開院時間
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昨日、当院で鍼灸マッサージ専門学生2名に対してテーピングの講習会を行いました。
過去に何度か開催しているテーピング講習。参加者の一人は2年前に参加しています。その方と今年専門学校に入学した学生さんが来院しました。テーピングに関しては柔道整復師でもある私には色々と思う所があります。表面的なテクニックを学ぶことができても、その意義というかやることの責任みたいなところをしっかり伝えたいなと強く思っていて実技練習の前に座学を入れました。
考えられるテーピングをする目的は、外傷の予防、あるいは外傷の再発防止、さらに応急処置、運動や日常生活動作中の除痛、被覆(肌や患部を覆うこと)などが挙げられます。それによる効果として、関節可動域の制限、場合によっては身体部位の補強、不安が解消される、といったものが考えられます。何が言いたいかというとマッサージや鍼灸と比べるとテーピングを行う状況が限られるのです。スポーツの現場、急な外傷の応急処置といった状況です。あまり慢性的な疾患にテーピングをすることはありません。あるとしてもコルセットや装具の方が有効なことが多いと思われます。比較的慢性的な症状を扱うあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師に比べるとテーピングは柔道整復師領域が強いと考えています。そこには応急処置という概念が入ってきます。ですからまず応急処置の基本的な知識を知ってもらおうと説明しました。
応急処置の基礎である「RICE」。これはRest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)のこと。やや発展した「PRICE」。これはProtection(保護)、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の略。他にも「POLICE」(Protection(保護)、Optimal Loading(最適な負荷)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上))、「PEACE&LOVE」(Protection(保護)、Elevation(挙上)、Avoid anti-inflammatories(抗炎症薬を避ける)、Compression(圧迫)、Education(教育)、Load(負荷)、Optimism(楽観思考)、Vascularisation(血流を増やす)、Exercise(運動))といったものもあるということ。そして応急処置の基本動作として意識確認、脈拍の確認、気道確保、胸骨圧迫(心臓マッサージ)、AEDの使用といった話をしました。続いて骨の疾患に関する知識として骨折、脱臼について。その定義や固有症状、鑑別方法の違いなど。これらは鍼灸マッサージ専門学校でも習うことです。3年生の参加者は既に聞いている話で1年生はこれら学ぶ内容です。
そこから固定することによる絞扼障害の紹介をしました。テーピングには「貼る」と「巻く」があります。身体の一部を巻けば、その程度によりますが、締め付けられて循環障害は生じます。血管や神経が圧迫されるため。これを絞扼障害といいます。テーピングはこの恐れがあるのです。また一般の方がいう“マヒ”という表現に注意が必要であること。医学用語の麻痺(まひ)は運動神経の障害に用います。ところが一般の人は“マヒ”を感覚神経の問題として用いることがあるのです。それは医学用語では知覚鈍麻と表現します。絞扼障害が起きたときに“マヒ”が生じるのですが麻痺なのか知覚鈍麻なのかを読み取る必要があります。
学生さんにとってテーピングはスポーツ現場で活躍したいと考えたときに必要だと考えることでしょう。しかしスポーツ選手、それが特に高いレベルの選手であればあるほど、対応には知識と技術が必要です。スポーツ生命、選手生命という言葉ありますが文字通り間違った処置をしてその選手の「生命」を奪いかねません。慢性疾患を対象にするよりそのリスクは大きいのです。そのことを心に留めておいてもらいたいと思いました。
今回は更に綿包帯から実技をしました。テーピングなので包帯固定は関係ないのですが。その理由として包帯は巻くという行為のみです。テーピングはそこに貼るが加わります。巻くだけの包帯を体験してもらい固定される安定感(ベネフィット)と締め付けられる圧迫感(リスク)を知ってもらいます。貼るだけのテーピングと体を一周巻く行為が入るテーピングは違うこと。また包帯により走行を見てもらう狙いもありました。テーピングの基本は足関節(足首)で必ずこれを学ぶと言ってもよいでしょう。それはどのようにテープを入れるかという走行が複雑だからです。その走行を包帯から先にイメージしてもらうのです。参加者には足首の包帯固定を体験してもらいました。
また下腿(ふくらはぎ)の包帯。ゲートル巻きと言われるかつて歩兵がしていた巻き方も体験してもらいました。ふくらはぎを圧迫して長時間の歩行でも疲れにくくするものです。巻くことの効能、体形に合わせた細かい調整ができることをしってもらいました。
今回、包帯固定を紹介し参加者に体験してもらったのは今年1月1日に起きた能登半島地震が関係します。大災害が起きたときにはまさに応急処置が必要なことがあるでしょう。そして大災害では物資が足りなくなりますから繰り返し使用可能な包帯が活用されるはずです。柔道整復専門学校では綿包帯を1反(30cm×9m)の布を割いて作ることから学びます。参加者に資源が足りない時にどう工夫するかという考えにも繋げてほしいという願いがありました。大災害はいつ来るか分かりません。医療系の勉強をして免許を取るということは、有事の際の心構えを、今できなくても、持ってほしいと。
テクニックは少し練習すればできるようになります。私もテーピングを最初に学んだのは20年以上前で民間の整体学校のスポーツトレーナーコースでした。そのころから足首のテーピングはできました。その後鍼灸マッサージ、柔道整復の専門学校に進み多くのことを勉強し国家資格を取ることで、上っ面の技術だけだったなと痛感しました。次の世代、医療系の国家資格を取ろうとする学生さんには技術はもちろんのことテーピングを学ぶ覚悟や責任も知ってもらいたいと思いました。
甲野 功
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