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~灸の話 灸の等級~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 艾の等級
艾の等級

 

 

蓬(よもぎ)の葉を乾燥させて精製して作られる艾(もぐさ)。この艾に火を点けて燃焼させるのが基本的なお灸です。指で捻って形を作り、皮膚の上に直接の艾を置き、線香で着火する。これを直接灸といいます。皮膚と艾の間に何かを介して(琵琶の葉、味噌、生姜、塩などが昔から使われてきました)行うものが間接灸。艾を固めて成型し棒状にして用いる棒灸。体に刺入した鍼の柄に付ける灸頭鍼。様々なやり方がお灸にはあります。

近年になり電子温灸やアロマ灸といった艾を用いないお灸が開発されました。より手軽に、より安全に、という目的でしょうか。元々お灸は火傷をつくるのが当たり前という考えがあり、火傷によって身体の防衛機能が活発化して病気に強い、体調を良くするという意図がありました。特に農家では収穫期に体調が悪くなり農業ができなくなると死活問題となるので強いお灸が好まれました。打膿灸という敢えて火傷をつくり、更に膏薬を塗って化膿させて長引かせるという技法もあります。化膿することで免疫機能がずっと活発になるということです。この打膿灸は灸跡がしっかりと皮膚に残ってしまうこと、また現代社会では抗生物質や医薬品が発達し、ここまで強い刺激を行うメリットがないためほとんど用いられません。

艾を用いたお灸、特に直接灸においては、艾の質により熱さ(燃焼温度)肌触り(手触り)が大きく左右されます。艾には等級があるのですきゅう師は用途に応じて等級を選んで使用する艾を使い分けます。艾の等級とはどのようなものか説明しましょう。

まず艾はどのように作られるのか簡単に説明します。

 

①蓬の葉を乾燥

蓬の葉を摘み乾燥させます。

 

②葉砕加工

乾燥した蓬の葉を均等な長さに加工します。

 

③石臼荒引き加工

石臼で蓬の葉をすり潰します。このとき篩(ふるい)選別するとキメの荒い下級艾ができます。

 

④石臼細引き加工

さらに石臼で更に細かくすり潰すことで上級艾ができます。

 

⑤篩加工

更に艾と異物を選別していきます。異物(不純物)がどれくらい混入しているかで等級がかわります。

 

⑥唐箕(とうみ)加工

さらに不純物を徹底的に除去する工程です。これにより高級もぐさに仕上げていきます。

 

※参考 

小林老舗ホームページ もぐさの製法

 

このように乾燥させた蓬の葉を精製して艾を作る過程で不純物を取り除いていくのですが、不純物が含まれていれば等級は低く、不純物が無いほど高い等級になります。大まかに上位から、最高級高級上級中級下級と分類されます。これはメーカーによって若干異なるようで最高級の上に特選というランクを作るところもあります。等級が上がるということは生産できる量が限られるということ。どれくらい希少なのでしょうか。お灸メーカーの「せんねん灸」のブログを参考します。

 

せんねん灸セルフケアの森>せんねん君のつぶやき もぐさのはなし~11話~

 

乾燥蓬葉の量に対する艾の収得率は、直接灸用の艾においては、最高級品は乾燥蓬葉の量に対して3.0~3.5%しかできません。高級品で4.0%。中級品・下級品でも7.0〜10.0%です。間接灸用になると一気に収得率はあがるのですが。つまり大量に蓬の葉を収穫しても艾になる割合は低く、特に等級が高くなればその割合はわずか3%程度ということ。生ものですから気候や保存条件でも変わってきます。安定して高級艾を生産することは簡単なことではありません。

 

では等級が高いものと低いものでは何が異なるのでしょうか。蓬の葉には腺毛という部位があるのですが、この腺毛部にチネオールらの揮発性油が成分に入っています。これの効果により艾にしたときに火が付きやすく一瞬で燃え尽きるようになります。腺毛の割合が多い艾ほど等級が上がるのです。等級の高い最高級になると熱さを感じにくくなります。それは燃焼時間が短いので一瞬で燃え尽き熱を感じている間が非常に短いのです。感覚としてはジュッ!という感じで瞬間的な刺激です。そのような刺激の方が深部に響くような感覚になります。これが、燃焼時間が長い場合だとジュ~!という感じで熱さを感じる時間が長く辛いのです。不純物の含有率が高いとこのような状態になります。何より燃焼温度が不純物が入ると高くなるのでそもそも熱い。ですから皮膚と距離を空ける間接灸や隔物灸は熱が高い下級、中級艾が用いられるのです。

 

もう一つ大きな特徴が肌触りです。患者は皮膚に直接置かれる艾の感覚。術者は捻るときの手触り。小さな形(米粒大)であれば、患者の肌触りはほとんど気にならないと思いますが、術者には大きな違いがでます。等級の高い艾の方が手触りがよく、艾を捻りやすくなります。捻りやすいというのは直接灸の際に形を作りやすくなるのです。艾捻りは鍼灸専門学校に入ったら最初に練習する基本中の基本です。綺麗な形を素早く作るために練習を重ねるのです。最初はこれで苦労するものです。固く捻れば燃焼温度が高くなります。燃焼時間も密度が高いので長くなります。きゅう師は状況によって艾の大きさを変えるのです。それは熱さ(つまり刺激量)を調節するため。細かく経穴(ツボ)ごとに刺激量を調整することができるのがプロたる所以。そのためには捻りにくい等級が低い艾だと、かなり難しくなるのです。ふんわりと指に馴染む最高級艾は術者の技術を後押ししてくるのです。

 

また等級が高い艾ほど匂いが良くなります。艾特有の匂いがあるのですが、人によって好みがありますが、匂いをかいでリラックスするアロマ効果のようなものも期待できます。

 

モクサアフリカジャパンの報告によると鍼灸先進国(伝統国)たる日本・中国・韓国の3か国で艾を捻る直接灸を行うのは日本だけになっているそう。確かに鍼灸マッサージ教員養成科での中医学実技では一度も直接灸を習いませんでした。灸頭鍼とくるみ灸(隔物灸)だけでした。繊細な技術を要する直接灸は世界的に廃れていっていると。それはすなわち高級艾が必要とされなくなっているということでもあります。生産するのに手間がかかる高級艾はメーカーも作りたがりません。既に述べたように蓬の葉に対して割合が少ないわけですし。国内の艾メーカーを守るためにも高級艾を用いて消費していかないといけません。かく言う私は現在ほとんど直接灸を行っていないので、現在練習を重ねて臨床で使う準備をしています。その際に艾の等級は違いを強く実感します。

 

甲野 功

 

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