開院時間
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昨日は鍼灸マッサージ専門学生さん2名を招いて『抵抗運動』をテーマに講義と実技をしました。
『抵抗運動』と聞くと政治的な、政策に抵抗する活動のように感じるかもしれません。私のあん摩マッサージ指圧師や鍼灸師の世界では“自動運動、他動運動、抵抗運動”という3つのセットになった運動方法として、喚起されるものです。自動運動とは患者さんが自ら動くこと。他動運動とは(患者さんからみて他人である)術者(この場合、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師)が患者さんの体を動かすこと。抵抗運動とは患者さんの動作を術者が止めるように負荷をかけること。このような意味合いの『抵抗運動』です。
私のとって最後の専門学校、東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科を卒業して来年で10年。小学校から数えると相当長い時間を学生として過ごしました。人生でこれだけ学校に通わない期間が続いたことはありません。学校に通っていると必ず試験や課題、宿題といったことと対面します。その時は苦しみながらストレスを抱えながら勉強や練習、試験対策に励みます。卒業するときはもう試験の無い生活だ、と心が躍ります。ところがいざ試験が無い生活になると追い込まれて勉強や練習する環境が無くなります。まして今のように一人で開業していると仕事を振る上司も、指導する後輩もいません。気楽でありますが、だらけると際限なくだらけてしまいます。
そうならないように自ら勉強しなければいけない環境を作る必要に迫られ、学生さんに対するセミナーを開催するようにしました。既に知っている、できているという内容でも、人に教えるという状況になると学び直す必要に駆られます。自分が理解することと他人に理解してもらうのは別の話。どのように伝えるか工夫しないといけません。6月頭のときのように、トリガーポイントについて教えてくださいと依頼があればそれに向けて準備します。それだけでは不十分で自らセミナーを企画し、実施日が確定したらそれまでに嫌でも準備しないといけない状況を作るようにする。そういう取り組みをしています。
今回、約20年色々なところで勉強してきた抵抗運動についてまとめてみたいと思いつきました。多くの技術や流派で扱われる抵抗運動。様々な場面で抵抗運動を扱ってきた経験をまとめて整理する。それを、今やっておきたいなと。そのためには絶対にやらないといけない状況にしないと思い付きで終わってしまうだろう。これは個人的な活動ですが、学生さんにも有用な内容になるだろうと考えて、馴染みの学生さんに連絡をしました。快諾を受け実施日が決まります。そうなるともう戻れないので期日までに資料を準備するしかありません。このようにして自らの学びの場を作りました。
抵抗運動を用いることは何か。書き出してみると、MMT(徒手筋力テスト)、PNF(固有受容性神経筋促通法)全般、PNFストレッチ、操体法、各種理学徒手検査が出てきました。細かくはもっとあるでしょうし、PNFとPNFストレッチはまとめてしまっても一緒かもしれませんが、ひとまずこの5種類だなと。特に重要なのは最初に挙げた“自動運動、他動運動、抵抗運動”。この3つの運動の違いとその特徴をまとめる。理学徒手検査の基本的なところだからです。
そこから更に前に戻り、患者さんの体を運動させて何をみるのかを考えたときに、それは多くの場合「痛み」である、ということ。「痛み」を取り除くことは私の仕事においてとても重要なこと。徒手検査をして痛みの発生原因部位を推測する必要があります。
そうなると痛みとは何か?という問いが生まれて、痛みの種類、それらの特徴、原因となる主な部位について整理して説明する必要があると考えました。痛み(疼痛)には自発痛、動作時痛、安静時痛、夜間痛などその特徴によって分類されます。痛みが出る原因としては筋肉、骨、関節(を構成する軟部組織)、血管、脳(中枢神経系)、神経(末梢神経系)などが挙げられます。発生原因によって痛みの特徴が変わります。それを自動運動、他動運動、抵抗運動でどのように見つけていくのか。
流れが定まってきました。
よって流れとしては
①痛みの種類の紹介
②痛みが由来する部位とその特徴
③痛みをどのように評価するか
④痛みに対する動作確認
という導入部分にしました。
回りくどいかもしれませんが、技術を教える前に、その技術は何のために行うのかを教える上で必要だと考えました。そこから追加情報が増えて、1次痛覚と2次痛覚の違い、全人的苦痛(トータルペイン)の紹介、鍼灸師には東洋医学的評価(脈診、腹診、舌診など)を加えることができる、なども入れました。
前段階の資料作りだけでも想像以上に時間が掛かってしまいました。ただそのおかげで本科(鍼灸マッサージ科)、柔整科(柔道整体師科)時代に学んだことが整理されました。
続いて抵抗運動の実際を紹介することに。実技として学生さんに受けてもらい実際に体験してもらうのですが、先に理屈、理論を伝えておこうと資料にまとめます。
・MMT(Manual Muscle Test)
・PNF (Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)
・PNFストレッチ
・操体法、SPAT (Soutaihou evolved Pelvic Adjust Technique)
・理学検査
この順番で各解説をします。
ここでも分かったつもりだったのが説明するために調べ直すと、勘違いしていたこと、間違って覚えていたこと、新たな知識を得る、といった収穫がありました。資料作成の過程でたくさんの学びがありました。
当日は既に授業で知っている内容も少なくなかったので座学はスムーズに進みました。実技はやってみせて、やってもらう。その時に学校の授業と現場の違いをその都度話しました。既に臨床現場の補助に入っている学生さんもいて、実際はこんなにうまくいかないですよね、という共感を得られました。色々と内容が脱線しつつもこれまでの経験を踏まえた技術と解説をすることができたと私は思っています。
セミナー終了後は雑談、質疑応答時間へ。やはり卒業後の進路について悩みがあり相談に乗りました。2023年前半最後の仕事は自分への課題を行うものでした。
甲野 功
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