開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
本日8月9日は長崎に原子爆弾が投下された日でありますが、私の業界では『全日本鍼灸マッサージ師会』が制定した「はり・きゅう・マッサージの日」でもあります。ずいぶん前(昭和時代)に『日本鍼灸師会』が8月9日から語呂で「はりきゅうの日」と制定しPR活動をしていたそうですが、長崎のことを考えて不謹慎だということで活動を控えたそうです(ベテランの先生の話より)。そして今から20年前の2003年に『全日本鍼灸マッサージ師会』が「はり・きゅう・マッサージの日」として制定したとのこと。ちなみに4月9日を『日本鍼灸協会』が「鍼灸の日」と2017年に制定しています。
情報がアップデートされていないのか意図的なのか、8月9日を「はりきゅうの日」とアピールする鍼灸師が多くて個人的に引っかかっています。正確な情報を世間に伝えていないことは専門家として問題があることだと考えます。また制定した『全日本鍼灸マッサージ師会』、そして「鍼灸の日」を制定した『日本鍼灸協会』に対して失礼だとも。また意図的にマッサージの文言を消して鍼灸だけを宣伝しているようにも感じるのです。私はあはき師と言われる、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の免許を持ちます。だからこそ、この「はり・きゅう・マッサージの日」というものにこだわりがあります。
そんな気持ちを毎年胸に秘めながら過ごしていたのですが、あるところから同じ新宿区に盲人の先生が施術をする施設があることを知りました。それは「ヘレン・ケラー治療院」です。
就労継続支援B型事業所 ヘレン・ケラー治療院 鍼灸・あん摩マッサージ指圧
東京メトロ副都心線西早稲田駅からすぐ、早稲田大学、コズミックセンター、諏訪神社の近くにあります。実は開設されてからまだ1年という施設(昨年2022年6月に開設)。地元新宿区であり、同じ業界でありながら私はその存在を知らずにいました。8月26日に感謝デーイベントを行うという告知情報から知ったのでした。ヘレン・ケラー治療院は「ヘレン・ケラー学院」の附属施術所という立ち位置になります。ヘレン・ケラー学院はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得を目指す視覚障害者のための養成施設・専修学校です。以前紹介した東京都新宿区には6つの鍼灸養成施設があり、その一つがヘレン・ケラー学院です。
※新宿区には現在、四ツ谷の「東京医療専門学校」、大久保の「東洋鍼灸専門学校」、高田馬場の「日本医学柔整鍼灸専門学校」、四谷三丁目の「新宿医療専門学校」、新宿の「首都医校」が他にあります。ヘレン・ケラー学院、東京医療専門学校、東洋鍼灸専門学校はあん摩マッサージ指圧師の取得もできる学校です。
ヘレン・ケラー学院が設立されたのは身体障害者福祉法が施行された1950年(昭和25)のこと。2020年に70周年を迎えました。母体は社会福祉法人「東京ヘレン・ケラー協会」です。昭和25年(1950年)年4月に旧名財団法人東日本ヘレン・ケラー財団として発足し、昭和27年(1952年)年に現在の名称に改めました。母体となったのが、昭和12年(1937年)のヘレン・ケラー女史1回目の来日を記念して設立された財団法人「東京盲人会館」と、昭和23年(1948年)のヘレン・ケラー女史2回目の来日記念事業を展開するために組織された「ヘレン・ケラー・キャンペーン(H・K・C)委員会」。両団体が合体しヘレン・ケラー財団になったのでした。ヘレン・ケラー女史とはもちろん”盲聾唖三重苦の聖女”といわれた、ヘレン・ケラーのことです。
ヘレン・ケラー女史は都合3度来日しており、日本との関係がありました。このことについてはまた別の機会に書こうと思います。
ヘレン・ケラー治療院に着くと受付を済ませて施術室へ。学院の施術室でもあるとのこと。教室の広さでした。そこで晴眼者(視覚障害のない健常者)の指導教官と思わる先生と盲人の先生が対応しました。事前に書いたカルテ内容を口頭で盲人の先生に伝えます。私は過去に複数名の盲人あん摩マッサージ指圧師と働いたこと、友人の全盲あん摩マッサージ指圧師がいること、盲学校の学生さんが来院したことがある、といった経験から一般的には視覚障害者には慣れていると思います。事前に同業者であることを伝えておいたので問診は解剖学用語が飛び交うものでした。指導教官の触診もした後に実際に按摩・指圧となりました。
ベッドは電動ベッドでした。当院では採用していないモーターで高さが調節できるベッドです。なかなか電動ベッドを導入しているマッサージ院はないのです。会話をしながら足を中心に60分の施術でした。私も同業者であるので技術について分かります。まず特徴があるなと感じたのは腕から手指(上肢)をしっかりと押す(押圧)、揉む(揉捏)こと。結構、肩や腰は触っても腕はあまり触らないというお店が多いのですが時間をかけて上肢を施術しました。私が書いた予診票では主に下肢が辛いと記したのですがきちんと上肢もしてくれました。それは無駄な手技の時間を省いているからできること。こういうのを「組み立て」といってどこに時間を割くかという時間配分なのですが、足をメインにしながらしっかりとおさえていました。
次に感じたのは圧のかけ方。弱すぎず強すぎず。あん摩マッサージ指圧師ならできて当然なのですが、力の入れ方が甘いことがあります。強く押せばいんでしょ、と短絡的に考えている術者や、単に力が弱いというのにこれまで会ってきました。押したときの感触から強さを調節することが大切なのですがそれがなかなかできないものです。私も若いときは苦にならなかったのですが、今は強すぎる指圧は体が壊れそうで不安になります。そうなると体は緊張でより硬直し悪循環。弱いなら弱いで、何をしているの?という白けた気持ちになります。気分よくリラックスできてかつ圧が入っていると感じる強さでした。もちろん場所によって強弱をつけるのは当然です。
いくつも挙げるときりがないので最後に。手根揉捏が上手でした。手のひらで手首に近い部分を手根というのですが、そこを使って輪状に揉むことを手根揉捏といいます。これが一見技術的に簡単なようで圧を入れて行うのが結構難しいのです。久しぶりにああ上手だな、効いているなと思うものでした。こういうのは同業者でないとこだわらない部分です。
同じあん摩マッサージ指圧師でも出た養成機関によって特色が出るものです。ここ数年はそれを体験し比較検討することを心掛けています。更に視覚障害者(盲人)では違いがあるのかという興味。盲人と一言でいっても弱視、全盲、視野狭窄、片目失明など残存する機能で状況はかなり変わります。一概にいうことはできません。その中で共通項があるのか否かという疑問。今回気が付いたのは押し方、揉み方より触診の仕方。ここに特徴があるのではないか。また機会を見つけて検証してみようと思います。
8月9日という日に、新たな出会いと体験ができました。
甲野 功
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