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数学の時間に「定義」と「定理」について学んだ経験があると思います。有名なものはピタゴラスの定理でしょうか。なんじゃそれ、という人も少なくないかもしれませんが、定義と定理を知っているとものの見方が変わると考えているのです。
「定義」とは用語の意味をはっきり述べたものであり、基本的に一つの用語に対して一つの説明しかありません。 定義から証明された事柄を「定理」といいます。
この条件であればこうである。前提条件を示すのが定義です。例えば『各々直線上にない3点を直線で結んだ図形を三角形という』。これは定義になります。これはこのように定義しているため、その真偽を問う必要がありません。数学的な表現をすれば証明する必要が無いのです。それが定義です。
定義された条件下で生じる不変の事がらを定理といいます。『三角形の内角の和は180°になる(三角形の内側にある3つの角度を全て足すと合計が180°になる)』が定理になります。これは『各々直線上にない3点を直線で結んだ図形』(定義)である三角形において、必ずあることです。
※なお180°という角度にも、180°とは何かという定義が存在することを付け加えておきます。
『三角形のうち、3辺が全て同じものを正三角形とよぶ』、これは定義となります。正三角形とは、ということを定義しています。
そこから『正三角形の内角は全て60°(正三角形の角度は3つ全て等しく、その角度は60°になる)』、これは定理になります。
あるいは『3つ全ての角度が60°の三角形を正三角形とする』という定義も言えます。正多角体が定義されていたら『正多角の三角形が正三角形である』という定義も言えるでしょう。
『三角形のうち、一つの内角が90°のものを直角三角形とよぶ』、これは定義です。直角三角形とは何かを定めています。『直角三角形において長辺の長さの二乗は残り2辺のそれぞれの長さを二乗したもの和に等しい』これは定理。これは有名な<ピタゴラス(三平方)の定理>のことです。数式にするとc²=a²+b²(a、b、cは直角三角形の辺の長さであり、aとbが直角を構成する辺である)となります。
定理は定義されたものでなければ生まれません。数学に限らずものごとは定義することが大切で、定義した先に定理が生まれるものです。スポーツであればルールという定義があるから、そのルール内でのテクニックが生まれ、それが定理と言えると考えています。定義という縛りとも言えますが。野球は投げたボールをバットで打ち返すことがいわば定義です。投げたボールを投げる場所を変える、変化を付ける、球速を変える、タイミングを変えるなどの工夫が定理にあたると考えます。ボール自体を変えることは定義を変えることなので論外です。公式にルールが変更されてボールの指定が変われば別ですが、その場合は定義し直されるということ。
厳密に数学の定義と定理とは違いますが、少年マンガではこの定義と定理を感じさせるのが能力者バトルです。能力者バトルとはキャラクターが持つ特殊能力によって戦うという意味です。
有名な少年マンガ『ドラゴンボール』は基本的に個々人のパワー(戦闘力)が勝敗を決めます。スカウターという機会で戦闘力を数値化するという画期的な発明をしました。しかし延々とパワーアップしないといけないため戦闘力のインフレが起き、どんどんと強い敵が現れ続ける弊害が生まれます。簡単に星を破壊できるような。どこまで強くするのか、どれだけ変身・合体をして強さを示すのか、という方向に進んだと思います。
そこから革命を起こしたのが『ジョジョの奇妙な冒険』。この作品の第3部から登場する<スタンド>という能力がそれです。これは特殊能力(超能力)を擬人化、具現化したもの。「スタンド(能力)は各人、1つしか持てない」という定義といえる大前提のルールがあり、そこから「パワー型は能力者本人の近くでないといけない」、「スタンド使い同士は引かれあう」などの付随した項目(いわば定理)が派生したといえます。中学生くらいに少年ジャンプ誌に連載されていた『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド能力バトルをリアルタイムで読んでいました。考え方が数学の定義と定理だなと感じていたのです。
話はそれますが、マンガ界に革命を起こしたと言えるメジャー作品が『ジョジョの奇妙な冒険』だと考えています。単純なパワーの優劣が勝負を分けるそれまでの少年マンガ(『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』など)から能力の相性や使い方・工夫によって勝負がどう転ぶか分からない展開を生むことができるようなったのです。例えば本人は非力ですが相手の気持ちを読むことができるスタンド能力者がテレビゲームでの勝負に持ち込むといったもの。また補助的な能力で戦闘のサポートに徹するキャラが登場するなど、全員が戦闘員で戦い続けるという一辺倒なストーリーから幅が持てるようになったと思います。<スタンド>の発明はその後の『HUNTER×HUNTER』での<念>、『ワンピース』での<悪魔の実>といった特殊能力を誕生させることになったと思います。
能力者バトルという少年ジャンプの王道マンガをみると、定義という前提条件やルール、つまり縛りの中から、いかに画期的な定理という工夫を生むのかが、能力者バトルのキモになっていると思います。特に個人的に『HUNTER×HUNTER』の<念>は定義と定理が複雑で、よく考えられていると感心します。
このように物事を定義と定理という数学的な視点で考えるようにしていると色々と便利なことがあります。こと法律や判例を読むときにこの姿勢が発揮されます。大学時代に、複数の大学が集まる合同練習会で他大学の選手が指導している話し方を聞いたときに、やけに数学的(定義を明確にしてそこから導き出せる定理は何かを語っているかのような指導方法)だと感じて素性を聞いところ、法学部の人だというのです。東京理科大学理学部の学生だった私には法学部はとても縁遠い存在でしたが急に親近感を覚えたものでした。
何が定義で、どれが定理か。日常から気をつけています。
甲野 功
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