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~「整骨院」名称問題先送りへ~

厚生労働省資料より
厚生労働省資料 「整骨院」に係るガイドライン上の取扱いについて より

 

 

昨日、7月12日(金)に「第11回あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」が開催されました。

 

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会

 

これはそのタイトルのようにあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師等(以下、「あはき柔整等」と表記)の広告に関してガイドラインを作成して施行していこうという厚生労働省の会議です。第1回は平成30年(2018年)5月10日に行われ、平成の頃から続いています。当初の計画ではとっくにあはき柔整等広告ガイドラインが完成しているはずでした。ところが内容における議論が色々とまとまらず、かつ途中新型コロナウィルス流行により開催されない時期があり、このような6年にも及ぶ期間がかかっています。

前回第10回の検討会が今年令和6年(2024年)5月20日ですから近年では異例の短いスパンで開催となりました。第9回は令和5年(2023年)2月、第8回は令和元年(2019年)11月ですから、前回から今回までいかに期間が空かなかったかが分かります。そして問題となったのは第9回(2023年2月開催)で柔道整復師が開設する施術所の名称で「整骨院」の名称は不可とし、既存の整骨院はそのままで移転等で看板を掛け替える際は名称を改め、新規開設の場合は「接骨院」とし「整骨院」は認めない、という結論になりました。理由としては法的根拠がなく、法的に認められているのが「接骨院」、「ほねつぎ」、「柔道整復」であるから。柔道整復師国家試験でも“施術所名称に「整骨院」は使用できない”という趣旨の問題が出されています。背景として医療法において、医療機関でない施設が医療機関と誤認されるような名称をつけてはならない、という内容があるからです。この場合の医療機関とは病院、クリニック、診療所、助産院などです。(※柔道整復師が開設する施術所は医療機関ではないという解釈です。)「整骨院」は「整形外科」と誤認されるからというわけです。

 

ここで話がそれますが同じ理由であん摩マッサージ指圧師、鍼灸師が開設する施術所に「治療院」という名称は不可という判断にこの検討会で決定しました。治療という言葉は医師しか使用できないので「治療院」は非医師が用いる用語としては不適切だというわけです。その代わり「マッサージ治療院」や「鍼灸治療院」のように業態+治療院という施術所名称は構わないという判断となりました。ちなみに厚生労働省「統合医療」情報発信サイト[eJIM]では鍼治療、鍼灸治療という用語を用いています。

 

話を戻して昨年2月の段階では「整骨院」名称は禁止となる方向で結論が出たのでした。ところが前回第10回の検討会で公益社団法人日本柔道整復師会から、やはり「整骨院」の名称を使わせてほしいと“提案”があり再議論となりました。前回の検討会では結論が出ず、今回第11回に持ち越しということとになりました。

私は数日前に第11回の検討会が開催されることを知り、傍聴参加の応募をしました。届出を出して認可されれば会場で会議を傍聴することができます。私は第5回を傍聴しております。自身が柔道整復師であり、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師でもあるため当事者であります。この検討会のことをずっとチェックしてきました。

 

そして会議では「整骨院」名称に関する結論は先送りとなり、実質使用可能ということになったのです

 

まず事前に開示された資料。これを読むとこれまでの経緯が簡潔にまとめられています。

 

「整骨院」に係るガイドライン上の取扱いについて 

 

日本柔道整復師会が提出した資料には、歴史的に「整骨」という名称が登場し、また確認できた施術所の名称において全国で57.8%が整骨院であるとあります。

 

施術所の名称として「整骨院」を用いることについて

 

会場に参加した検討会構成員は以下の通りです。敬称略、五十音順です。

 

石川英樹(公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会副会長)

江澤和彦(公益社団法人日本医師会常任理事)

加護剛奈良県橿原市財務部部長)

木川和広アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士)

坂本歩(学校法人呉竹学園理事長、公益社団法人東洋療法学校協会理事)

鈴木俊明健康保険組合連合会政策部担当部長)

竹下義樹(社会福祉法人日本視覚障害者団体連合会長)

徳山健司(公益社団法人日本柔道整復師会理事)

福島統東京慈恵会医科大学特命教授)

前田和彦(九州医療科学大学教授)

南治成(公益社団法人日本鍼灸師会業務執行理事)

山口育子認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)

 

なお磯部哲氏(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)は欠席でした。ここに厚生労働省医政局医事課職員が出席しました。

 

この日本柔道整復師会からの「整骨院」名称使用再検討の“提案”は議論を生みました。前段階で今年6月18日に参議院で『柔道整復業の施術所の名称等に関する質問主意書』が提出されたことが述べられました。それを踏まえて議論してほしいと。

各意見を要約して今回の結論に至ったのかを現場で膨張した立場から書いていきます。正確なことは今後発表される今回検討会の議事録で確認してもらいたいです。

 

●やはり「整骨院」名称不可の意見

・単純に法律の話。法で認められていないとされるものをこの会議で認める権限があるのか。

・整形外科と区別する必要がある。

・前回決定した事項を覆すのはおかしい。前例を作るのか。

・これまでの議論は何だったのか。

・それだけ重要な事項ならなぜ名称可能となるよう働きかけてこなかったのか。柔道整復師法ができた昭和45年の段階で整骨院が入らなかったのはなぜですか。

・そもそも禁止だったのに認めてきた厚生労働省(※現実的には管轄の保健所等の現場)の責任はどうなのか。

 

このように難色を示す意見が多数ありました。やはり問題は一度決まったことを覆すことの問題。これは厚生労働省の有識者会議であり、一度決定したと公表したことをやはり変えますという前例を作るのはいかがなものかという。それならば一度不可となった「治療院」名称も再度許可できるように提案しますよ、という意見も出ました。またそれならば何故第9回の検討会で「整骨院」名称不可にしていく方針に対して認めたのかということです。議事録にも『(「異議なし」の意思表示あり)』と明記されています。

一方、法的には禁止であるにも関わらず何十年と施術所を開設する際に「整骨院」名称を許可してきた行政の責任は無いのかという意見ももっともです。あはき柔整の施術所開設には該当地区の保健所等に書類を提出し現地に職員が検査をする必要があります(法律で規定されています)。その際に認可をしてきたのは担当職員でありつまり行政です。個人的な話になりますが、私も10年前に施術所開設の際に「あじさい治療院」にしようとしましたが担当者に不可と言われ、現在の「あじさい鍼灸マッサージ治療院」に変更したという経緯があります。このように担当者レベルできちんと対応しておけば良かったわけです。

 

なお(厚生労働省)医事課職員からは、名称における明確な基準がなく整骨院がダメともOKとも言ってきていない、現場の判断に任せてきた、といった発言がありました。

 

そして3択という話になります。資料にはこのようにありました。

【考えられる取扱いの例】

◆ ガイドラインに、広告可能な名称の例として「整骨院」を記載する

◆ ガイドラインに、広告不可な名称の例として「整骨院」を記載する

◆ ガイドラインには記載しない

つまり今後完成する広告ガイドラインに

①整骨院を可能として記載する

②整骨院を不可として記載する

③整骨院のことは記載しない

のどれかということ。 

 

●ガイドラインに記載しないという意見

・許可とは書けないが、不可とする根拠が乏しい。

・今回で結論が出ない。

・今回は記載しないで次のステップアップで考える。

・議論が集約できていない。

 

このようにガイドライン記載なしというのが落としどころという意見が多数でした。

個人的になんじゃそりゃという感想です。結局結論は先送りにして現状維持のままという。確かに「整骨院」でも「接骨院」でも一般の方にはどうでもいいことですし、整骨院と整形外科を間違える人がいるというのも間違えますかね?という感想です。実際私が整骨院の現場で働いていた時は勘違いしているお年寄りがたまにいらっしゃいましたが大多数は区別がついていたと思います。何よりスタッフは誰一人自分が医者ですなどと言いませんし。それよりも法的解釈はどうなるのか、一度決定したことを覆すのか、という点で釈然としませんでした。構成員の表情を見ると同じように呆れている感じが伺えました。あくまで私のみた感想ですが。

 

では結局、「整骨院」名称は可能なのですね、ということでもないのです。不可とする根拠もないが可とする法的根拠もないという感じ。「そこは現場の判断で」という意見が出てまた問題視されました。結論は出せないから保健所職員さんの判断に任せます、というような話では困るわけです。あの地域では、あの担当者では整骨院が可としたのに、ここでは不可でしたとなるような。

現場の判断に任せるという意見が個人的に一番呆れてしまいました。私も一柔道整復師であります。将来施術所を開設する可能性がゼロではありません。その際に看板、名刺、サイト、提出資料を完成させた上でやはり名称を変えなさいと言われたらたまったものではありません。どちらもいいから決めておいてくれと思います。また担当者だって矢面に立たされるわけで判断は任せますと丸投げされても困るでしょう。揉めた場合によっては個人的に訴えられるかもしれません。その矛盾状態を解消するために検討会で話し合ったはずなのに。

私が今回個人的に一番問題視しているのは結論を出さなかったこと。整骨院名称不可は回避されたようですが、かといって整骨院名称可であると結論づけていないのです。少なくとも現場で傍聴した中では今回は結論を出しませんということがはっきりしたと感じました。なおこの広告検討会は今回で最後のようです。座長が締めの言葉を発していました。つまりこの件について今後話し合われる場は設けられない可能性が高いのです。

 

今回、有識者会議を傍聴してこのような結果になることを目の当たりにして貴重な経験だったと思っています。なかなか経験できることではなかったので今後の業務に活かしていこうと考えています。

 

甲野 功

 

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