～迷惑営業電話対策の進化～

当院は開院１０年を迎えました。開院当初からずっと苦労したことがあります。それは売上とか患者さんが来ないとかの経営面、患者さんを満足させられなかったという臨床面は常に懸念事項としてありますがそれとは別のことです。経営と臨床のことはずっとついて周るものだと考えていて満足する（納得する）ということは続けていく以上無いものだと思います。何が苦労するというか迷惑を被ったかというと営業電話、そして嫌な営業です。営業電話は電話番号を公開してからずっとあります。１０年間ずっと。

始めた当初は営業電話すら構ってもらえているような気がするので対応していました。私は大学を卒業したあとは半導体商社に新卒で就職しています。商社ですから入社後新人研修でみっちりと営業の基礎を習いました。その後も理系大学を卒業しているとはいえ商社である以上、社員全員は営業であるという会社の方針のもと、お客さん周りはかなりしました。技術営業部隊に配属されたことも関係します。そのため営業担当の気持ちがよく分かります。経験者ですので。そのため最初は常識的な範囲で電話対応をしていました。ところが対応しても良かったためしは一度たりともなく、害を被っただけでした。いきなり電話で営業をかけてくる相手を対応して私のプラスになったことなど無かったのです。１０年あじさい鍼灸マッサージ治療院を継続してきて、これから開業しようという方々に絶対こうした方がいいということは、ほぼ言えないのですが、営業電話は相手にしないですぐに切れ、という事だけは断言できるかもしれません。それくらい酷いものばかりでした。

先に院内に営業を入れたエピソードを挙げます。突然の営業電話。全パターンが会ってくれと訪問したがります。コロナ禍のときにリモートで、という提案がありましたがその時期を除いてとにかく会いたがります。そして院内に営業が来て良かったことは皆無です。

開院１年目で月３万円、３年間縛りのアプリケーションサービスを登録して大失敗しました。全く費用対効果がありません。結局、そちらの企業努力が悪いということでした。患者さんがわざわざ新しくアプリケーションをインストールするのがまず手間です。やってくれません。そのときはスマートフォンを持っていなかったので状況が分かっていませんでした。あの契約がなければもっと早くポケットマネーから出した初期投資を回収できたことでしょう。期限が切れたらすぐに契約を解除（契約更新をしない）しました。そのうちLINEが商業用サービスを開始して今そのサービスは一切目にすることは無くなりました。

ある営業を入れたときは整骨院を紹介するサイトに登録してくれと言われました。私は柔道整復師ですが業態は整骨院ではないと断ると「整骨院なんて何をしているか分からないじゃないですか。一般の人に区別つかないので平気ですよ」と営業が言いました。柔道整復師からすればバカにするなという憤りと確かに現状そうなっているよなという情けなさが同居した嫌な気持ちになりました。何よりこのような営業にバカにされている業界が許せないなと。結局そのサイトはすぐに無くなりその後連絡が来ませんでした。適当な仕事をしているところだということだったのでしょう。

ある営業は毎日ブログを書けば集客できるという内容でした。それはこちらに負担を強いるということ。なぜ毎月使用料を支払ってこちらが作業しないといけないのか。私は自発的にホームページのブログを更新しています。そこを目につけたのでしょう。お金を払って相手の養分になることなど意味がありません。この頃はＳＮＳを活用した方がずっと効果的だと分かっていたので要らないと断りました。すると相手が逆上するかのような態度となり、これみよがしに会社に電話をして、相手が無能でこちらの考えを理解できないのです、だから私の責任ではありません、といった内容の話を目の前でしています。どういう社内教育をしたらこのようなふざけた営業担当が生まれるのでしょうか。一般企業なら仕事にならないと思いました。個人の鍼灸院は世間知らずがやっているだろうと考えているのでしょう。おそらくあなたより学歴は上だよ、と内心思いながらなるべく穏便に追い出しました。置いていった名刺を念入りに破いて捨てておきました。

断っておきますが営業が全員悪いとは言いません。私も新卒でその仕事をしていましたから。イベントで出会って良くしてくれた営業担当さんもいます。別件でメールでのやり取りをしてその人なりが分かっていて院内に来てもらった人もいます。突然電話で会わせろと、話を聞け、という営業が悪いのです。また紹介でも感じの悪い営業はいますが。信頼して院内訪問を許した人が勝手に連れてきた営業。うちの製品を使わない先生は頭が悪いと言わんばかりの言い方。国家試験をパスしたプロを前になかなかの言い方です。他にも慇懃無礼な質問もあり、連れてきた方を含めて今後一切関わらないことを決めました。このように信頼できない営業と会うと不愉快なことが多く、双方に何の得もありません。狭い業界ですから私があそこの営業は酷かったと周囲に話していけば結構なダメージになると思います。悪評が出回ります。

このような営業トラブルを回避するには電話対応しないことが第一です。脈が無いのに延々と時間を使われるのは向こうも無駄なので電話口で営業、それもこれはダメな営業だなと感じたら、すぐに切るようにしています。７年前に迷惑営業電話について私はブログにしていて、その頃から困っていました。何よりまともな営業電話になっていない。研修からやり直してくれと叫びたいものが多々あります。出たら切られるなんて電話もあり、もう社会人のやることとは思えないものも。私も営業だった時期があるからなおさら。

その１０年来苦労してきた迷惑営業電話ですが最近劇的に対策が進んでいます。それはスマートフォンが自動で警告してくれるようになったのです。私は開業したときは出張専門で始めました。そのためＰＨＳを持ち、固定電話の番号を持っていませんでした。あじさい鍼灸マッサージ治療院を開院したときもそのままＰＨＳの番号を継続し固定電話を引きませんでした。数年後にＰＨＳのサービス終了に伴いスマートフォンに機種変更します。よって院の電話はスマートフォンです。かつては固定電話がないところは社会的に安心できないなどと言われたものですが、今では固定電話を持つ方が珍しくなっています。他の開業している先生では、固定電話からの電話は営業に違いないので出ないという人がいるくらいです。それくらい個人の携帯番号が主流になっています。

さて迷惑な営業電話に苦しんでいるのは私だけではなく様々な業種の方が文字通り迷惑しています。一度嫌な電話だとなればその電話番号をブロックして掛かってこないように対応するわけです。そうすると電話を掛けてくる方は個人の携帯電話番号にして掛けるようになってきます。ブロックされたら別の番号にすればいいと。私もまたこの会社か！という番号をころころと変えて掛けてくるところが何個かあります。いたちごっこです。着信拒否している電話番号は数百件とあるでしょう。数えていないので具体的な件数は不明です。それくらい多いし、番号を変えてくるのです。

しかし登録されていない電話番号から掛かってくると出ないわけにもいきません。初めての患者さんからの問い合わせかもしれません。ネット全盛の今でも電話でないと連絡しないという方はいます。これはどちらなのだろうかと不安になりながらも電話に出ます。そのとき営業電話であったときの気持ちの落ち込みは大きいです。患者さん対応中だとなおさら。怒りを覚えることもあります。

迷惑な営業電話だった場合は必ずその電話番号を検索します。Googleで検索するのです。電話番号をそのまま打ち込んで。このとき迷惑営業電話だと一番上に迷惑営業電話検索サイトが表示されます。その内容を見ると悪い口コミが多数書かれているのです。迷惑度１００％。また多数がいつ頃から検索しているのか分かります。それを確認してやはり評判の悪い営業なのだと確信し着信拒否にするのです。

これが近年、スマートフォンの方が自動で迷惑電話の可能性がありますと警告してくれるようになりました。私のスマートフォンはアンドロイドなのですが、登録していない電話番号から着信があった際に、この電話は迷惑電話の可能性がありますと表示されることが出てきたのです。実際の着信履歴を見ると「迷惑電話」とスマートフォン自体が認識しています。私の方で迷惑電話とカテゴライズしたのではないのです。そのため初見の番号でも出なくて良いと判断でできるようになり非常にストレスが減りました。ではどのようにスマートフォンは迷惑電話と判断しているのでしょうか。その番号を検索すると案の定迷惑電話検索サイトが一番上に出てきます。多くのユーザーがこの番号は迷惑な電話だと判断していました。その情報をＡＩが判断して情報を共有しているのだと予想しています。このシステムができたおかげなのか最近はずいぶんと迷惑営業電話が減りました。悪評が付いたら電話を掛けまくるというローラー作戦が使えなくなるわけです。門前払い以前に電話を取らなくなる。

こちらとしては快適になりました。営業側は礼節を持ちきちんと電話しないとあっという間に迷惑電話認定をされてしまいます。テクノロジーの進化を感じます。

甲野　功

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