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昨年発覚した柔道整復師国家試験問題漏洩事件。逮捕、起訴、裁判、判決と一連の動きがあり一応の幕引きがされました。
国家資格の問題が漏洩していたという大問題。国家資格の根幹を揺るがす事態だと思いますし、何より私自身が柔道整復師であり当事者でありますから、ずっと注目してきました。実験発覚から容疑者逮捕、関係各所の家宅捜索、実刑判決(執行猶予付き)という現実に起きた出来事をつぶさに報道からチェックしていました。
想像外に国家試験問題が漏洩していたことに対するリアクションが無かったように感じています。少なくとも私の知り合いの柔道整復師から意見や感想は耳に入っていません。SNSでの反応も驚くほど小さいという印象です。この漏洩事件よりも、今後施術所に「整骨院」という名称が使用できなくなることや今年の(第31回)柔道整復師国家試験合格率が前年に比べて大幅に低下し過去最低の数字を出したことの方が大きなリアクションがあったと思います。特に後者の合格率低下に関しては、昨年捜査により発覚した専門学校4校以外にも全国的に問題が漏洩していたのではないかという疑惑が生まれ、加藤厚生労働大臣が第三者委員会を作り調査をすると発言することになりました。今日時点で調査報告がなされたという情報を得ていません。まだこの柔道整復師国家試験問題漏洩事件は続いているとも言えるでしょう。
そのようなときに興味深いネットニュースがありました。
【裁判ルポ】国家試験で、入社試験で、不正続出! その信じられない手口と、罪の重さは?
この事件の裁判を傍聴したライターが書いたものです。こういうネット記事を紹介する際に、記事のないようについて信憑性を考慮しないといけないと思いますが、ライターが氏名や経歴・職歴を明記しており読売新聞ニュースサイトの有料記事と比較しても内容がほぼ同じであることから、信用するに値すると判断しました。そこには判決文からは分からなかった細かな情報が掲載されていました。
この記事は試験問題に関する不正をテーマに2つの事件(判決)を取り上げています。前半が柔道整復師国家試験問題漏洩事件について、後半はWEBテスト替え玉受験についてです。後半の方は社会的に重要な事柄ではありますが、関りが希薄という事で内容に触れません。柔道整復師国家試験問題漏洩に関する記事内容についてのみ内容の紹介とそれに対する所感を述べます。詳しくは記事本文を参照してください。またこの記事では被告人の名前を仮名にしています。よって記事に習って被告人の名前を記事内で設定した仮名で書きます。
・倉本(仮名):主犯で試験委員会から問題情報を録音していた
・満田(仮名):柔道整復試験財団元理事。倉本(仮名)氏から問題情報(キーワード)を得て講師を務めていた専門学校に情報を教えた
この記事で判明した情報を挙げていきます。ほとんど既に報道されたものですが、何点か気になる部分がありました。
・『その筆記試験問題が10年近く漏洩していることが発覚した』
記事の文面を抜粋しました。筆記試験問題とは柔道整復師国家試験の問題をさします。問題は“10年近く漏洩していることが発覚した”という点。昨年第30回の問題だけではない。もっと長期にわたって問題が漏洩していた。それも10年近く。私が柔道整復師国家試験を受けた2011年は該当していなかった。しかしこれだけ長きに渡って問題が漏洩されて特定の受験生が問題内容を知っていたとしたらそれは見過ごせません。
・『上下関係はなく、お互いの金銭授受はなかった、という』
記事の文面を抜粋しました。上下関係というのは両被告の関係性です。年齢は違えど(3歳差)友人同士で上下関係はなく、金銭授受はなかったとあります。先輩の圧力で情報提供をさせたかのような報道がありましたがそうではなく対等な関係だとあります。また金銭のやり取りが無かった。そうだとすると私としてはやや動機が理解しづらいところがあります。先輩に言われて仕方なく、あるいは情報を売ったという形で倉本(仮名)氏が情報を流したとする方が納得できるからです。
・『試験委員になったことも、問題漏洩も、前任者からの“引き継ぎ業務”だったからだ』
記事の文面を抜粋しました。倉本(仮名)氏についてのことです。柔道整復師国家試験問題を作成する試験委員を務めており、だからこそ問題を知ることができたのです。この役職も問題漏洩行為も、前任者がおりそこからの引継いだものであった。そういうことです。倉本(仮名)氏が自ら追いついたのではなく前任者から役職と“漏洩という業務”を引き継いだ。それは生徒のため、学校のためという理由で最初は断ったが何度も言われて引き受けるようになったと。更に倉本(仮名)氏は情報を提供した、自身が勤めていた専門学校から、謝礼を受け取っておらず、それどころか懲戒解雇処分を受けているといいます。倉本(仮名)氏が漏洩に及んだ動機はどこにあったのでしょう。
また倉本(仮名)氏から情報を得て講師を務めていた学校に漏洩させた満田(仮名)氏も学校から金銭授受はないと証言し、彼の弁護士も私利私欲のためではないと証言したと記事にあります。
この文面を読む限り、有罪判決を受けた両被告は個人的に学校のためを思って漏洩させたとなります。違法行為をしているという自覚があったと想像できるのですが、その割にあまりに利益を求めていないし得てもいないのではないかと私は感じます。
・『倉本被告の弁護士は「約10年間、試験問題が漏洩している。専門学校内で少なくとも5人の人間が関係しているのに、倉本氏以外訴追されていないのはおかしい」と主張』
記事の文面を抜粋しました。倉本(仮名)氏の弁護士が主張した内容です。約10年間も試験問題が漏洩したこと。倉本(仮名)氏が勤めていた(問題を漏洩した)専門学校で少なくとも5名が関係していた。このような情報がうかがえます。裁判で弁護士が適当なことを主張することはないでしょうから、根拠となる証拠があった上でのことでしょう。もちろん記事の内容が事実を歪曲していないという前提ですが。このことから専門学校の組織的な継続的な犯行と言えるのではないでしょうか。だから「倉本氏以外訴追されていなのはおかしい」という主張になるのでしょう。
ライターはこの記事前半(柔道整復師国家試験問題漏洩事件に関する部分)を“裁判では、起訴された案件しか審議されない。しかし、10年にわたった国家資格試験の漏洩事件が、2人の被告の有罪判決だけで幕引きになっていいのだろうか──。”という文章でしめています。正に同じ印象です。
厚生労働大臣が調査をすると発言しました。有罪判決になった被告だけでなく全国の学校すら対象に、この事件に対する専門学校の関与を調べないといけないでしょう。そうしなければ柔道整復師という資格自体が危ぶまれるかもしれません。
甲野 功
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