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~あはき法第12条の該当範囲~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 あはき法第12条
あはき法第12条と第1条

 

 

私はあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師柔道整復師の国家資格免許を保有しています。はり師、きゅう師と免許は分かれていますが多くの人間がこの2つを同時に取得するため鍼灸師と一緒くたに表現することが一般的です。前述の4つの資格は厚生労働省が管轄する国家資格であり、一般の人が行うことができないこと(ただし医師を除く)を業とすることができる免許になっています。そして開業権が法律ではっきりと認められている医療系国家資格としては珍しいものです。医師、歯科医師を除くとほとんどの厚生労働省が管轄する医療系国家資格は医療機関で医師の指示の下、業務に携わることを前提しており術者が独自の判断で業務を行うことを想定しておりません。

 

最初に挙げた4つの資格は過去に一つの法律でありました。ところが柔道整復師が独立し単独法(柔道整復師法)になり、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の3つがまとめて法律となっています。それを『あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律』といいます。法律用語では小さい“ッ”、小さい“ゅ”を大きく表示するのでこのような法律名になっています。3つの免許の頭文字をとって通称『あはき法』と言われます。私の本業はこの法律が大いに関係していることは言うまでもありません。

 

この業界では“あはき法第12条問題”というものが存在します。その名前の通りあはき法第12条の解釈について意見が分かれる、あるいは機能していないというものです。あはき法第12条はどのようなものか。以下に記します。

第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。

意訳すると、

誰もあはき法第1条に掲げるもの以外の医業類似行為を反復継続の意思をもって行うことはできない、ただし柔道整復を除いて

となります。

第1条に掲げるものとは何か。あはき法第1条は以下の通り。

第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

第1条は業務独占と言われる内容で各免許を持たずにあん摩(按摩)、マッサージ、指圧、はり(鍼)、きゅう(灸)を業としてはならないことを示しています。そして“業とする”というのは「反復継続の意思をもって行うこと」と解釈されることで、無料で行うから許されるということはなく、継続してそれを行うのであれば業とすることに該当するとしています。ですから各種免許がなければ行ってはいけません。普通自動車免許で考えると分かりやすく、無免許で公道を運転することはもちろん違法です。しかし運転自体を完全に禁ずると運転の練習が一切できなくなりますから、教習所内や私有地で運転の練習をすることは禁じていません。しかし日常の移動手段として今後も継続的に公道で自動車を運転するのであればもちろん免許が必要になりますよね。

 

さてあはき法第12条の問題は文面に登場する“医業類似行為”とは何か?ということがずっと問題視されてきました。かつては誰でも行ってはいけない禁止行為が医業類似行為であり、医業類似行為には按摩、マッサージ、鍼灸、そして柔道整復は含まれないという解釈でした。ただ第12条の文面をそのまま読むと医業類似行為の中に按摩、マッサージ、指圧、柔道整復が含まれている前提でこれらを除く医業類似行為を業とすることを禁ず、と読めるのではないでしょうか(※柔道整復に関しては後に独立するのでそれは柔道整復師法に規定によるとしました)。

現在、国(省庁や政府)の判断では按摩、マッサージ、指圧、鍼灸、柔道整復は医業類似行為に該当するとしています。医業かそれ以外か(=医業類似行為)で分類している。医業類似行為には国家資格を持つ者が行うことと国家資格を持たない者が行うことの2種類があり(広義と狭義の医業類似行為)どちらもまとめて医業類似行為であるとしています。このことは近年の厚生労働省、総務省らの通達内容、あるいは国会の答弁でも示されています。しかし一部の人間からは過去の法律解釈が今も有効であり按摩、マッサージ、指圧、鍼灸(まとめて“あはき”と言います)は医業類似行為ではないと主張しております。医業類似行為でないなら何か。それは医業の一部であると主張しております。そうすると医師法第17条第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。』(医師の業務独占)と矛盾が生じます。それに対して“あはきは医業の限定解除”であり医業の一部を特例で担っているのだから医業であると主張します。

※なお柔道整復師も同様に柔道整復師の業務は医業であり医師と同等であると主張した裁判が過去にありましたが東京地裁も東京高裁も柔道整復は医業類似行為であり医業ではないという判決を出しております。

 

あはきは医業類似行為に含まれるのか、そして医業なのか。これが業界内で言われる論争の一つです。今回注目するのはこのことではなく、あはき法第12条の文頭にある“何人も”というところです。業界外にも関わることなのです。

前置きが長くなりましたがあはき法第12条はあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師だけではなく、全国民に対しての法律であります。あはき法はその内容の多くがあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師あるいはそれに関わる養成機関や試験機関を対象にしています。第1条の業務独占は免許が無ければ業としてはいけないということで一般の人にも向けていますが、それ以外はほぼ一般の人には関係のないものです。しかし第12条は“何人も”とあるのであん摩マッサージ指圧師、鍼灸師は当然のこと、それらの資格を持たない人にも該当する法律になります。つまり誰でも(あはき、柔道整復を除いた)医業類似行為を業とすることを禁止するという意味になるのです。この解釈が大いに問題となってきました。

 

業界内では医業類似行為にあはきが含まれるのかが注目されることがあったのですが、一般の人には正直どうでもいいことです。むしろ鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師が医療行為(手術をするとか投薬をするといったこと)を行うことの方を問題視するでしょう。問題は国家資格を持たない、いわば素人が、医業類似行為を行うことを禁止している内容であることが世間一般には重要なのです

 

厚生労働省らが現在規定する医業類似行為は「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある『医行為』ではないが、一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為」としています。これは既に述べたように国家資格であるあはき、柔道整復が含まれるのはもちろん、国家資格ではない、法的な資格制度のないいわゆる民間療法も含めるとしています。つまり民間療法などの医業類似行為を行うことは誰でも(医師はもちろん、国家資格を持つあはき師、柔道整復師も)行ってはいけないという意味になっているはずです。ところが実際にはどうでしょう。巷には様々な民間療法があり店舗として存在しています。

 

あはき法第12条が意味をなさなくする事件が60年以上前にありました。それが通称「HS式無熱高周波療法事件」と呼ばれるもので、その裁判において出された“昭和35年判決”というものです。この事件は何度も触れているので大まかに説明します。仙台でHS式無熱高周波なる装置で治療行為を行ったとされる者があはき法第12条違反として逮捕されて起訴されます。1審で有罪、2審でも有罪判決が下されます。被告はあはき法第12条は日本国憲法が保障する職業選択の自由を侵すものであると最高裁に上告します。医業類似行為を業とすることを禁じるのは職業選択の自由を損なうものなのだと。あはき法第12条自体が違憲であり無効だとしたのです。最高裁としては職業選択の自由は“公共の福祉に反しない限り”という条件があり、医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのはその行為が人の健康に害を及ぼすおそれがあるかどうかで判断する。高裁では健康被害について審議されていないのでもう一度やり直しなさいという破棄差戻しという判決を出します。これを「昭和35年判決」といいます(※とても大雑把に説明しています。正確なことは判決文を参照してください)。

 

事件番号:昭和29(あ)2990

事件名:あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法違反

裁判年月日:昭和35年1月27日

法廷名:最高裁判所大法廷

裁判種別:判決

結果:破棄差戻

 

結局、有識者の調査の結果、HS式無熱高周波は人体に健康被害を及ぼす可能性を示唆されて仙台高裁でも有罪判決。再度被告は上告するも最高裁は高裁の判決を支持して有罪確定となります。最終的に有罪となるのですが、最高裁の出した「昭和35年判決」が健康被害を出さなければ医業類似行為を業とすることは構わないという判断だと理解されてしまいました。言い換えると健康被害を出さなければ無資格、無免許でも民間療法を行っても問題ないという。そのように世間に浸透してしまいます。いつしかそれが定説となり、医学的知識がない素人が人に対する施術行為をしても罰せられないという状況になっていくのでした。

これが逆説的なこととなり、国家資格を持つあはき師や柔道整復師はあはき法、柔道整復師法により制限を受けて、それらの資格を持たない者は何をしても許される、といったことになりました。そのため国家資格を持っている者の方が仕事をするのに不利という状態が生まれます。免許を取るために3年以上の勉強を積み国家試験に合格したのに、素人が整体師を名乗り同じようなことをしている。あはき師は開業するのに保健所に届け出を出して現地調査を受けますが、無資格の整体師は勝手に開業することができます。数が圧倒的に増えたため整体師の方が世間に認知されてしまい、鍼灸師や柔道整復師が整体師を名乗り保健所の審査を通さない整体院を開業するケースが出てきました。それは理学療法士も同様です。「国家資格を持つ整体師」という矛盾な肩書を謳いながら。医療系国家資格を持つ者ですらこうなのですから医学知識の乏しい無資格者は更に誇大広告を出していきます。行き過ぎた結果、栃木県の自称祈祷師による一型糖尿病男児を死亡にいたる事件、新潟県で乳幼児の首を捻る施術で死亡事故を起こした新潟ズンズン運動事件、頭を叩くことで万病が治るとして信者が死亡した千葉のシャクティ治療事件といった事故事件が起きてきました。健康被害が起きてからでないと捜査や逮捕に至らないという状況です。あはき法第12条が意味をなさないのです。

 

ところが。当然ですが「健康被害のおそれがある行為」を業とすることは違法行為であるのは間違いありません。HS式無熱高周波療法事件でも「昭和35年判決」により一度破棄差戻になりますが結局有罪判決です。世間が勝手に無免許、無資格でも医業類似行為を行っても構わないと解釈しているだけで。健康被害のおそれがあると分かればあはき法第12条違反の疑いとなるはずです。このことが最近取りざたされているようなのです。私もかつては免許を持つ方が不利で民間資格でやっていた方がましだと思う時期がありました。関係法規と現状を学生さんに教えると、国家資格ってなんの意味があるのですか?と憤慨されたこともありました。実際に保健所も無資格者のことは管轄外(チェックするのはあはき師、柔道整復師の国家資格持ちだけですという考え)だという感覚が見受けられました。しかし総務省が調査した医業類似行為等による健康被害の実態、それによる消費者庁と厚生労働省に対する勧告が流れを変えているように思うのです。

 

あはき法第12条違反は万人を対象とする。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師だけではない。そのような動きが出てくるのではないでしょうか。それについて次回書きます。

 

甲野 功

 

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