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以前、国家資格についてブログで書きました。私の持つ国家資格によって身分が規定されて仕事ができています。
文部科学省ホームページ「国家資格の概要について」によれば『国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。』とあります。『国の法律に基づいて』とあるように各国家資格にはそれぞれ規定する法律があります。私の持つ国家資格にはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関しては「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師に関する法律」(通称、あはき法)が、柔道整復師に関しては「柔道整復師法」(通称、柔整法)が該当します。そして国家資格は法律で設けられている規制の種類により、以下の4種類に分類されます。
①業務独占資格:有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格
②名称独占資格:有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格
③設置義務資格:特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている資格
④技能検定:業務知識や技能などを評価するもの
私の持つ国家資格は①の業務独占資格に該当します。つまり免許を持たない者が按摩、マッサージ、指圧、鍼灸、柔道整復を業とする(※反復継続の意志をもって行うこと)ことは各法律(あはき法、柔整法)で禁じられています。法律で禁止しているということはそれをすれば違法行為となり罰則が科せられますし、罰則内容も法律で決まっています。
それでは②の名称独占資格とはどのようなものでしょうか。そもそも名称独占とは何か。そのことについて書いていきます。
文部科学省ホームページによれば名称独占資格とは有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格です。そして名称独占とは、特定の資格を持つ者だけがその資格の名称を使用して業務を行うことが法律で認められている制度となります。これにより、資格を持たない者がその名称を使用することは禁止されています。具体的な資格は何かというと、同じ厚生労働省管轄でいうと、保健師や理学療法士がそれに該当します。名称独占資格がある意義としては、有資格者以外の者がその資格の名称を用いて業務を行うことを禁じることにより、事業主や利用者にとって質の高い者の選択が容易となるようにするためとされています。言い換えると保健師免許を持っていない私が「私は保健師です」と名乗って活動することは違法行為となるのです。
ちなみ私の持つ4つの国家資格は名称独占は無いので一般の人が「私はあん摩マッサージ指圧師です」、「私は鍼灸師資格を持っています」と言っても直接罰則はありません。そのことにより他人を騙したとしたら虚偽や詐欺を働いたという点で違法行為を問われるかもしれませんが、名乗ること自体は罪になりません。名称独占資格はその名前を名乗ったら罰則があるのです。一方、無資格者がマッサージを仕事として行ったらそれは違法行為になります。業務独占資格ですので。あん摩マッサージ指圧師と名乗るのは違法行為に該当しないがマッサージ行為を行ったら違法行為である。対して無資格者が保健師を名乗るのは違法行為であるが保健師が行うことを仕事にすることは違法行為に当たらないのです。それは保健師は名称独占資格であって業務独占資格ではないからです。同じように私が理学療法士ですと名乗ったら違法行為ですが、リハビリテーションの施術を当院で患者さんに行っても違法行為とはなりません。理学療法士は業務独占免許ではなく名称独占資格だからです。(※ただし医師の指示の下で行うリハビリテーションは業務独占に該当するので、仮に私が病院勤務をしていて医師からオーダーを受けて患者さんにリハビリテーションを行ったらそれは違法行為になります)。
何か矛盾を感じませんか。名乗るのは駄目だけど業務内容はやってもいい。それは国家資格の意味があるのかという気がしませんか。日常生活で必要なことを業務独占によって無資格者に禁止するのは不便が生じるということでしょう。例えば家族が脳梗塞になり後遺症が残ったとします。現在退院を早める方針になっていますのである程度回復したところで病院を出ることになります。そこから自宅で家族がリハビリテーションを行うことは必要であり禁止することはできない(しない)。しかし一般の人が私は理学療法士だと名乗られると問題が生じるだろうからそれは禁止する。そのような理由と考えられます。それだったらあん摩マッサージ指圧師や鍼灸師、柔道整復師にも名称独占を入れた方がいいのではないでしょうか。そのように考えることがあります。
医師は業務独占資格であり名称独占資格です。素人が医行為を行うことはもちろん禁止です。一般の人が投薬したり診断をしたり、もちろん手術をしたりすることなど許されません。さらに医師だと名乗ること自体が違法行為にあたるのです。それはそうですよね。素人が私は医者ですと名乗ることは社会的にとても危険なことです。それならば他の医療職種も同じなのではないでしょうか。看護師、助産師は業務独占資格のみで名称独占はありません。普段から看護師です、助産師ですと名乗っている無資格者がいて、上空飛行している機内で急病人あるいは産気づいた妊婦が現れたときに、知人が「この人は看護師、助産師です」と紹介したらどうでしょうか。業務をしなければ違法行為になりませんが余計な問題にならないですかね。医療に携わる国家資格は素人が名乗ることは少なからず危険が伴うような気がします。
名称独占で数年前から気になっていることがあります。それが匿名の自称医師を名乗るSNSのアカウントです。X(旧Twitter)には医師だというアカウントが多数存在します。そこには実名、顔を公開して実在が確認できる者もあるのですが、実名を出しているがイラストあるいは一見関係のないトップ画像にして顔を隠している者、匿名で顔も出さず性別も明かしていない者もあります。名前も顔も公表していないのに「自分は医者です」というアカウント。これは名称独占に抵触しないのでしょうか。本当に中で運営している人が医師免許を持っていれば問題はありません。しかしそれを証明する術はありません。裁判等で開示請求をしない限り。そしてただ個人の日常を呟いているなら構いませんが、医師として、すなわち有識者として意見を述べている場合はどうなのでしょう。
・私は医者です
・医者の言う事を聞きなさい
・でも個人は特定されたくないので素性は明かしません
・DM(ダイレクトメッセージ)は公開していないので直接やり取りはしません
このようなアカウントを目にしたことがあります。
実名で顔を公開しているアカウントが自称医師アカウントに反論をリプライで行います。その際に自称医師アカウントは医師の立場でものを申します。反論する方は素性を明かしているが、一方は自称医師であるとしているが証明できるものは何も示さない。これが許されるのであればいくらでもニセ医者ができるのではないでしょうか。私は柔道整復師ですからそれなりに整形外科領域の知識があります。そこで匿名かつ顔を出さないようにして自称整形外科医だとアカウントを作ります。そして「あじさい鍼灸マッサージ治療院にかかったらあそこは素晴らしい先生だった。きちんとしていて腕が良い。」などと自作自演の投稿を繰り返したとします。もちろん名称独占に抵触する違法行為です。このようなことが行えてしまいます。医師というのは社会的責任が大きいから名称独占で非医師に医師を名乗ることを禁止しています。医師だと確証が取れないのに素性を明かさない自称医師アカウントがSNSで存在してしまうのはどうなのだろうと思います。それは個人の表現の自由とは別ではないのかと。
名称独占という国家資格のシステム。あまり知られていないように思います。
甲野 功
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