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最近、「DX」という用語をよく目にしませんか?ビジネス系のCMで登場します。なぜかDXでデジタルトランスフォーメーションと読みます。Dはデジタル(Digital)でいいですがXをトランスフォーメーション(transformation)と読むのがよく分かりません。DTなのでは?と思います。何はともあれDXという言葉はいつの間にかビジネス用語として一般化し、知っていて(少なくとも読めますよね、くらいには)当然という雰囲気になっています。DXとは何かという疑問から、いつもの「見るだけノート」シリーズを購入し学んでみました。
『DX時代の成功事例がゼロからわかる! 使えるビジネスモデル 見るだけノート』
平野敦士カール著 宝島社
この本はビジネスモデルが主体となっています。ですからDXの解説本ではありません。ただDX時代とあるようにDXが当たり前になった社会情勢でのビジネスモデルについて述べられているので、具体例が登場し理解が進むと思います。個人的にビジネスモデルにとても興味があり、経営において非常に重要な位置を占めていると考えています。
それでは早速DXとは何か。本書では類似用語としてデジタイゼーション(digitization)(デジタル化)とデジタライゼーション(digitization)があることをしめしています。デジタイゼーションとデジタライゼーション。字面がそっくりで分かりにくいですね。
デジタイゼーションはデジタイズが語源でデジタル化のこと。具体的なことを言えば、紙ベースで保管されている文書をPDFで電子化して保管するといった、アナログ媒体をデジタル媒体に変換する工程を指します。ペーパーレス化はまさにデジタイゼーション(デジタル化)になります。
続いてデジタライゼーションはデジタライズ(※デジタイズではない)が語源です。デジタル化した電子データを活用することを指します。よってデジタライゼーションはデジタイゼーション(デジタル化)の次の段階です。
当院の業務を例にとると、売り上げや患者さん情報をノートに手書きで記載し保存していたことをExcelデータに入力することがデジタイゼーション(デジタル化)。そこから患者さんを性別、住所別、年齢層で分類(ソート)して情報整理を行いその傾向を掴むことや、売上推移をグラフ化して可視化することが、デジタライゼーションになります。
DXは更にその先になります。
既に述べたようにDXはデジタルトランスフォーメーションのこと。日本語にすると“デジタルへの転換”という意味になるわけです。デジタル化(電子化)そのものではなく転換する、一変するというニュアンスがあります。経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」において、DXの定義を以下のようにしています。
『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、 競争上の優位性を確立すること』。
長いですが”変革”という言葉が2回登場することから分かるように、デジタル化によって色々なものを変革し、ゴールとして競争で優位になることだとしています。本書では『DXとは、デジタルを活用した新しい発想によって、全く新しい価値や仕組みを作り出すことなのです。』と説明しています。よって単に企業が最新鋭のデジタル機器を導入すればいい、という話ではないのです。その前に2つの工程を経てDXに至ります。
デジタイゼーション(デジタル化)
→デジタライゼーション(活用)
→DX(デジタルトランスフォーメーション)(変革)
ではデジタライゼーションからDXはどのような違い(ステップアップ)があるのでしょうか。活用から変革になることとは。本書ではDX時代により、『取引を支えるビジネスが重要になる』と述べています。これまでは商品やサービスを提供してその代金・料金(=対価)を得ることが一般的な商売でした。それらの商取引を支える仕組みがデジタル化によって新しく生まれます。具体的にはウーバーイーツやYouTube。はるか以前からあった出前をサイトによって不特定多数のお店から配達できるようにウーバーイーツは実現しました。それは配達員が全国で登録していることによって実現させたのです。これまでの一企業がデリバリー業務を展開するのではなく、システムによって不特定多数の配達員を確保することで生まれたビジネスモデルです。YouTubeはかつてホームビデオでごく一部の近親者で楽しんでいた動画を、全世界の一般人が投稿できるシステム(プラットフォーム)を構築しました。それによりマスメディアでなければ情報発信できなかった時代が終了し、誰でも動画(コンテンツ)を発信できるようになったのです。これを本書では『新しい「場の創造」』と表現しています。
またDXにより、取引をする上での非効率を解消できると述べています。製造、営業、受発注業務、物流などの取引に存在する工程において無駄を減らす。物流に関して言えば、農家のような一次産業を例にとると、農家が農作物を生産→農協に出荷→卸売市場→小売り→消費者といった工程を、農家→消費者とダイレクトに結ぶことがデジタルを活用することで可能となります。途中に入る中間業者が無くなるので価格を抑えることができますし、鮮度も保てます。何より農家は自ら価格設定を行うことができますし、消費者の声(反響、感想など)を得ることができるのです。
このようにデジタル化により作業を効率化する以上の”変革(新しいビジネスモデル)”にまで持っていくのがDXと言えるのではないかと考えました。それは、なかなか漠然としていて曖昧で実現して浸透してからやっとこれがDXだったのだ、と認識するのかなと。
私の仕事に置き換えるとSNS活用がDXにあたるように思います。かつては専門学校、勉強会、研究会、学会、職場など現実(リアル)に出会ったなかでしか交流の場がありませんでした。また自身の考えや研究内容を発信するには、コミュニティーに入って口頭で伝えることや論文や症例報告を作成して学会に提出するという手段しかありませんでした。現実に対面した会話できる人数は限られますし、論文を作成し提出し査読を受けて手直しし、学会発表や業界紙に掲載されるには膨大な手間と時間がかかります。それは信頼を担保するために大切なことであり、デジタル社会の現代では余計に貴重なことでもあります。しかし簡単にできないのも確か。それがSNSの登場により、日本全国、それどころか全世界に自らの意見や考えを発信できるようになりました。学会に入らなくても、専門学校が違っても、素晴らしい先生とコンタクトが取れるようになったのです。ちょうど土曜日に来院した鍼灸マッサージ専門学校進学希望者もまだ学生ですらないのに、私のところに来て相談しています。SNSがなければ実現することはなかったでしょう。外からでは分かりづらい業界のこと、学校選び、卒業後の進路などを聞くことができる。
反対に鍼灸マッサージ院を運営する私は日々情報を発信することで、その内容に興味を惹かれたり感銘を受けたりした者が来院することで対価を得ることができます。開業当初はポータルサイト(口コミサイト)に有料登録したり広告を出したりしていたのですが、効果はゼロに等しかったです。ポータルサイトの内容を更新してもサイト運営者のさじ加減で掲載順位は変わります。口コミ内容もサイト運営者によって選別されてしまいます。何よりサイト登録する手間(個人情報を登録することなど)が消費者(患者さん)にとって面倒になっているのです。それならSNSを通してダイレクトに情報をみて、直接アポイントを取った方が早い。私も日々自分が書きたい内容のことを書いて、それをコンテンツとしてSNSに投稿しホームページのブログとして掲載しています。これが、他者(業者)が介入することで、鍼灸師らしい内容にしろ、もっと検索ワードに引っ掛かるようなものを入れろ、あなたの趣味は要らない、など注文がつくのです。タメになるような情報は巷に溢れていています。それよりも個人を出して、この人は面白い、信頼できる、興味がある、といった感情を喚起させた方が良いと考えています。ある意味で広告やポータルサイトに頼らない新しいビジネスモデルを構築したわけで、DXの実例なのではないでしょうか。
DXとは何か。『DXとは、デジタルを活用した新しい発想によって、全く新しい価値や仕組みを作り出すことなのです。』と本書では説明します。それを踏まえた上で、結局、デジタル機器はツールであってそれをどうのように活用するかが重要である、という当然のことを再認識した気がします。
甲野 功
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