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~地域散策 歌舞伎町弁財天~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 歌舞伎町弁財天
歌舞伎町弁財天

 

 

私は子ども達と映画に行くときは新宿歌舞伎町の東宝シネマズ新宿を利用します。巨大なゴジラのオブジェがあるビルです。有名な歌舞伎町のアーケードの先、突き当りにある歌舞伎町の中心部。歌舞伎町タワーが竣工するまでは圧倒的なランドマークを感じさせました。地下鉄大江戸線が新宿西口駅までいき、地下道(プロムナード)を通り、ドン・キホーテ歌舞伎町店の前から地上に出て東宝シネマズに行くのがいつものルートです。

その途中、歌舞伎町のど真ん中にも関わらず、右手に不思議なスペースあります。一見すると狭い公園のようにみえますが。壁には龍と虎の絵。中央には、とても高い位置にある社。その社は封印されているかのように赤い扉で閉ざされています。一体何なのでしょうか。それは歌舞伎町弁財天なのです。

 

歌舞伎町弁財天 | 一般社団法人新宿観光振興協会

 

大きな龍虎の壁画、あまりに高い位置にある社に目を奪われますが、実は弁財天像がむき出しで設置されています。これが歌舞伎町弁財天です。歌舞伎町弁財天は歌舞音曲、商売繁盛の神様であり、歌舞伎町の守護神なのです。弁財天は通称「弁天様」と言われ全国各地で祭られています。仏教以前に賢者聖人の信仰厚き宇賀神と称する天地創造の神のお一方であり、仏教の守護神です。水を司る神であり、音楽の神でもあります。信仰すれば芸術に秀でるところから弁才天、さらに財宝が授かるご利益のあることから弁財天、と2つの書き方をします。

 

明治から大正の頃、現在の歌舞伎町一帯は肥前国(現在の長崎県)大村藩守だった大村家邸宅があり、「大村の森」と呼ばれる池と湿地と森で囲まれ絶好の鴨場でした。明治44(1911年)にここの土地を購入したのが、「尾張屋銀行」を設立し明治の女性実業家の一人とも言われた峯島喜代。江戸で創業した質屋「尾張屋」(現在の「尾張屋土地株式会社」)を営む峯島家に生まれた喜代は、明治9(1876年)、夫で四代目の峯島茂兵衛の死去に伴い、43歳で家業を継ぎます。そして喜代は東京の土地を次々と購入するのですが、その一つが淀橋町、現在の歌舞伎町でした。淀橋町は淀橋浄水場、ヨドバシカメラの淀橋ですね。喜代はこの土地の森林を伐採し池を埋め立て造成・区画割をして、開発を進めました。

 

大正2(1913年)に上野寛永寺不忍弁財天の分祀として本尊を勧請しました。(※なお歌舞伎町という地名になったのは戦後のことで、それまでは角筈といいました。)

大正9(1920年)には、この土地に東京府立第五高等女学校(現都立富士高校)が建てられます。これは喜代が「女性の社会進出に対する教育に寄与したい」との思いから東京府に多額の学校設立資金を寄付するとともに同地を無償で貸与したことによって、実現したのでした。学校ができたことで周辺には住宅も増え、街は活気を帯び始めていきます。

その後、昭和20年(1945年)の東京大空襲でよって本堂と第五高等女学校が被災します。このことにより第五高等女学校は中野区富士見町に移転することに。弁財天は、熱心な信者の一人が避難されておきました。そして弁財天からの御告げにより戻ることになります。

昭和38(1963年)に本堂が再建される際に歌舞伎町弁天堂再建奉賛会によって記念碑が建てられます。

それからまた時間が経ち、東洋一の歓楽街として有名となった歌舞伎町。それは悪名でもありました。怖い、汚い、臭い、危険というイメージがありました。それを払拭するために「歌舞伎町アートプロジェクト」という活動が発足します。その一環として、トランスボックス(変圧器)に装飾を施すという活動が行われます。この活動をするアーティストの中のお一人、東學氏が歌舞伎町弁財天へ墨画を描いたのです。平成26年(2014年)に向かって右側の龍神を、翌平成27年(2015年)には左側の虎神を完成させます。2年かかった壁の墨画は一対の龍虎として圧倒的な存在感を示しています。

その前は歌舞伎町公園として石のベンチや机が置かれています。

 

写真だけみると歌舞伎町に見えないかもしれませんが、その正面はホストクラブが軒を連ねます。周囲を雑居ビルで囲まれた、歌舞伎町にポツンと残った異世界です。梯子を持っていかないと社を参拝することができない状態。どこか中国文化を思われるような景色。あまり知られていない歌舞伎町のスポットです。

 

甲野 功

 

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