～日光輪王寺　相輪橖～

今年も発表された「都道府県魅力度ランキング」。日本全国４７都道府県のブランド調査でアンケートを元にデータを集計して順位をつけています。トップは不動の北海道。トップ５は北海道、京都府、沖縄県、東京都、大阪府の順番で近年変化がありません。むしろ最下位がどこになるかに注目が集まっています。その中でも北関東３県、すなわち栃木県、群馬県、茨城県の争いが有名でした。ワースト３をこの北関東３県で争うことがメディアに取り上げられてきました。しかし最近は佐賀県と埼玉県が入ってきており、昨年は４７位が佐賀県となりました。今年は昨年４６位だった茨城県が再び４７位（２０２１年以来）に返り咲くという結果に。この最下位争いで目を見張ったのが２０２０年に４７位を取った栃木県が今年２０２３年では３９位と４０位台を超えてランクアップしたことです。私にとって北関東３県の中では一番縁のある栃木県。ランキングが上がっていることが嬉しく思います。

栃木県の魅力といえば、まず思い出されるのは日光ではないでしょうか。関東では最も人気のある紅葉の名所であり、世界遺産もある世界的に有名な観光地。旅情報番組でも頻繁に紹介されます。今年１月に家族旅行をし、長女は移動教室でも訪れました。他にも宇都宮、あしかがフラワーパーク、鬼怒川といったエリアやスポットがありますが日光はずば抜けて高い人気と知名度でしょう。ただ遠方の人には日光が栃木県にあることを知らないそう。栃木県＝日光というイメージがないため魅力度ランキングが低くなるのだとか。横浜、箱根、鎌倉、江の島がすべて神奈川県にあるという印象が薄いのに似ているかもしれません。

その日光には二社一寺といって２つの神社と１つのお寺が有名です。すなわち日光東照宮（神社）、二荒山神社、輪王寺です。その輪王寺にあるとても印象的な建築物を紹介します。それが相輪橖です。最近放送された『帰れマンデー』というテレビ番組でも日光がロケ地で、サンドウィッチマンさんがこの建築物は何だろうと興味を示している様子が映っていました。

日光山·輪王寺

相輪橖は“そうりんとう”と読みます。相輪塔とも書くのでこちらだと素直に読めるでしょう。字の通り、塔なのですが、その形状はロケットミサイルのようです。その奇妙な形状に目を奪われました。作ったのは（発願者は）南光坊天海大僧正。徳川家康から家光まで将軍３代まで仕えた徳川幕府の頭脳といえるような人物です。天海が比叡山延暦寺の相輪橖を模して制作したといいます。

創建されたのは寛永２０年（１６４３年）。４００年の歴史を誇ります。当初は日光東照宮奥院に建てられていたましたが、地震により二荒山神社の境内薬師堂そばに移築されます。さらに明治１４年（１８８１年）に神仏分離令により、現在の輪王寺三仏堂と大護摩堂の間に移されました。大正６年（１９１７年）に重要文化財に指定され、令和２年（２０２０年）から令和４年（２０２２年）の期間に１４７年ぶりの解体保存修理がなされました。そのため１月に見たときは非常に美しい姿でした。

青銅製で高さが１６ｍもあります。中央の柱を半分くらの長さの４本の柱（副柱）が支えるようにあります。またその前に置かれた左右の燈籠は同じく青銅製で糸割符燈籠と呼ばれるもの。徳川家康から生糸輸入の特権を許された京都、堺、江戸、大阪、長崎の糸割符商人が奉納したものです。胴体部分のレリーフは、中国の二十四孝の物語がモチーフとなっています。相輪橖も糸割符灯籠も黒と金の色使いで色彩豊かな日光東照宮の陽明門と対比的です。

相輪橖は（仏教の一派である）天台宗特有の仏塔（ストゥーパ）。内部に経典をおさめることによって邪気を祓い聖域を守護しています。相輪橖の”相輪”というのは五重塔や三重塔の最上層の屋根の上についている金具の部分です。つまり三重塔や五重塔の屋根の部分を無くし、柱と屋根の上にある相輪の部分だけにしたものと言えるのではないでしょうか。内部にはお釈迦様の舎利（遺骨）に見立てたお経が納められています。四方に柱を支える支柱があるのも特徴です。相輪橖を広めたのは“台密”と称される天台宗の始祖である最澄と言われています。現在も残っているものは少なく、京都の比叡山延暦寺にもあります。今年４月に延暦寺を訪れたのですが、広くてそこまで行くことができませんでした。

歴史的建造物が数ある日光。その中でも輪王寺の相輪橖はとても印象深いもの。黒と金というシンプルな色であり、それがまた色彩センスを感じさせます。まさに写真になるといいますか。陽明門や三仏堂に目を奪われがちですが今では珍しくなった特別な仏塔、相輪橖にも注目してもらいたいです。

甲野　功

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