開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
昨日は今年の4月に鍼灸マッサージ科(通称、「本科」)に入学した1年生の学生さんが当院の「学生ペア割」制度を利用しました。学生ペア割とは鍼灸、マッサージの専門学生や進学を希望していているプレ学生を対象にした体験と見学を行えるものです。通常よりもかなり安価で行っております。これまでに多数の学生さんが利用してきました。
今回は異例なことが多数ありました。
まず入学したての1年生が応募したこと。むしろまずありません。この時期は学校の勉強になれる時期で外部にまで知見を広めようという意識を持つ方が少ないと思われます。授業が進み色々と見えてきて、そこから学校外のことにも目を向けてみようかなとなるわけです。ちなみに私は自身の本科時代にどこか鍼灸院や治療院に行ったという経験がありません。外部の勉強会に参加したこともありません。学校の授業のみです。同級生と自主練習や勉強はしましたが。ですからかつての自分と照らし合わせてみると、1年生の7月で外へ学びに行くなど考えられません。今回来院した学生さんは勉強熱心です。
次に体験したいものが「按摩指圧」と「全身関節アプローチ」のコースでした。「鍼灸」ではないのです。これまで視覚障害者が通う視覚支援学校の学生さんでは按摩指圧を受けたいという要望がありましたが、どちらも徒手療法が希望ということはありませんでした。あん摩マッサージ指圧師のみの専門学生なら分かりますが。鍼灸ではなく。またこれまで学生ペア割で一番多かった希望コースは「美容鍼」。特に美容を売りにしているわけではない、中年男性の個人院で美容鍼を体験したい、見たいという要望が多かったのです。これも意外です。
参加者は先月当院で行った学生向けセミナーに参加した方でした。とても勉強熱心で様々な学外のイベントや勉強会に顔を出しています。その方が同級生を誘っての参加でした。片方が按摩指圧でもう一方は鍼灸ということがあったのですが今回は両方とも徒手療法でした。
私は鍼灸、柔道整復の資格を持っていますが根っこはあん摩マッサージ指圧師である自負があります。個人的な嗜好は徒手療法全般なのです。そのため嬉しい気持ちがありました。せっかくなので本科、すなわち鍼灸も学ぶ、そして今後鍼灸ができるようになる学生が行う徒手療法について考えてもらう機会にもなればと思い資料を準備しました。
まず当院の「按摩指圧」コース。これはその名前の通り按摩と指圧を行います。按摩と指圧は別の技術ですが一緒に行います。要望があれば指圧のみ、按摩のみですることもありますが通常は混ぜてしまっています。ではそもそも按摩と指圧、そしてマッサージの違いは何か。一般の方にはまず区別がつかないでしょうし、近い資格の鍼灸師、柔道整復師でもきちんと説明はできないものです。周囲の鍼灸師、柔道整復師に質問してきちんと区別できた人はいませんでした。参加した学生さんにとっては「あん摩マッサージ指圧理論」という教科で習うことなのですが、その比較をしておこうと思いました。
続いて「全身関節アプローチ」コース。こちらは普段ほとんどオーダーされないコースです。開業当初は骨格矯正としていたのですが、“骨格矯正”という用語が一人歩きして誤解されそうだと感じるようになり名称を変更しました。これは主に関節に対して徒手手技を用いるものです。カイロプラクティックやAKA、マニュプレーションなどの技術を用います。按摩、指圧が主に筋肉、あるいは腱、靭帯に対して刺激を加えます。筋肉、腱、靭帯、関節包などを解剖学で軟部組織といいます。軟部組織に対するものとして骨があります。骨は固く、軟部組織は柔らかいという対比。関節とは骨と骨の繋がり。つまり当院がいう全身関節アプローチは骨に対して刺激をしているということ。按摩指圧が筋肉(軟部組織)に、全身関節アプローチが関節(骨)に。たまたまでしょうが2つのコースを学生さんたちが選択したことで技術的な対比を見せることになります。というわけでどのような体の部位に対して刺激をする(アプローチ)をするのか分類分けする資料を作成しました。
座学での説明をした上で実際の施術へ。
まず全身関節アプローチから。左右の足底(足の裏)を見てもらいアーチの左右差を確認してもらいました。足底アーチといって足の裏は土踏まずがあります。2本の縦アーチと1本の横アーチで土踏まずは形成されています。足根骨や中足骨を操作してアーチを本来の状態に戻すようにします。これをすると立った時に足が地面を掴んでいる、吸いついているような感覚が生まれるものです。そのあとは脊柱、背骨です。背骨は頚椎、胸椎、腰椎で構成されます。それらにわずかながらですが動きをつけるように動かしていきます。続いて肩甲骨のマニュプレーション。肩甲胸郭関節の動きをつけるように操作します。次に仙腸関節の調整。横向き(側臥位)で行います。仰向け(背臥位)になって頚椎における回旋の調整、胸椎における後湾の調整、腰椎における回旋の調整をしました。最後に手のひらの手根骨、中手骨を操作して顔のリフトアップを体験してもらいました。途中細かい手技もありましたが解説しながら行ったので時間がかかりました。
二人目は按摩指圧です。私の行う呉竹学園の按摩は特徴としてMP揉みと言われる母指揉捏方法を行います。他校の母指線状揉捏との違いを説明しました。また古法按摩の一つ吉田流按摩では肘揉みという肘を用いた手技があることを説明します。呉竹指圧は半月の手という圧の抜き方があり、浪越指圧はこういう感じと違いを説明しました。同じあん摩マッサージ指圧師でも長生学園の長生術は大きく技術が異なるという話もしました。さらに少しタイ古式マッサージの技術を見せました。タイ古式マッサージの特徴としてストレッチと揉捏を同時に行える、全身を駆使して行うので手が空けられるものがある、という説明をしました。後が詰まっていたので按摩特有の技術である按腹と曲手は必ず披露するようにしました。個人的にPNFを体験してもらえなかったのが心残りです。
施術体験後も時間のあった学生とは話をしました。情報交換はとても重要で学生さんがぼんやりと考えている進路について役立ちそうな関係者を提示することができました。人脈は大きな武器で、私もそれなりに業界に知り合いが多いので、こういう人がいるよ、ここに行ってみるといいよ、ということをお話しました。
今回の学生さんは徒手療法を希望したので私としてもこれまでの技術が改めて整理されました。人に説明することが一番の勉強方法だとも言われます。また一つ良い経験をさせていただきました。
甲野 功
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