開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科での特別授業を担当しました。
2017年から始まったこの特別授業。年に一度のペースで行われ、今回で7回目となりました。毎年、関東鍼灸専門学校の内原拓宗副校長と一緒に2年生の生徒を対象に行っています。1回目の2017年のときは内原先生のクラウドファンディングを実施した活動報告に、私が開業鍼灸師の立場から比較するような感じで話をするものでした。鍼灸師(専門学校専任教員と開業鍼灸師)がSNSを使ってどのようなことをしたのかという。当時は現在と状況が異なっており(もちろん新型コロナ前で東京オリンピックも開催されておりません)、クラウドファンディングやZoom、Twitterといったものが鍼灸業界にここまで普及していませんでした。もの珍しさもあったと思います。
翌年も行われ今年まで継続しています。その間にSNSというベースは残して話す内容は微妙に変化してきました。内原先生の鍼灸専門学校管理職の立場から学校とりまく環境のこと、私の開業鍼灸師の立場から院を運営する実際、といった内容へ。そしてここ数年はこの1年間の時事ネタを踏まえて話をするというものになっています。例年12月近辺で実施していたのですが今年は9月末。時期が早いので準備も前倒しになりました。昨年12月から今年9月までに業界内外で様々な出来事が起きました。その中から何を話し、何を話さないのか。相手は学生といえど鍼灸師、あるいはあん摩マッサージ指圧師の免許を持ったプロ。免許取得前の専門学校生に向ける授業ではありません。さてどうしたものか。今年は特に悩みました。毎回資料は作り直します。ベースはありますが昨年と同じにはなりません、しません。社会環境、業界状況の変化を踏まえて内容を精査します。
テーマは「開業鍼灸師のSNS活用」で固定しています。その上で今年はサブタイトルを付けることにしました。それが“広報活動の重要性”。良くも悪くも広報が今重要だと考えた結果です。広報としているのは、広告・宣伝とは違う、という意味合いを持たせています。SNSを使って何をするの?という話になったときに広報活動に利用するのか、広告として使用するのか、では似ているようで異なったものだと私は考えているのです。患者さんに来てもらう(いわば集客)、専門学校の教員であれば生徒を集める。これらのことは必須事項。売上がなければ、生徒がいなければ、鍼灸院と専門学校は継続できません。そのためにすることは(敢えてこう表現しますが)集客。どれだけ素晴らしい技術や授業内容があったとしても、体験する人がいなければ周りに伝わりません(口コミ)。先ずは自らが外に発信しないといけないと常々考えています。看板を掲げれば自然と人が集まるという時代ではないでしょう(果たしてそんな時代があったのか?)。反対にSNSが普及したおかげでうちのような住宅街の奥まったところでも来てもらえるようになりました。人通りの多い商店街、繁華街、路面店といった条件を満たさなくても。そのメリット面をまず入れることをしています。
この授業が始まった2017年当時は鍼灸業界がここまでSNS活用をしていなかったと記憶しています。それこそ内原先生のように鍼灸専門学校の管理職を務める先生が率先して利用しているというのは非常に珍しかった。だから話す価値があったと思います。現在はSNSのアカウントを持たない方が珍しいですし、やりませんというのはかなり難しい状況になっていると思います。LINE、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookという4大SNSと言われるものを一つも使っていないという人はまずいないのではないでしょうか。そこにYouTube、TikTokらの動画系SNS、音声系SNSまでやる人も珍しくなくなっています。また時代の流れということだけなく、鍼灸業界の特異性も踏まえてやはり必要であるということ。そうしないと今でも、SNSは怖い、危険なもの、という声が授業を終えると届きます。そこで釘を刺すのがSNSはツールに過ぎず、おかしな使い方をすればもちろん危険であるが、SNSそのものに罪はない。包丁は料理をする道具であるが他人に突きつければ凶器になります。包丁は危険だから使用禁止にしましょう、とはならないわけで。また視点を変えてSNSはオウンドメディアであるという話を入れます。オウンドメディアとは個々人が持つメディアという意味でテレビ、ラジオ、新聞といったマスメディアに対して一般人や一企業でも情報発信ができる媒体。ホームページやブログ、SNSなどがそれにあたります。SNSというオウンドメディアを使って広報活動をすることが大事ですよと教員養成科学生に訴えたい。学生ですが全員が国家資格免許を取得したプロ。卒業後は多くが開業、教員とステージを上がっていく人材です。その人たちに何かしら必要になるよと。
骨子がある上で何を入れるのか特に悩みました。現実にこの1年で起きた出来事。どれを引き合いに出すか。取捨選択が難しかったです。最近とみ感じるのが広告宣伝に対する規制です。私達はあはき法、柔整法と通称呼ばれるあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師に関連する法律により広告制限を課せられています。国家試験にも出る関係法規は理解しているのですが、他にも景品表示法、不当競争防止法や医療広告ガイドライン、あはき柔整広告検討会など専門分野外の法律や法制化されていない広告ガイドラインもあるのです。SNSを活用して広報活動をした方がいいと主張するのは、問題となる広告表現をしてはいけませんよというメッセージでもあるのです。そのために現実に起きた事件を取り上げたい。ではどの事件を紹介するのか。そのような悩みです。5日前に発表資料(パワーポイントのスライド)を一度完成させてしばらく考えず。頭から離してから、直前に見直してまた少し手直しをしました。いつも授業前は不安になります。鍼灸学生さんに話すより教員養成科で話す方がずっと緊張します。
当日は思っていたよりもリラックスしてスムーズに話せました。一部柔道整復師でないと分からない話をしたのですが、生徒のリアクションによりああ、この人は柔道整復師でもあるな、と分かるくらいの余裕がありました。また3日前に教員養成科に来て職員と話をしていたことも関係していたのでしょう。週に2回も代々木校舎に入ることは卒業以来なかったことなので。
今年も自分にとって大きな仕事が終わりました。あと1年ほどで代々木校舎が無くなります。柔道整復科、教員養成科合わせて5年間通った校舎。教員養成科卒業後も年に何度か訪問してきた校舎。あの教室で教壇に立ったという事が心の勲章になります。
甲野 功
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