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~第10回あはき柔整等広告検討会議事録を読んで~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 第10回あはき柔整等広告検討会議事録
第10回あはき柔整等広告検討会議事録

 

 

去る5月20日に第10回「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」が行われました。

 

正式名称が長いので便宜上「あはき柔整等広告検討会」と書きます。

 

「あはき」とはあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師の略で「柔整」とは柔道整復師の略です。これらは厚生労働省が管轄する医療系国家資格であり、通称あはき法柔整法という法律で身分が規定され業務内容(広告内容を含む)が定められております。私はこの4つの国家資格を取得しております。これらの業務における広告に関するガイドラインを作るための会議が厚生労働省医政局医事課を中心に行われています。既に10回を数えております。当初の予定ではとっくの昔に広告ガイドラインが施行されているはずでしたが、途中新型コロナウィルスのことや議論がまとまらずここまで続いております。

 

そしてこの第10回の議事録が公開されました。

資料を含めて議事録を読みこむとあはき柔整等広告検討会の流れが見えます。

 

前回の第9回が令和5年(2023年)2月13日開催ですから丸1年以上空いてしまいました。前回決定したことは

「整骨院」名称を禁止する

業態+治療院ならば屋号に「治療院」をするのは構わない

2点が大きなものでした。

 

資料2 施術所の名称等について

 

まず整骨院とは柔道整復師が開設する施術所の屋号に用いられる名称です。巷では○○整骨院という看板をよく目にするのではないでしょうか。実は「整骨院」という名称は使用してはいけなくて「接骨院」あるいは「ほねつぎ」でなければならないのです。ほねつぎ(=骨接ぎ、骨継ぎ)はさすがに古い言葉で今ではほとんど目にしないのですが、接骨院が正しく整骨院は使用してはいけないというのは世間の人は知らないことでしょう。柔整法には広告できる内容も規定されており、使用できる名称も定められています。現行の法制上に「整骨院」は出てきません。過去に柔道整復師国家試験に施術所の名称には整骨院が使用できないことを問う問題が出題されています。にも関わらず、現状大半の柔道整復師が開設する施術所は整骨院を使用しています。今回の広告ガイドライン作成にあたり、ここのところをきちんとしようということで整骨院名称の禁止を盛り込むことになりました。既に開設しているところは仕方ないとして、新規に開設する施術所には整骨院を用いることはできない、既存の整骨院も看板を掛けかえる際には接骨院に変えましょう、という内容で前回合意しました。

 

続いて業態+治療院が施術所の屋号にしても構わないという件について。これは医師会の方から「治療」という言葉を医師以外が用いることに難色を示しているということがあります。日本では医師にしか治療行為が認められていないので、「治療院」という名称は医療機関(病院、クリニック、診療所)と一般の人が間違えるおそれがあるので禁止すべきだという意見です。また医療法において医療機関ではないのに医療機関と紛らわしい施設名を用いてはいけないという規定があります。よって、これは主にあはき側ですが、治療院という屋号は認めないという意見に対して議論がされました。経過を省きますが「鍼灸治療院」、「マッサージ治療院」というように業態を前に付けた治療院ならば可であるとなりました。世間の方が治療院と聞いてそこが病院・クリニックと間違えることがあるのか、という話で、きちんとその前に鍼灸やマッサージを付けておけば混同することはないだろうということです。このおかげで当院も屋号を変更せずにすみました。

 

ところが第10回ではこの施術所の屋号について議論することになりました

一つは日本柔道整復師会(通称、日整)から再度「整骨院」という名称を使えるようにしてくれないかと提案があったのです。

日整側の言い分として

・そもそも禁止のはずの整骨院を保健所が認可してきたわけで、それは厚生労働省の責任(整骨院名称の使用を認めるように働きかけをしてこなかったのは日整の責任)

・接骨院でも整骨院でも一般の患者さんには不都合が無い(会員の4割以上が接骨院である)

・本当に整骨院名称に問題があったらとっくに規制されていたはず

・今一度、整骨院使用を許可してくれるよう議論してもらいたい

という感じです。

 

会議資料における原文は以下の通りです。

日本柔道整復師会からの要望(概要)

➢ これまで「整骨院」は告示には規定されていないことは承知していたが、「整骨院」での名称の届出が認められてきたことから、当会として告示には規定がなく、本来、使用できない名称であることを柔道整復師に周知してこなかったこと、また、開設の届出で認められてきたことに甘え「整骨院」を告示へ追加するよう厚生労働省に働きかけするなど「整骨院」の名称に関して考え方を明確にしてこなかったことに対する責任があると考えている。

➢ 会員の施術所の名称は、北海道、大阪府、福岡県では95%が「整骨院」であり、さらに、会員全体でみると15,460施術所のうち6,631施術所(42.9%)が「整骨院」である。そして「整骨院」で受理された期間が相当経過している中で、これまで「整骨院」の名称であることをもって、国民が大きな不利益を被るような問題が生じてはいないと考えている。

➢ そもそも「接骨院」、「整骨院」が何をするところなのかがわからないという声をよく聞くが、これまで「整骨院」という名称で国民に不利益となる重大な問題が発生していれば、現在の取扱いが継続されているはずはなく、既に「整骨院」を認めないという指導がされているものと考える。

➢ 柔整業界として「接骨院」「整骨院」について積極的に情報発信し、国民に理解いただくよう努めていくので、今一度「整骨院」について議論いただきたい。

 

 

 

 

 

前回第9回の結論は何だったのかと言わんばかりの提案です。前回の会議にも日整の理事が参加しているのです。これに対して検討会メンバーからは厳しい意見が出ます。

健康保険組合連合会政策部担当部長鈴木俊明構成員は、これまでの議論の経過、継続性あるいは各構成員の発言などを軽視するような事態が生じているという風に感じており、健康保険組合連合としては非常に遺憾である、という旨の発言をしていることが議事録にあります。奈良県橿原市の加護構成員からは、整骨院という名称に法的根拠あるのであれば示してもらいたい、と発言しています。なお厚生労働省がずっと許可をしてきたことにも責任があると考えらえるので(※柔道整復師が開設する施術所は当該地域の保健所が認可しないといけないので、整骨院名称の屋号を受理してきたことが問題の一端にある)猶予期間を設けるが、やはり前回決定したことを覆らせるのは良くないという意見が大多数でした。議論は再度事務局に戻すということになりました。かなり議事録に掲載された質疑応答を省略しております。結論は先延ばしという感じです。

 

続いても施術所の屋号についての議論です。業態+治療院が可能であるならば「柔道整復治療院」や「接骨治療院」という屋号は構わないのかということ。20年以上この業界にいて当事者の柔道整復師である私でも聞いたことのない文言です。ガイドラインにするにあたり突っ込まれることを想定してこのパターンはどうするのかという議論です。それと同時に「施術所」にも業態を前に付けないといけないのでは、という議論も出ました。現行、「○○治療院」は不可ですが「○○施術所」は可能であるという判断です。つまり甲野治療院は許可されませんが甲野施術所ならOKということ。では施術所だけではどの業態なのか(あん摩マッサージ指圧なのか鍼灸なのか柔道整復なのか)分からないのでは?という議論です。これは「治療院」の扱いに気を取られて盲点でした。治療という言葉を使っていないから注目されてこなかった(=医療機関と間違えることはないと判断されてきた)ということです。これらの屋号に関する議論は、根幹に医療機関と勘違いされるのではないかという懸念があるので、そこを乗り越えることができれば構わないという結論になったと議事録を読むと捉えられます(※実際には次回の会議資料を読まないと結論は分かりません)。

 

他にも療養費に関する議論もありました。一般の人に対して療養費という文言や制度が分かりにくいので、きちんとしていこうという。柔道整復師の業務範囲にも言及しており簡単に結論が出ないなという感じでした。

 

最後に議事録の端々から感じたことです。この広告ガイドラインはいわゆる無資格者、すなわち医療系国家資格を持たない者、あはき柔整資格を持たない者への規制も該当するということ。これまではあはき法、柔整法はその国家資格者だけの広告規制だと考えられてきました。そのため柔道整復師なのに整体師を名乗り、接骨院という施術所ではなく、整体院という商業施設として始めれば柔整法で規定する広告規制は関係ないと言わんばかりのことがありました。これは鍼灸師でもあん摩マッサージ指圧師でも同様です。更には理学療法士も整体師と称して整体院を開業しています。ところがそのような無資格者、あるいは無資格者行為に対しても広告ガイドラインは取り締まるという意向を議事録から読み取れます。会議の名称に“等”とついているようにあはき柔整だけではなくその他の業種も該当することを示唆しています。これは結構重要なことでいわゆる無資格者の人間が出席していないところで話が進んでいます。議事録には行政指導刑事告発という用語が出ています。またあはき法柔整法以外の医師法医療法景品表示法といった他の法律にも言及しております。昨今の消費者庁や総務省の動きも含めて、いよいよグレーゾーンとされてきたところにメスが入ることになりそうだと感じております。

 

前回から丸1年以上空いたこのあはき柔整等広告検討会。次回第11回は7月12日と2ヵ月も経たずに開催されます。異例の早さです。それだけ議論を進めようとしているのではないかと思われます。第11回はどのようなものになるのか注目しています。

 

甲野 功

 

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