開院時間
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12月3日の日曜日。私の誕生日祝いを神楽坂で行ったあと、埼玉県の獨協大学に向かいました。そこでは第69回全日本学生競技ダンス選手権大会が開催されていました。通称、「冬全」と呼ばれている学生競技ダンス最大規模の大会です。なお夏には全日本学生選抜競技ダンス選手権大会があり、それを夏の全日本こと「夏全」と称し、本大会を冬の全日本ということで「冬全」としているのです。
夏全は団体成績で出場できる学校が選ばれます。東部日本ブロックでは団体成績18位以上、かつそれに入らない大学からも東部日本戦で1種目でも決勝に残れば東部推奨枠により個人で出場可能となります。学生競技ダンス連盟(学連)の基本理念は<学校を背景とする団体競技>であるため、基本は大学単位となります。夏全の場合はどちらかというと個人最強を決める大会であるという意味合いが強いです。最大8カップルで行うチーム戦たるフォーメーション競技が夏全にはありません。新型コロナウィルス流行により東部日本ブロックの学連加盟校はかなり廃部、休部に追い込まれました。そのため2019年以前に比べると夏全に出場することは容易になっている面があります。
夏全に対して冬全は全国の学連加盟校に参加出場資格があります。そのため全国から東部ブロックに選手が集まりまる学連最大規模の大会となります。なお夏全は大阪に開催されます(※20年以上前は東部と地方ブロックで交互に開催していた)。部歴4年生の選手達はこの冬全を持って引退という場合がほとんど。その後も競技会やイベントに参加することはあるでしょうが4年間の集大成が冬全となります。
私のことをいえば、学連最高峰の冬全に3度出場しています。当時の母校、東京理科大学舞踏研究部はスタンダード(モダン)弱小校でスタンダードとラテンのどちらかを選択する競技ダンスにおいてスタンダード専攻の部員がとても少なかったのです。そのため最大4組のスタンダード種目出場枠が空いているので2年生の頃から出場していたというわけです。層の厚い学校になれば学内で出場権を取ることも容易ではなく4年生でも出場できないこともあります。実際に時代が過ぎると4年生でも冬全に出場できず引退となった例が母校ではあります。2年、3年、4年と3回出場しましたが4年生の冬全は全くの別物でした。もうこれが最後だという気持ちで、とてつもないプレッシャーで出場したことを今も覚えています。また冬全の約10日前に自主練習で太もも裏を肉離れした経験が大きいです。当時はケガというケガをしたことがなく、まともに歩けない状況に陥ってもどうしたらよいのか分からず、ただただ焦りながら安静にして自然治癒を待ったのでした。適切な医療機関を受診する。誰かに相談する。自分でできる対処法を試す。このような選択肢がなく、不安を抱えたまま当日を迎えました。このときの自分をどうにかしたくて、今も学連選手を診ているともいえます。
今年も冬全を前にコンディション調整に来てくれる学連選手がいました。今年は遂に入場者制限のない(体調チェックをしない、検温なし、フロアーサイドでの観戦可能、声援あり、胴上げ可能、マスク着用義務がない)状態での開催となりました。2020年は密を避けるために2日間に分けての開催。選手・関係者のみ入場可能。マスク着用での競技で、声援はダメ。大学側の指導で東京に来ることが許されず出場を見送った地方の大学もありました。2021年も2日間に分けた開催で入場制限あり。そして昨年2022年は直前になり有明アリーナという大会場を借りることができ1日開催、完全マスクなしの競技、声援OKという状態になりました。そして今回、従来の会場である獨協大学に戻って2019年と同じ状態での開催になりました。当院に頼ってくれた選手が冬全でどのような踊りをするのか見ておきたくて会場に向かいました。
来院していた患者さんは強豪選手。私は途中経過を逐一確認しており決勝に残っていることを分かっていました。冬全の、学生日本一に手が掛かっている。それならば決勝戦だけでも見ておこう。そのような気持ちで獨協大学に向かいました。スタンダード決勝から観戦しオナーダンスという優勝者が最後に披露するソロダンスまでを観てきました。残念ながら応援していた選手は優勝することはできませんでした。
久しぶりに足を踏み入れた冬全の会場はかつての頃より7割くらいの観客という感じでしょう。人がたくさんいましたが以前に比べればかなり余裕がありました。それだけ全国で学連選手が減っていることでしょうし、それに伴い応援に来るOBOGも減っているのだと思います。それでも曲が歓声で聞き取りつらいほどの熱量がありました。特に4年生の選手はフロアーから出るときに涙を浮かべている人が多かったです。これが最後のダンスだったのかもしれない、という気持ちがあふれていました。そしてオナーダンス。選ばれし8組が1種目ずつ踊っていきます。4年生にとってオナーダンスはまさにこれが最後のダンスだとわかって踊るので感情も激しくなります。4年生はみんな泣いていました。そしてその何倍もの数の選手が悔し涙を流していたことでしょう。
会場にはたくさんの応援する来場者がいました。確認できただけでも著名なトッププロがたくさんいました。また審査員(ジャッジ)には学生時代おなじフロアーで戦った先輩がいました。昨年4年生で当院に来院していた選手もOB1年目として会場にいました。凄い人混みで確認できませんでしたがあの会場には相当知り合いがいたと思われます。冬全が最大規模というのはこのような点もあり、学連を経なかったプロやアマチュアの方も多数会場に訪れ、学連OBOGの数もけた違いなのです。その会場で最後の競技に臨む4年生の姿は尊いものでした。
2020年に入部した現4年生。大学は新型コロナによりほとんど活動できませんでした。そして規制だらけの部活動と競技会。部員数が集まらず数々の大学が無くなっていきました。学年が下がれば新型コロナの影響が薄まり活動環境は良くなり部員数は増えていきます。1年生でも冬全に出場し、2、3年生でも決勝に残り。かつ2年生が優勝する。かつては考えられない結果です。それだけ人数が少なく苦労したということでしょう。最後に最高の舞台に立てたことを嬉しく思います。来年はない、その気持ちで臨んだ4年生。
最後の決勝だけですが、冬全の現場を見ることできて本当に良かったです。最もコロナ禍の影響を受けた世代の卒業。一度失われたものを取り戻す過程も見えました。
甲野 功
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