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~令和のプロレス芸事件~

KAMINOGE No.145 玄文社 表紙
KAMINOGE No.145 玄文社 KAMINOGE編集部

 

 

毎月買っているKAMINOGEという雑誌。1月発売の今号で“令和のプロレス芸事件”の顛末が書かれていました。

令和のプロレス芸事件。おそらくKAMINOGE編集部が名付けたと思われる、昨年11月に起きた騒動のことです。立憲民主党の塩村あやか参議院議員が昨年の11月23日にSNSのXで『酷いデマ。逆にどういう認知や流れでこんなデマやデマともいえない不思議な話を信じてツイートするようになるのか知りたい いつものことではありますが。最早、アンチのプロレス芸』という投稿をします。この最後の“プロレス芸”という表現にプロレス関係者が異議を唱えその界隈で騒動になった事件です

 

まず塩村あやか議員について。略歴を示すとアルペンのイメージガールコンテスト準グランプリ、第8回ニューカレドニアプリンセス審査員特別賞、ミスヤングマガジン準グランプを受賞、大学生の時に日本テレビ「恋のから騒ぎ」に出演。その後、日本テレビ系番組を担当する放送作家へ。維新政治塾塾生を経てみんなの党に入党。2013年に世田谷区から東京都議会議員選挙に出馬し当選。2019年に参議院議員選挙に東京都選挙区から出馬し当選。立憲民主党に所属し、現在不妊治療支援やいわゆるAV被害者救済法、悪質ホスト問題など女性支援に対する活動をしてきました。私個人はよく知らない人物で、今回の騒動でその人なりが分かることになります。

 

私は中学生の頃からプロレスファンです。特に中学・高校と思春期真っ最中の頃が一番熱中しました。大学に入って学生競技ダンスと出会うまでは人生に大きな割合を占めていました。テレビ放送をチェックし、毎週専門誌を買い、会場にも足を運んだものです。これまで人生において、著名人のサインを貰ったこともファン向けお別れ会に参加したのもプロレスラーだけ。その30年来のプロレスファンの立場からすると塩村あやか議員の“プロレス芸”投稿はかなり頭にきました。背景として活動に対するアンチが多数いるらしい塩村あやか議員。X上でのやり取りの中で出た言葉で間違いなく悪い印象で用いられています。これに対して一部の現役プロレスラーや関係者は異を唱えます。異を唱えるというか激怒したというか。

この反応に対して当初塩村あやか議員は『プロレス芸はエンタメの世界ではよく使う言葉です。放送作家の会議ではよく出てました。お決まりですが、私とアンチ塩村のガチ芸。』と説明しました。つまりエンターテインメントの世界ではよく使う業界用語で悪意はないですよ。これに対してもプロレス関係者は納得しませんでした。私も納得できませんでした。このプロレス芸投稿がされる直前の11月18日に放送された「人志松本の酒のツマミになる話」というトーク番組でお笑い芸人の狩野英孝さんが段取りや打ち合わせのことで「プロレス」という言葉を使うことを止めたというエピソードを話しました。

 

2023年11月18日 7時13分スポーツ報知 # 芸能# 話題

狩野英孝、使うのをやめた言葉明かす「段取りとか打ち合わせ通りのことでプロレスってワードを使うのは…」

 

これは狩野英孝さんが打ち合わせをした上で芸人同士が対立するようなことを“プロレス”と表現していたことをプロレスが大好きな後輩から『段取りとか打ち合わせ通りのことでプロレスってワードを使うのはプロレスラーに失礼ですよ。ケガして血を流して、みんな命がけで闘っているのに、何、打ち合わせ通りの表現に使ってるんですか?』と言われたそう。そこではっとした狩野英孝さんはそのような意味で“プロレス”という言葉を使わないようにしたというのです。この意見は本当に納得できます。私は長年プロレスを観てきたのでプロレスラーリングの上で大けがをしたこともたくさん知っています。引退後も後遺症で体がボロボロになった人も少なくありません何より私が中学生時代から一番ファンだった三沢光晴は試合中にリング上で死亡しています。受け身の天才と称された三沢光晴が特に変わったことのないバックドロップで心肺停止に。最後の言葉はレフリーに「試合を止めろ」だったそう。人生で唯一お別れイベントに参加したのが三沢光晴氏のもの。1時間半ならんで献花しました。試合や練習で亡くなったプロレスラーは三沢光晴氏だけではありません。国内外で複数います。

このような文字通り命がけでリングに上がるプロレスラーに対して裏で打ち合わせしてバトルしているように装うことをプロレス、プロレス芸と言われるのはプロレスラーも関係者もファンも納得いかないでしょう。お約束というものが仕事になっている芸人ですら意識を変えるくらい真剣に怒るわけです。

 

ここまでですと著名人(タレントあがりの参議院議員)に対するSNS上のアンチコメントに見えるところですが。日本のプロレス業界最大手の新日本プロレス及び女子プロレス団体スターダムを運営するオーナー企業のトップが“プロレス芸”という塩村あやか議員の発言に対して撤回要求を示します。いち議員の発言として立憲民主党宛に投稿の訂正もしくは撤回を求める意見書を送付したのでした。企業のトップが議員に対して公式に要求するというところに話が大きくなったのです。興味がない人にはたかがSNSの一言に目くじら立てるなと嗤うかもしれません。当事者たち、そしてファンにはやり過ごせないことだったのです。

私個人も非常に不快だったのですが、どうなるのかと冷静に見守ることにしました。すると予想外のスピードで事態が動きました。翌11月24日に塩村あやか議員は以下のようなコメントを出します。

 

こちらでの「アンチのプロレス芸」という言葉は謝罪と撤回をさせて頂きます。

意味としては、「デマを拡散をしてSNSで炎上をして、私がそれに対抗をする」的なものが出来上がっており、SNSという会場で盛り上げ、エンターテインメント化しているという主旨でした。

「芸」という言葉をくっつけるな、謝罪をという人もいますが、よくも悪くも芸能やエンタメとなっているという意味であり、芸能関係者からは「芸」は評価する言葉との連絡を頂いており、意見の対立を招いたことを申し訳なく思います。

私個人としては、プロレスは小・中学生の頃に会場に行ったり、TVで見ていました。スタンハンセン、ジャンボ鶴田、小橋建太各氏の時代です。豊田真奈美ファンで、福山市民会館で試合があったときは一番いい席を親にせがんで買ってもらい、会場で握手してもらったり。椅子の片づけのお手伝いをしたりしました。

ここ最近は遠ざかっていましたが、最近、深夜に「伝説プロレス」の再放送を見て、ジャンボ鶴田氏や小橋建太氏の戦いに再びプロレスって面白いなと友人と話したばかりでした。

そして、プロレス芸という言葉は最初のツイートのツリーにも添えましたが、放送作家時代によく会議でも使われていました。もちろん、企画を成功させるための意味ですので悪意はありませんが、そうした経験も私の認識がズレていた一因であると思います。

ですので、今回の件を反省をして、プロレスファンの方や関係者からも「一度、観にくるべき」というご意見に沿って、観に行きたいと思います。

【お願い】

①お勧めがあれば、ぜひコメント欄に書き込んで教えてください。

②私の問題投稿に反応(当然、不快感や怒り)されたプロレスラーの方をご存じでしたら、教えてください。ツイッターになりますが、まずは謝罪をお伝えしたいと思います。

宜しくお願いいたします。

本当に申し訳ありませんでした!

 

謝罪と撤回をした。著名人がSNSの投稿についてきちんと謝罪・撤回をしている姿をほぼ見たことがなかったので意外でした。まして政治家です。そう簡単に撤回などしない職種だと思っていたのに。また内容を読むとスタンハンセン、ジャンボ鶴田、小橋建太、豊田真奈美とプロレスラーの名前。普通は知らないだろう。この人実は好きなのか?と思いました。言い訳がましく実はプロレスファンだったのですとしているわけではないとこのメンバーから読み取れました。しかもこのメンバーは恐らく私が熱狂した時代のレスラー。思いっきりこちら側の人なのかもと。プロレスに何の愛着もない業界用語を使用するタレント上がりの議員だと当初は思っていたのでこの謝罪文には意表を突かれました。そして一度プロレスを観にくるべきと言われて、塩村あやか議員は本当に会場に観戦に行きプロレスラーと交流したのです。本当に行動を移すことも意外で。もともと好きでないとトラブルになった相手のところに行かないでしょう。一体どういう人なのか興味がわきました。

 

そして発売されたKAMINOGE。そこで放送作家の先輩にあたるインタビュアーにインタビューされる塩村あやか議員の記事が16ページにわたって掲載されていました。そこで知ったこの騒動の経緯と顛末。色々と腑に落ちました。グラビアをしていたほど容姿端麗で放送作家というテレビ業界の裏方を経験した上での参議院議員。叩きやすい面があります。特にタレント時代の発言を切り抜かれて揶揄されることが多いそう。そこに関しても当時のテレビ番組の作り方について語るところがありました。インタビュアーも放送作家ですので事情が分かるのでしょう。かなり突っ込んだ質問をしていましたが塩村あやか議員は当時のスタッフに迷惑がかかると明言しません。そこに元放送作家だったことを踏まえて義理を重んじる人なのだと感じました。また塩村あやか議員自身もアンチコメントが多数届いて炎上することになれていて、最初はそれと同じようなことだと思っていたそう。確かに発言の揚げ足をとるアンチからのコメントもあったのですが、熱烈なプロレスファンからの真摯な意見も届いたそう。プロレスファンからの状況説明を読んで、これは間違っていたと判断しすぐに謝罪・撤回としたそうです。立憲民主党宛の意見書が届く前に行動に移したとのことでした。

 

塩村あやか議員がプロレス芸投稿をしたときの最初の印象から大きく変わりました。1日で結論を出して行動する。そもそも同じ時期に全日本プロレスを観ていた。きちんとプロレス会場に出向いて当事者と話をする。またすぐにインタビューをして記事にしたKAMINOGE。いつになく行動・判断が早いなと感じました。よく政治家の言う“スピード感を持った”対応でした。大学で物理を学んだ者としてスピード感という言葉が好きでないし納得できないところがあるのですが、まさにスピード感を持った動きだったと感心しました。最初は嫌な気持ちでしたが、最後は普段興味が無かった政治家の人なりや活動内容まで知る機会になりました。この令和のプロレス芸事件はプロレス史に残るのでしょうか。

 

甲野 功

 

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