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昨日は学連OBOG練習会モダンの部に参加してきました。場所は東京都渋谷区代々木の『BEST ART』で講師は武蔵野美術大学OBの本池淳先生。全日本学生競技ダンス連盟(学連)関係者による練習会です。モダン(かつての学連はスタンダード種目をモダンと呼んでいたのでこの練習会もモダンとするのが正式だそう)、とラテンの部で毎月交互に行われています。ラテンの方の講師は東京外国語大学OBの金光先生です。昨年から参加するようになり、毎回新たな発見をしています。
毎回テーマがあるのですが、今回のそれが「ピクチャーポーズとやら」。
社交ダンスを競技としてコンペで競い合うのが競技ダンス。学連は最初から最後まで競技ダンスをしていきます。いわゆる社交を目的とした社交ダンスの要素がほとんどなく、大会のことを“試合”と呼び、結果を“勝つ”“負ける”と表現します。競技である以上、厳しい練習や鍛錬を積むのが当然。18~24歳くらいまでの身体が動ける時期にのめり込むもの。今回の練習会には北海道大学、獨協大学、中央大学、日本大学、立教大学、明治大学、武蔵野美術大学、東京理科大学、関西外国語大学のOB、OG、その関係者が参加しました。中にはプロダンサーで団体のチャンピオンも。そして私が学生時代に先輩方が口を揃えてあの人は凄かったと話す伝説の先輩にお会いすることができました(学連入学の際に入れ替わりの代だったので面識がなかったのです)。学連という非常に特殊な世界を経験したメンバーなので、特に本池先生は大学が違えど1期上の同じ時代を体験したので、随所に基礎練習を行う練習内容になっております。ホールド、ボックス、ライズ。この年齢、一般的な社交ダンスのグループレッスンでは、なかなかやらないことをします。この地味な基礎練習をするのが私は好きで、一人ではもうできません。体力面ではなく精神面で。みんなで声を出してやるからできる類のもの。
そこから本題のピクチャーポーズに入ると俄然、学術的になります。
大学生の時はとにかく根性、体力でどうにかしようとする感じでした。無理な体勢も筋力でカバーする。理にかなわない動きも練習量で乗り切る。そんな感じ。それがやることには意味がある、どういうメカニズムで起きている、時代の変遷を伝える、といったことを本池先生は丁寧に解説してきます。東京理科大学を出て研究気質がある私にはそれがとても面白いです。専攻種目ではなかったラテンだと体が動かないので理解してきれないことばかりですが。専攻でやってきたモダンだと余裕があります。今回の練習会では20年以上謎であったことが次々と解明していきました。そして新たな知識も。
ピクチャーポーズとは。ピクチャーすなわち絵画、写真。ここは見せ場ですよという二人の形(ポーズ)。しかし意味があり、回転方向を切り替えるときに用いるというルールがあります。モダンは(ラテン種目にもありますがモダンは特に)右回転と左回転がはっきりしていてそれが交互に切り替わりながらステップが構成されています。その回転を切り替える部分でピクチャーポーズがあるという。ピクチャーポーズ以外でも回転の切り替わりはあるのですが、ピクチャーポーズはそういう場面で使うという意識(知識)がありませんでした。その用途のためにスウェー(傾き)が発生し、より効率よく回転を切り替えることができる。スウェーは主に頭部(上半身)の重さを利用するためにある。言われてみればという感じです。
コントラチェックの左足はつま先(トー)から。コントラチェックという非常に頻繁に使われるピクチャーポーズがあります。男性が左足を一歩前に出すのですが、その際に踵(ヒール)からではなくつま先から着くのが正しいのだとか。私は30年近く間違っていました。重要なのはなぜつま先からなのかというと、回転を切り替えるために戻る準備をするから。リバース回転で入ってそこからナチュラル回転に変えるため。前段階の解説を聞いていると納得できます。
スローアウェーオバースウェーとは。おそらく最もモダンらしいピクチャーポーズではないでしょうか。学連だけでなく競技ダンス選手や社交ダンス愛好家だと一度はこのポーズで写真撮影をしたことがあると思われます。この言葉の意味が判明しました。まず“スロー”。何となくゆっくり(slow)という意味だと思っていたのですが実際は投げる(throw)でした。“アウェー”は遠くに(away)。女性の左足を遠くに投げ出すようにするからスローアウェー。そして“オーバー”は過剰なという意味ではなく覆い被さるという意味。現在は男性も上体を反らせるやり方が多いですが本来は男性が女性に覆い被さるような状態を意味する。そして傾くスウェー。大学1年生の頃からこの名称は知っていますが正確な意味というか語源を知りませんでした。そして女性の足を遠くに投げ出すようにするためのリードがある。むしろそれをしなければ相手にスローアウェーオーバースウェーというピクチャーポーズをすると伝わらない。なるほどと思いました。ちなみにスローアウェーが頭に付かないオーバースウェーというピクチャーポーズもあります。それとリードを変えるテクニックにつながります。
セミPP。PPとはプロムナードポジションの略で男性と女性の組んだ状態をさします。男女が組んで離れないで踊るモダン種目では基本的なポジションです。その特別バージョンがあると。上半身は通常のPPの状態だが下半身の組み方はクローズドポジションのままという。私は、スローアウェーオーバースウェーに入るところのポジションはPPだとずっと思っていたので、厳密にはPPではないということに衝撃でした。そうするとよりリードが正確になります。
人体の指標を用いる。今回特に勉強になったのが体にある部分を用いて説明することでした。
仙骨が床に垂直であることがまっすぐ立つということ。骨盤の前傾・後傾に関わりますが仙骨の角度で判断するというのもの。
上前腸骨棘がどこにあるか。上前腸骨棘とは骨盤を形成する寛骨の一つ、腸骨にある出っ張り(棘)の一つ。前面にあり上部にある腸骨の出っ張りを上前腸骨棘と言います(他に上後腸骨棘、下前腸骨棘、下後腸骨棘もあります)。男性の右上前腸骨棘が女性の左鼠径部のくぼみ(解剖学用語でいうスカルパ三角あたり)にある状態がクローズドポジション。
肋骨の出っ張り。お腹の外側にある肋骨の出っ張り、解剖学的には第10肋骨肋軟骨の部分を本池先生は指していると思われます、がどこにあるのか。右の第10肋骨肋軟骨部が女性のみぞおちにある状態がクローズドポジション。
男女互いの上前腸骨棘、第10肋骨肋軟骨部がどこにあるかでクローズドポジション、PP(プロムナードポジション)、アウトサイドパートナー、カウンターポジションらの位置が規定される。
職業柄、解剖学を勉強してきたのでとても理にかなった説明でした。人体の指標となる部分がどこにあり、どのように変わっていくかで男女の立ち方(ポジション)が変化していくのかが理屈として、公式として分かっていきます。
静止するために足の裏は波のように揺れていてよい。上体が安定しているように見せるために足の裏は微妙に動かしておいてよく、シューズの中で足の指が5本さざ波のように使えることが重要。私がこれまで考えていたことと真逆で、全身を静止するよう制御することに注力していたことと異なります。頭部が静かならそれでいい。体がふらついたときにそれを足の裏でコントロールする。そのためには微妙に足の裏を使ってふらつきを吸収して外にみせないようにする。発想の転換であり、そういうことなのかと納得しました。1曲ライズといって足首を伸ばした状態をキープする基礎練習をしたとき、このことを知ったおかげで意識が変わりました。
これらの知識、理論、理屈は現在の仕事に直結するもの。今更競技会に出て優勝を目指そうという気持ちはないのですが、もっと上達したいという欲求はあります。その先に来院する競技ダンス選手、社交ダンス愛好家の方々へより良い施術を提供できるはず。本当の意味で競技ダンスから社交ダンスを学び始めていると今年に入って感じるようになりました。
甲野 功
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