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~誇大広告の摘発が最も効果的な予防策なのか~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 2023年教員養成科特別授業スライド
2023年の教員養成科特別授業スライド表紙

 

 

先月末に東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科で行った特別授業。毎年、開業鍼灸師の立場からSNS活用について授業をさせてもらっています。始まった6年前はSNSを利用する鍼灸師が少なかったから物珍しさがあったと思います。それから新型コロナという大きな混乱を経て、特段SNSを利用することが珍しいことではなくなったと思います。そして社会常識が変わったという。10年以上前からSNSはあり、国を左右するツールでありました。アラブの春はFacebookで情報伝達されてきた結果だと言いますし、アメリカではトランプ元大統領のTwitter(当時)アカウントを凍結するという事態が起きました。革命、政治に用いられる存在にとっくになっていました。それがコロナ禍で人と人とが現実に交流することが難しくなったときに一気に日本で定着が進んだように感じます。こと鍼灸師界隈では。Zoom、オンライン、YouTubeなどそれまで手を出していなかった教育機関、業界団体、学会等が参入してきた。利用せざる負えない状況になった。そう感じています。

 

授業で話した内容としてSNSは個人のオウンドメディアであるということ。かつてはマスメディア、つまり新聞、ラジオ、テレビが周知されるための機会でした。テレビに出た、新聞・雑誌に取り上げられた。それが重要なことでした。ところが今は個人が全世界に発信できるようになりました。令和のヒットメーカーはSNSで活動を発信した先に生まれた方が少なくありません。それは個人鍼灸師も同じことが言えます。個人が情報発信をしてその内容に興味がある、共感する、賛同するといった人が現れれば即仕事に結びつく。授業の際に、この特別授業そのものがTwitter(当時)のやり取りから始まり、(一緒に担当する関東鍼灸専門学校副校長である)内原先生に対面したのは授業当日の職員室だった、と話しました。鍼灸マッサージ教員養成科の学生ならこの教団に立つのが安易なものではないことが理解できるはず。それが卒業したとはいえ学校にも学会にも大した実績を残していない当時独立3年目の人間がSNSのやり取りのみでできたというわけです。

今年の授業で伝えたかったことは広報活動が重要であること。それは独立して開業する者だけでなく、専任教員となって学校(組織)で働く者にも。良いことをしているから黙っていても人が集まるというのはほぼ幻想です。口コミで人は集まるという意見があるかもしれませんが、最初は知ってもらえなければ口コミは起きません。レストランにおいて、どれだけ美味しい料理でもメニューに掲載されなければ注文が入ることはないのです。誰もその美味しい料理を知らないのですから。まず知ってもらうために広報活動をしないといけません。その手段としてSNSが重要であるのです。もちろんSNSだけをしていれば問題ないというわけではありませんが。

 

メインのテーマは以上なのですが、裏のテーマとして怪しい宣伝文句、やってはいけない内容を使わないためにも広報活動が大事であると伝えました。自ら発信していると、内容・文言に気を使うので違法性がある、コンプライアンスに引っかかるかどうかに敏感になります。自分や周囲の人々を守るためにも悪質な広告や宣伝を見極める力が必要です。特に専門性を求められるこの仕事は、私たちにとっては当たり前すぎて意識すらしないことでも、一般の方には判断がつかず、どう考えても言い過ぎだろうという広告を鵜呑みにしてしまう。そのようなことが往々にしてあります。私が出会った中には「はりきゅう(鍼灸)が国家資格必要なんですか?!そんなこと知っている人なんていないでしょ。」と言った方がいます。いい人なので私をバカにする意図をもって出た言葉ではありません。本当に知らないのです。そうなれば、美容鍼が流行っているから自分でやってみよう、小銭稼ぎにサロンを開いていてしまおう、といった考えに至ることがあるかもしれませんし、無免許の素人に鍼を刺されて健康被害を起こすかもしれません。

 

教員養成科特別授業で、既に免許を持っている鍼灸師の学生さんに伝えたかった最後の内容が、危険な施術行為を抑止するのは広告から摘発するしか現状ないのであろう、ということです。どういうことでしょうか。今の日本ではあはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師にかかわる法律)や医師法による業務独占が必ずしも守られていません。免許なしに各種該当行為(鍼灸施術や医行為など)を行ってはいけません。それを業務独占といいます。当たり前のことが医療業界はできていないことが往々にしてあるのです。きちんと法律の明文通りに取り締まっていればシャクティ治療事件や栃木県祈禱師事件、新潟県ズンズン運動事件などで被害者が出ていないはずです。医師免許はもちろん医療系資格すらない者が、治療ができると称して活動し結果的に死亡者が出ています。死亡者が出てからやっと傷害事件として扱われるということが少なくありません。それは何故か。教員養成科では授業で習っているはずなので詳しくは説明しませんでしたが仙台で起きた通称HS式無熱高周波療法事件における、昭和35年に出された最高裁判決が発端となっています。このときの最高裁判所が破棄差戻しをした内容が曲解されて、「免許が無くても健康被害が起きなければ取り締まりはない」という通説が社会に広まったのです。この事件の被告は結局有罪判決になっていることはほとんど知られていません。やはり無免許で施術をしたら有罪になるのですが、高裁にやり直しを命じた判決内容だけが一人歩き。しかもおかしな意味合いで。その結果、自称医師ですらこの通説を信じて、あん摩マッサージ指圧師でなくてもマッサージはできる、とSNSに投稿するケースがあります(自称医師アカウントなので本当に医師なのかは分からないのですが)。関連する政治家への質問書においても政府からの回答として、医行為は専門知識が無ければ健康被害を及ぼすおそれのあるもの、という見解が示されています。医行為ですらそうなのですから、マッサージや鍼灸も“健康被害が出ないなら無免許で行っても問題ない”という考えが横行します。鍼灸は痛い、怖い、熱いといったネガティブなイメージがあるのでやらないだけでマッサージは誰でも行っているのが現状。鍼灸も最近は美容鍼やセルフお灸のイメージが向上していて、はり師きゅう師免許が無いのに行っているケースが出てきています。

 

この状況だと健康被害が起きないと摘発されないという状況です。危険だから未然に防ぐということができない。極論として、人が死ななければ問題視されない。反対にことが起きたら一気に医師法違反をとることも出てきています。最近起きた脱毛サロンでの火傷被害の件では、出力を抑えるカバーを付け忘れた状態で1分ほど脱毛機器を背中に照射したところ火傷になり、行った20代女性スタッフと脱毛サロンオーナーの20代女性が医師法違反疑いで書類送検されました。使用していた脱毛機器は高出力で医療機器に分類されます。健康被害が起きたので医師法違反疑い(その後、逮捕や起訴されたのかは定かではありません)。健康被害が起きてからは警察、保健所等が動くとしても、未然に防ぐためにはどうしたらよいのか。その一つの答えがおかしな宣伝内容の広告を摘発することなのかもしれません

 

業務そのものを摘発することは結構難しいと考えられます。現行犯逮捕ではありませんが、その場で違法性を明らかにすることは簡単ではありません。まず一般の方は術者が免許を持っているか否かを判断できません。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の免許は賞状大の大きさで携帯できません。本名と生年月日も入っているのであまり人に見せるものでもありません。携帯型の免許証明書が存在しますが全員が携帯していないです。何より自動車運転免許のように業務時に免許を携帯する義務がないのです。そして患者にとって受けた行為が違法行為になるかの判断はほとんどつかないでしょう。鍼灸を整体と呼ぶ人もいますし、吸い玉を鍼灸という人もいます。医師ではない人をお医者さんと認識していることもあるのです。そのため何か害が起きないと調べないという状況が多いのです。健康被害が起きてからやっと調べるという。

そうならないように医療法で病院と紛らわしい施設名称を使ってはいけないという広告規制があります。前提として医師免許を持たない者が自らを医師と名乗ることも医師免許で禁止しています(名称独占という)。医師を騙って詐欺行為をしたからという話の以前に、非医師が医師を名乗ること自体がそもそも禁止されています。ああき法にも柔道整復師法にも広告制限があります。これは誇大広告を規制するのと無免許の医療行為もどきを抑制する狙いがあります。

 

では国家資格がない者なら法律の広告制限がないのでやりたい放題なのでしょうか。そうではありません。景品表示法(通称)という誇大広告を禁止する法律が存在し、それは全てのジャンルに適応されます。どんな広告でも対象になります。最近ではステルスマーケティングも厳しく取り締まる改正がなされました。更に法律ではカバーしきれない細かい内容についても、医療機関に対しては医療広告ガイドラインが、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師に関しては広告検討会が、規制内容を定めています。それらの内容は更新されていきます。最近では柔道整復師の施術所に関して、「整骨院」という名称は禁止になることが発表になりました。本来認められていないもので「接骨院」にしなければならないところを多くが守らないので改めて規制すると検討会で決議されたのです。医療広告ガイドラインは医療機関に関する広告規制を定めるもので、かつてホームページは広告内容に入らなかったのが今は広告とみなされています。教員養成科特別授業では近年行政処分を受けた事例を紹介しました。現実社会では業務に対する処罰よりも前に広告規制をかけることが活発になっていると話しました。

今後はAIが更に進歩しアルゴリズムが変わっていき、Web上の検索システムや掲載順位に対して違法広告を自動的に排除あるいは掲載しにくくするようになるのではないでしょうか。もちろん景品表示法違反はチラシや看板といった現実の表示も規制対象になりますから誇大広告はこれからもチェックされます。広告を禁じられたら大きなマイナスになるので抑止力の一端になるでしょう。

 

健康被害が起きる前に防ぐには。広告面から規制することが予防策になっているのではないでしょうか。

 

甲野 功

 

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