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~法律上の理学療法士の定義~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 理学療法士及び作業療法士法
理学療法士及び作業療法士法 第二条 3

 

 

現在、理学療法士による問題がじわじわと出ています。昨年の2月17日付けで埼玉県は理学療法士が運営する認知症専門リハビリテーション施設(自称、整体院)に対して、景品表示法違反(優良誤認表示)で措置命令を出しています。景品表示法とは、端的に言うと誇大広告を取り締まる法律で、嘘の広告をしてはいけませんよということ。当たり前のことですが。

 

埼玉県> 整体院等を経営する事業者に対して行政処分を行いました

 

ここで問われたのは広告内容のことなのですが、そもそも開業権のない理学療法士が整体院として開業し、かつ医師の指示がない状態で(つまり自己の判断で)認知症患者へのリハビリテーション行為を行っていることは問題ではないのか?ということです。理学療法士にはあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師と違って開業する権利が法的に認められていません。そのため日本には“理学療法院”なるものは存在しません(海外は別)。ところが理学療法士は整体師を名乗り、整体院や治療院という名目で開業している実態があります。そして理学療法士の業務は医療機関において医師の指示の下行う業務であるにも関わらず、理学療法士がリハビリテーションにあたる行為を行う上で実質診断をしています。これは厳密にいうと医師法違反になるはずです。

 

この現状に公益社団法人理学療法士協会は平成27年(2015年)の段階で、『急告』というタイトルで文書をだしております。そこには

脳卒中後遺症患者、腰痛・頸肩腕障害患者等に対し、医療保険、介護保険を利用せず、理学療法を実施する行為を宣伝したホームページが見受けられます。また、各地から理学療法士による違反行為としての指摘を受けております。

身分法上は、「理学療法士とは、厚労大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下、理学療法を行うことを業とする者をいう。」となっています。したがって、理学療法士が医師の指示を得ずに障害のある者に対し、理学療法を提供し、業とすることは違反行為となります

本会としましては、理学療法士の「開業権」及び「開業」については、現行法上、全く認められるものではないとの見解に立っています。

という文章があり、理学療法士協会員に対して注意喚起を行っております。明確に違法行為であると指摘しているのです。

 

私の考えとしてものごとは違法行為かどうかということを重視しています。現在の日本は法治国家であり、人を裁くのは法である、という原則に成り立っています。そうしないと独裁国家のように、権力者の気分次第で罪に問われる社会になります。特に医療系国家資格免許で仕事をする私たちは法律によりその身分や業務を特別に許可されているわけです。法律の、この部分は無視して他の部分では守ってもらい権利を主張する、というのは理不尽極まりないと考えます。国家試験には関係法規という科目があり、関連する法律に関する問題が必ず出題されます。つまり免許を所得する以上、その法律を知っているという前提があります。試験対策で過去問題を解いて国家試験をパスする者がいることは否めませんが、日本で生活する以上、日本の法律に制限を受けるのは間違いありません(と同時に日々の生活が法律に守られている)。

 

さて理学療法士に関する法律は「理学療法士及び作業療法士法」となります。第2条にはこのようにあります。

第2条 

3 この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。

第2条3は理学療法士とは、という定義についてです。そこには

厚生労働大臣の免許を受けて

理学療法士の名称を用いて

医師の指示の下に

という条件下で

理学療法を行うことを業とする者

となります。(※“業とする”とは「反復継続の意志を持って行うこと」と解釈されます。)

このような内容というか条件は、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師にはありません。単にあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうを業とする者であり、業とするには免許が必要であるというわけです。

 

条件①は理学療法士免許が必要ということ。これは免許であるので当然で、本来やってはいけない(禁止している)ことを十分な技術・知識を習得しているという条件のもと特別に許すことが免許です。

条件②の名称に関しては、理学療法士は「名称独占」と言われる権利を有しており、理学療法士免許を持たない者が理学療法士の名前を使うことは許されておりません。この名称独占は医師にもあり、医師免許が無いものが医師を名乗ることが禁止されています。それだけ社会的責任があると考えられます。

条件③の医師の指示の下にというのは医療機関で業務にあたること。ほとんどの医療資格(看護師や薬剤師など)は医師の指示を受けてその業務を行います。例えできる能力があったとしても医師の指示(オーダー)がないのに行うことはできません。看護師は指示なしに注射で投薬できませんし、薬剤師は処方せんが無ければ薬を調合して患者に渡すことはできません。すなわち医師がいる医療機関で働く前提です。むしろ開業権がある、つまり医師の指示なしに独自判断で施術ができる、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師が特別というか異例だと言えるでしょう。

 

この条件を満たした上で「理学療法を行うことを業とする者」を、「理学療法士及び作業療法士法」における、理学療法士とすると読めます。

言い換えると条件を満たしていなければ(理学療法士及び作業療法士法上の)理学療法士ではないと読み取れるのではないでしょうか。

 

条件①の否定:理学療法士免許のない無免許で理学療法を業とする者は理学療法士ではない

条件②の否定:理学療法士の名称を用いないで理学療法を業とする者は理学療法士ではない

この2つは納得できると思います。まず条件①は免許の有無を言っていますから、理学療法士免許が無いものはもちろん理学療法士とは言えないでしょう。続いて条件②を否定した状況を仮定すると、もしも私があん摩マッサージ指圧師として自院で理学療法を患者さんに行っていたとして、私が理学療法士になるかというとそのようなことは当然あり得ません。リハビリテーションをはじめとする理学療法そのものは誰が(業として)行っても違法行為にあたりません。例えば脳梗塞や大腿骨頚部骨折など重病・重傷を患ったときに自宅で患者の家族がリハビリテーション作業をしても、問題がないのです。そこを「業務独占」といって、禁止にしてしまうと困る状況があるのです。(※ただし医師の指示の下行う“診療補助行為”としての理学療法については業務独占になるという厚生労働省の見解があります。医療行為の中でも医師以外が出来ないものを絶対的医行為といい、医師の指示を受けて行う仕事が相対的医行為=診療補助行為といいます。)

何はともあれ例え理学療法を業としていたとしても(法的に)理学療法士になるわけでありません。そして理学療法士免許を持たない者が理学療法士の名称を用いることはそもそも違法行為です。

 

そして条件③を否定すると、

医師の指示の下でない状況で理学療法を業とする者は理学療法士ではない

ということになるのではないでしょうか。

私は理数系大学出身で数学の定義や命題について学んできました。第2条3が法律上の理学療法士はこのような者をいうという定義でその条件を示しています。その条件に合致しなければそもそも理学療法士ではないと法律(「理学療法士及び作業療法士法」)から読み取ります。そうなると医師の指示の下でない、独立開業して理学療法士を名乗り、理学療法を業として行っている者は理学療法士とは言えないと考えられます。もしもそう解釈すると、理学療法士を名乗るのは「名称独占」に抵触しないのかという疑問。具体的には同法第17条はこのようになっています。

第17条 理学療法士でない者は、理学療法士という名称又は機能療法士その他理学療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない。

第2条3で定義する理学療法士の条件を満たさないものが第17条でいう『理学療法士でない者』に該当するとなると第17条違反(名称独占違反)になるのではないでしょうか。第17条は理学療法士を対象にした法律では理学療法士以外の者に対してです。

 

このことはどう法的解釈をするのでしょうか。素朴な疑問です。おそらく理学療法士及び作業療法士法が制定した昭和40年の段階では理学療法士が開業するという状況は想定していなかったと思われます。現在の状況を踏まえてどう法律を解釈するのでしょうか。冒頭に問題が起きているとしましたが、今後裁判等で判例が出てくることなのかもしれません。

 

甲野 功

 

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