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もう1週間前のニュースですが個人的に気になるニュースがありました。
<静岡 NEWS WEB 医師免許なくレーザー脱毛か クリニック院長ら3人逮捕 01月10日17時45分>
『
島田市にあるクリニックで医師免許をもたないエステティシャンらが医療行為にあたるレーザー脱毛を行ったとして、クリニックの院長ら3人が医師法違反の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは、島田市にある「あらなみクリニック」の院長で医師の荒浪曉彦容疑者(59)と、46歳と33歳の元エステティシャン2人です。
警察によりますと、このクリニックでは、2021年4月ごろから去年1月ごろにかけて、医師免許をもたないエステティシャン2人が7人の患者に対し、医療行為にあたる強力な光線を使ったレーザー脱毛を行ったとして、医師法違反の疑いがもたれています。
警察は去年の夏ごろにクリニックを捜索するなど捜査を進め、10日に3人を逮捕しました。
これまでの調べによりますと、荒浪容疑者は2010年ごろから医師免許をもたないエステティシャンにレーザー脱毛の施術を行わせていたとみられ、施術を受けた患者はおよそ1200人にのぼり、中にはやけどをした人もいたということです。
警察はクリニックの経営の実態について調べを進めることにしています。
3人の認否については明らかにしていません。
』
静岡県島田市で医師免許を持たないエステシャンがレーザー脱毛を行ったとして逮捕されたというものです。表面的な印象としては幾つか疑問点が浮かびます。
・エステティシャンが脱毛をしてなぜ逮捕される?
・エステティシャンに医師免許は必要ないでしょう?
・院長の医師も逮捕されているのはなぜ?
・クリニックにエステティシャンがいるのはどうして?
・なぜ医師法違反疑いで逮捕?
というのがあまり事情が分からないと疑問に思うのではないでしょうか。
この事件のポイントは使用した脱毛用のレーザーが医療機器にあたるものであろうということ。記事だけでは確認できませんがほぼ間違いないでしょう。医療器機に該当する器具(この場合はレーザー)を用いた施術(この場合は脱毛)は医療行為に該当するのです。もちろん医師免許を持たない者が医療行為を行うことは医師法違反になります。医師法とは医師の権限を規定する法律で、医師免許を持たない者が医行為を行うことを明確に禁止しています。これを法律用語で業務独占といいます。当たり前ですが医者でない人が手術をしたり投薬したりしたら危険ですから禁止します。それは常識的に分かることでしょう。更に医療器機による施術も医行為に該当することになるのです。※報道では医療行為と表記してありますが医師法の文言としては医行為になります。
そして医療機器で行う医療行為(医行為)には美容分野も該当します。ここが重要です。脱毛というとエステティシャンがエステサロンで行うというイメージがあります。しかし医療脱毛という言葉あるように医療機器にあたる器具を用いた脱毛であればそれは医療行為に該当するわけです。報道では『医療行為にあたる強力な光線を使ったレーザー脱毛を行った』とあるように、強力な光線が医療行為にあたると言えるのです。どういうことかというと目的の種類を問わず、十分な知識や経験なしに行えば人体に健康被害を及ぼす可能性がある器具は医療機器になる(あるいは医療機器にあたる)、ということです。治療目的だろうが美容目的だろうが同じです。脱毛目的でも出力が強力なものは医療機器となるのです。医療器機を扱う者が医師免許を持たない非医師であればその行為は医療行為なるので医師法違反疑いとなるわけです。
同じような事故は昨年もありました。出力を抑えるカバーをつけ忘れて脱毛を行い火傷させてしまったエステティシャンが業務上過失致傷と医師法違反疑いで書類送検されたもの。このときは脱毛を行った20代女性アルバイトと20代女性エステ店経営者の2名が書類送検されました。エステ店の脱毛行為で医師法違反疑いということに私は驚きました。今回の静岡県での事件は逮捕としているのでよりシビアです。監督たる医師の院長と元エステティシャン2名の計3名が逮捕。昨年夏から捜査を行い今年に入って逮捕ということですから慎重に調査した印象を受けます。看護師であれば医師の指示の下、医療器機であるレーザーを用いた脱毛は許されているはずです。本事件は院長である医師の指導があっても医療機器を用いた脱毛が医師法違反疑いになるのか、院長(医師)の指導や指示なしに独自の判断で医療機器を用いた脱毛が医師法違反疑いになるのかが、この報道内容でははっきりしません。監督不行き届きという意味で考えれば院長の医師だけを逮捕するだけでいいような気がしますが。
私がこの報道が気になるのは美容分野でも医師法違反疑いで逮捕されるということなのです。医師法違反は比較的罪が重いのです。早い話、ニセ医者を許さないということですから。具体的には医師法第十七条の「医師でなければ、医業をなしてはならない。」が該当します。そして同法第三十一条に「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 一 第十七条の規定に違反した者」とあります。つまり3年以下の懲役か100万円以下の罰金か、あるいはその両方が刑として確定したら科されるのです。もちろん前科になります。まさか脱毛でという心情も無きにしも非ず、です。
しかしそれだけ医療行為(医行為)は重要であり、違反すれば重い処罰が下ることがあるわけです。数年前からエステティックによる医行為が問題視されてきました。大規模な調査の上、総務省が厚生労働省や関係各所に注意勧告文を出したことがあります。その効果が段々出てきているのではないかと見ています。何となく平成の頃までは美容目的なら違法行為がまかり通るという風潮があったような気がします。私の職域としては美容鍼という分野がありますが、毫鍼という皮膚に刺す鍼を美容目的ならはり師免許のない非はり師が行っているという事例があるようなのです。これはもちろん違法行為です。厳密にいえば皮膚に刺さない鍉鍼というものを用いたものも違法行為になります。それも含めて美容というジャンルになれば免許がなくてもやっても構わないという風潮を感じていました。管理医療機器である円皮鍼でもお灸でも治療目的でなければ鍼灸師でなくても行っても構わないという誤った風潮。色々な意味で危険であると私は思っています。健康被害が起きる可能性はもちろんのこと、鍼灸師の職域を侵されるという懸念。
それがこの事件のように脱毛という美容目的の施術でも医師法違反疑いで逮捕する事実があることで美容目的に無免許鍼灸にも歯止めがかかるのではないかと淡い期待をしています。別件の裁判結果により、入れ墨(タトゥー)は医行為(医療行為)ではないがアートメイクは医行為であるという判断になりました。医師免許を持たない者が入れ墨をしても医師法違反にならないが、眉毛のタトゥーを医師免許を持たない者がしたら医師法違反になるということです。
今回の医師法違反疑いでの逮捕は今後鍼灸業界にも影響を与えることになるのではないかと予想しています。
甲野 功
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匿名 (木曜日, 25 1月 2024 13:22)
平等な視点でのブログありがとうございます