開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
医業類似行為等による消費者事故の増加を受けて総務省が大規模調査を平成30年(2018年)3月~令和2年(2020年)11月までの2年半を費やし行いました。この場合の医業類似行為等とは医業(医師が行う医行為)ではない不特定多数に行う行為全般を指します。そこには国家資格の有無を問わず、按摩、マッサージ、指圧、鍼灸、柔道整復、整体、カイロプラクティック、器具によるもの、エステなど全てです。その調査結果により消費者庁と厚生労働省に対して是正勧告を行います。
消費者庁に対して総務省は
厚生労働省、警察庁及び消防庁の協力を得つつ、
①都道府県等に対し、通知制度の意義等について改めて周知徹底すること。
②都道府県等における情報の収集の実情を踏まえ、通知制度を的確に運用するための取組方策について検討すること。
の2点を勧告しました。
一方厚生労働省に対しては、
都道府県、保健所設置市及び特別区に対し、関係法令に基づく指導の権限を示した上で、事業者等に対する必要な指導の徹底を要請すること。
という勧告内容を出しています。
資料の別紙1にはこのようにあります。
『
「消費者自己対策に関する行政評価・監視-医業類似行為等による事故の対策を中心として-」の結果について
〔令和二年十一月十七日(火)開催 総務大臣発言要旨〕
一 本日、「消費者事故対策に関する行政評価・監視」の結果に基づき、消費者庁長官及び厚生労働大臣に対する勧告を行います。
二 この行政評価・監視では、医業類似行為等による消費者事故について調査しました。
調査の結果、地方公共団体の保健所、警察機関及び消防機関から消費者庁への消費者事故等に関する情報の通知等について課題がみられたことを踏まえ、通医制度の周知徹底などを消費者庁に求めるとともに、健康被害を生じた事業者などに対する必要な指導の徹底を都道府県等に要請するよう厚生労働省に求めています。
三 関係大臣におかれては、今回の勧告の趣旨を御理解いただき、必要な措置を講じていただきますようにお願い申し上げます。
』
消費者庁は消費者事故が起きたら対応するのは当然なのですが、厚生労働省は事情が違いました。厚生労働省自体は国家資格を持たない医業類似行為による健康被害やエステサロンにおける医師免許のない者による医療行為または美容行為について、事業者に対する指導等の徹底を都道府県や保健所を設置する市及び特別区に要請しています。しかし、総務省が調査した保健所の大半が健康被害に関して事業者に対する指導監督権限がないと認識していて、無資格者による医療行為に関しても事業者に対する指導監督権限がないと認識していること等から、保健所による事実確認が行われていない状況がみられたのです。この背景には前回紹介した『昭和35年判決』により“あはき法第12条”が間違った解釈が周知されて保健所の現場が国家資格のない民間療法に対しては業務担当外だとはき違えていたものかと思われます。実際に国家資格のない整体院は厚生労働省の管轄には無いのだと自認しているケースがあり、あはき法は関係ないとしている場合もあります。ところがあはき法第12条は“何人も”とあるので国家資格の有無は関係ないのです。
消費者庁は総務省の勧告を受けて警察庁に向けて通達を出しています。
消費者事故等の発生に関する情報を認知した場合の報告について(通達)
内容を抜粋します。
『
別添2
消安全第406号
令和2年11月24日
警察庁
生活安全局生活経済対策管理官殿
刑事局捜査第一課長殿
消費者庁消費者安全課長
(公印省略)
消費者事故等に関する情報の通知について(依頼)
標記については、令和2年11月17日の閣議において、総務大臣の発言(別紙1参照)に関連し、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)から警察庁等において消費者事故等に関する情報の適切な通知が行われるよう御協力を依頼する旨の発言(別紙2参照)がありました。
つきましては、総務省行政評価局の行政評価・監視(「消費者事故対策に関する行政評価・監視-医業類似行為等による事故の対策を中心として-」)の結果報告書の記載事項も踏まえつつ、事故情報を一次的に受け付ける警察機関から貴庁を経由した上で、当庁に対して消費者事故等に関する情報の通知が迅速かつ適切に行われるよう、周知等について引き続き御協力をお願いいたします。
以上
』
消費者庁消費者安全課長から警察庁生活安全局生活経済対策管理官及び刑事局捜査第一課長に対して、「消費者事故等に関する情報の通知について(依頼)」という内容で通達しております。事故情報を一次的に受け付ける警察機関から警察庁を経由した上で、消費者庁に対して消費者事故等に関する情報の通知が迅速かつ適切に行われるよう周知等について引き続き御協力をお願いいたします、と依頼しています。
その消費者庁の依頼を受けて警察庁刑事局捜査第一課は以下のような通達を出しております。
『
警視庁刑事部長 各道府県警察本部長 殿
警察庁丁捜一発第1 7号
令和3年2月1 9日
警察庁刑事局捜査第一課
消費者事故等の発生に関する情報を認知した場合の報告について(通達)
警察庁刑事局捜査第一課(以下「警察庁捜査第一課」という。)主管に係る消費者事故等(消費者安全法(平成21年法律第50号。以下「法」という。)第2条第5項に規定する消費者事故等をいう(判断基準は別添1「消費者事故等の通知の運用マニュアル」3(3)ア参照 。以下同じ。)については、法第12条に基づき、消費者庁長官へ重大事故 )等(法第2条第7項に規定する重大事故等をいう(判断基準は別添1「消費者事故等の通知の運用マニュアル」3(3)ア(ア)c参照。)が発生した旨及び当該事故等の概要その他内閣府令で定める事項の通知を行うこととされているところ、各都道府県警察にあっては、警察庁捜査第一課主管の重大事故等又は消費者事故等(重大事故等を除く。)の発生に関する情報を認知した場合には、引き続き、警察庁捜査第一課に対し、即時又は適時適切にその概要等を報告されたい。
なお、今般、消費者庁から警察庁に対し、医業類似行為等に係る消費者事故等の周知等の依頼がなされているところ(別添2「消費者事故等に関する情報の通知について(通知)」(令和2年11月24日付け消安全第406号)参照)、医業類似行為等役務分野に係る犯罪被害の相談等を受けた場合においては、当該事案が消費者事故等に該当するか否かの判断が困難であることから、消費者事故等に該当するか否かを問わず、報告されたい。
』
警察庁刑事局捜査第一課から警視庁刑事部長及び各道府県警察本部長に対して「消費者事故等の発生に関する情報を認知した場合の報告について(通達)」という通達です。後半には消費者庁から警察庁に対する依頼内容に触れた上で、『医業類似行為等役務分野に係る犯罪被害の相談等を受けた場合においては、当該事案が消費者事故等に該当するか否かの判断が困難であることから、消費者事故等に該当するか否かを問わず、報告されたい。』としています。医業類似行為による犯罪被害を相談された場合は消費者事故等に該当するかどうかの判断が困難であるからとにかく報告するようにと警視庁刑事部長、各都道府県警察本部長に向けて通達しているのです。
長い時間をかけて取り締まりをおざなりにしてきた結果なのかもしれませんが、医業類似行為における消費者事故として調査することが非常に少なかったといえます。それは総務省の調査でも報告されています。過去に著名な芸能人が接骨院のマッサージで肋骨を骨折させられたというニュースがありました。医療機関での医師の治療であるなら医療過誤で問題になると思われますが。またSNS上では吸玉による被害を訴える投稿がみられたり、頚椎スラスト(首を急激に回旋させる手技)により障害を生じたという投稿がみられたりしています。このような健康被害(消費者事故)に対して警察は動いてくれるのか。厚生労働省や保健所は対応してくれるのか。あはき法第12条の「何人も医業類似行為を業としてはならない」という内容の医業類似行為とは“医師の知識が有しなければ健康被害を及ぼすおそれのある行為”としている以上、実際に健康被害があるならばそれはあはき法第12条違反疑いになるはずです。違法行為であるなら警察が動くのは法治国家の定めのはず。消費者庁の警察庁に対する依頼はこの当たり前のことをきちんとさせる効果があるのではないでしょうか。
なお医師法違反はあはき法違反よりずっと罪が重たいです。脱毛レーザーで火傷をさせてしまったスタッフは医師法違反疑いで書類送検あるいは逮捕というケースが最近ありました。出力が強く医療機器に分類されるレーザーを用いた上での火傷被害。そのニュースを知ったとき、エステサロンで医師法違反疑いになるとはと私は驚きました。
総務省→消費者庁→警察庁→警視庁、各都道府県警察という勧告・通達・依頼の流れ。そこに厚生労働省や保健所は直接入っていませんでした。これはすなわち長らく業界の定説になっていた国家資格持ちでなければ保健所の指導を受けないしあはき法第12条にも該当しない、ということが覆るように感じています。被害相談の時点で警察が対応しなさいという動き。今後はあはき法第12条違反疑いあるいは業務上過失致傷疑い、厳しいものでは医師法違反疑いで逮捕されるケースが増えるのではないかと思いました。
甲野 功
コメントをお書きください