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~検査における感度と特異度~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 感度と特異度
感度、特異度、的中率

 

 

感度」と「特異度」という用語を知っていますか?この2つは医療統計に用いられる言葉です。一般的に聞き馴染みがないかもしれませんが医療関係者は知っているはずです。「感度」、「特異度」がどのような意味を持つのか説明します。新型コロナウィルスが終息したといえる今、改めて知っておきたい言葉(概念)なのです。

 

疾患を検査する際に用いられる尺度として「感度」、「特異度」があります。両方を踏まえて検査の「的中率」と言います。コロナ禍によりPCR検査や抗原抗体検査といったものを国民全員が知るようになりました。しかしこの検査法にはムラがあることを理解しているでしょうか。絶対に新型コロナウィルスを発見できる検査だと思っていませんか。報道あるいは自身の経験から、検査キットで陰性だったけれど医療機関で検査をしたら陽性になった、あるいは検査で陽性と出たけれど全然症状が無くて本当に新型コロナに罹っていたのかなと疑問だった、といったことはなかったでしょうか。このような事例を考えるときに挙げた用語の意味を知ることが大切です。

 

具体的に「的中率」、「感度」、「特異度」の3つを説明すると以下のようになります。

的中率:疾患を有する人を疾患あり、かつ、疾患のない人を疾患なしと正しく判定する確率

感度:疾患のある人を疾患ありと正しく判定する確率

特異度:疾患のない人を疾患なしと正しく判定する確率

 

まず「感度」とは、その検査が疾患のある人を疾患ありと正しく判定できる確率です。新型コロナウィルスに感染している人を検査によって本当に感染している(陽性である)と判定する“確率”です。そう確率です。単位は%で表される数値になります。見方を変えると新型コロナウィルスに感染しているのに検査に引っ掛からず(陽性と判定されず)感染していないと誤って判定することがあることを示唆しています。

 

続いて「特異度」とは、その検査が疾患のない人をやはり疾患がないと正しく判定できる確率です。「感度」とは逆で新型コロナウィルスに感染していない人を、検査によってきちんと感染していない(陰性である)と判定する確率です。疾患にかかっていないことを証明する確率です。これも、本当は新型コロナウィルスに感染していないのに感染していますと(陽性だと)判定することがあることを示唆しています。

 

そして「的中率」は「感度」と「特異度」の両方を示し、新型コロナウィルスに感染している人は正しく陽性判定し、新型コロナウィルスに感染していない人はきちんと陰性判定する確率を言います。もうお分かりかもしれませんが的中率100%の完璧な検査法はほぼ存在しません。繰り返し検査を重ねていけば正しく判定できないものが出てきます。それは分母が大きくなれば当然のこと。万に一つという言い回しがありますが、1万回検査をして1回でも誤った判定をすれば的中率は100%にはなりません(ただこれくらいだと誤差の範囲で100%といって構わないでしょうという判断になるかもしれません)。

 

感覚的に「感度」は納得しやすいのではないでしょうか。病気やケガじゃないのか?と疑って検査したら本当に病気・ケガでしたよ、という確率です。普通はそういうために検査をするものですし。では具体的に感度が高い検査とはどういうことでしょう。例えば感度95%の検査とすれば100人の患者にこの検査をすると95人は正しく疾患(所見)が見つけられますよということ。言い換えると、5人は正しく見つけられませんということです。例えばケガをして整形外科に行きレントゲン撮影をしたところ、「骨折はありませんね」と整形外科医に診断されたとしたとします。この骨のこの方向から撮影したレントゲン読影の感度が99%だとすると100人中1人はもしかしたら骨折している人を見逃している可能性があるということ。

このように感度が高い検査で何が重要かというと実は陰性であることなのです。上の例で言うと骨折していないという診断。感度は陽性を見つける確率なのになぜ陰性の方なのかと疑問に思うかもしれません。しかしこれだけ感度が高い検査であれば(ほぼ確実に骨折している人を骨折だと判定できるのであれば)、陰性すなわち骨折をしていないことは非常に信頼できるということです。よく整形外科への不満として「整形外科を受診してレントゲンを撮ったのだけど、骨に異常はないといわれて湿布だけ渡されて返された」というものがあります。このとき医療側としては“骨折していないことがはっきりした”ということは重要なデータなのです。骨折しているかも?と疑いがあるならば骨折している想定で処置をしなければいけません。骨折の有無がはっきりすることは重要です。また骨に異常が無い=他のところに異常があると考えて、軟部組織損傷や血管・神経・内臓等のことも考慮します。軟部組織とは骨以外の部分と考えていただければよく靭帯・腱・関節包などです。軟部組織は原則レントゲンに映らないのでMRIやエコーといった別の検査方法を考慮することになります。血管や神経ならまた別の検査が必要です。ですから、疾患が見つからなかった=陰性と判定された、は大切なことなのです。感度が高い検査とは、この検査の結果が陰性であればその疾患にかかっている確率は非常に低いということなので、その場合は除外診断に有効であるといえます。除外診断とは疑わしい疾患があったがそれでは無いとはっきりするという意味です。

 

感度に対して「特異度」が高いとはどういう意味があるのでしょう。特異度が高い検査とは疾患がないことをしっかりと判定できるという可能性が高いということ。極論すると健康な人はやはり健康でしたねと判定できるという。特異度が非常に低い検査があったとするとその検査をのべつまくなしに実行すれば健康である人も病気とされて病人が増えてしまいます。日本では診断権が医師にしかないので病気だと診断できるのは医師だけです。言い換えると医師があなたは病気ですと診断したら病人になります。検査の特異度が低いと健康な病人が増えるという矛盾が生じることが想定されます。2020年の中頃に世間で出た意見に、日本の新型コロナウィルス検査は精密すぎてもう感染力のない健康被害を生じないレベルの微細なウィルスまで検知して実際よりも遥かに多い陽性患者を生んでいるというものがありました。その真偽は定かではないですが考えられる話ではあります。もし本当にそうだとするとまさに特異度が低い検査の例になります。

特異度が高い検査は健康人に対して効果を発揮しやすいわけです。例えば特異度95%の検査があるとすると100人健康な人に検査をしたら5人は誤って疾患があると判定してしまう可能性がありますが大多数の95人はきちんと健康であると判定できるということ。逆の見方をすると特異度が高い検査で異常がみつかったとしたら、それは疾患にかかっている可能性が非常に高いということです。この場合だと確定診断に有効であるといえます。健康な人を健康だと判定する確率が特異度ですが、特異度が高い検査は疾患を確定するのに適しているのです。

 

このように場合によっては一人の患者さんの疾患に対して複数の検査方法を試み、各々の検査における感度、特異度を考慮して診断するということが必要になる場合があります。考慮するといいますか。この検査は感度が高いから多分かかっていない疾患をきちんと除外できるだろう。一見健康そうだけど念のため特異度の高い検査をしてみてそれで陽性だったら確定だと考えられるな。という感じです。

 

的中率」はどちらの方も正確に判定できる確率です。通常はこの確率だけしか頭にないと思います。白黒つける確率だけあればいいのではないかと。しかし感度、特異度があり的中率はどう関係するのでしょうか。具体的な数字を挙げてみましょう。

計算しやすいように200人の患者がいるとします。

このとき実際に疾患がある人が100人、無い人が100人とします。半分が疾患ありの200人。検査をしたところ、陽性だと判定されたのが80人だとします。本当に疾患がある100人中、80人をきちんと陽性だと判定したので感度が80%の検査ということになります。そして検査によって疾患が無いと判定されたのが95人でした。健康な100人のうちきちんと疾患が無いと判定したのが95人だったということで特異度95%の検査です。

よって感度80%、特異度95%の検査です。200人の患者に対して、陽性判定を出したうち本当に疾患を持っていた人が80人、陰性判定を出したうち本当に健康であった人が95人、両方を足した人数が175人でした。その割合175÷200が的中率となり的中率87.5%となるのです。もちろん感度100%、特異度100%の検査であれば的中率は100%になります。

 

いかがでしょうか。少々複雑かもしれませんが医療において検査で陰性だと判明することも大切だということを述べたかったのです。ときに時間と苦痛とお金を費やして検査をして何もありませんでしたという結果に憤慨することがあるかもしれません。しかしそれも重要な成果です。また感度、特異度という2つの面から検査内容を考慮し更なる検査をするのか否かを判断する場合もあります。頭の片隅のおいていてください。

 

甲野 功

 

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