開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
去る7月12日(金)に「第11回あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」が開催されました。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(以下、「あはき柔整等広告検討会」と表記)はあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師等の広告に関して、広告ガイドラインを作成して施行していこうという厚生労働省の会議です。第1回は平成30年(2018年)5月10日に行われ、最新の第11回が開催されました。私は第11回あはき柔整等広告検討会を傍聴しました。その場で座長による本会が終了する旨の発言がされ、今後はあはき柔整等広告検討会が開催されないようです。厚生労働省から議事録が出ないとはっきりしたことは言えませんが、あの6年間お疲れ様でしたという口ぶりからすると今回で終了だと思われます。そうすると今回の会議資料で示された指針案がほぼそのまま広告ガイドラインになるものと予想されます。このガイドラインの内容をどうするのかずっと話し合ってきたわけです。
以下が広告適正化のための指導等に関する指針(案)です。
あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(案)
タイトルがとても長いので以降は便宜上、「あはき柔整広告適正化指導指針案」と表記します。内容も44ページにわたる詳細なものです。これを読み込むことで多くのことが読み取れます。そして私のように開業している術者には大きな影響を与えるものだと言えます。一部を切り取ると、“広告不可”な事項の例として「東洋医学療法」、「伝統鍼灸」、「漢方」、「整体」といったよく用いられている文言も広告してはいけないものとして挙げられています。これだけを見るとあまりにひどい規制だ、国家資格持ちを苦しめるだけだ、と批判の声が挙がることが予想できます。枝葉の言葉を細かくみるのも大事なのですが、なぜこのような指導指針が(現時点ではあくまで“案”として)示されているのか、それを考えることが重要だと考えています。このあはき柔整広告適正化指導指針案の流れを本文から読み解いていこうと思います。
非常に長くなりますのでご注意を。
最初に「Ⅰ.広告規制の趣旨」です。なぜこのような指針案をだすのか。まず通称“あはき法”と“柔整師法”というあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の身分を規定する法律が存在し、そこに広告内容を規制する文言があります。それは利用する患者さんの利便性を考慮したもので医師法に準じた内容です。ところがこれらの資格を持たない者が、我々にはあはき法・柔整師法の広告規制は関係ないと好き勝手広告をうち、手技による健康被害が消費者庁に相談されています。そこであはき柔整という有資格者のみならず無資格者の広告の在り方についても検討を行いました。
ここでとても重要な視点があり、無資格者まで広告を制限する方針が示されていることです。そして無資格者の定義が従来の認識とは変えたことです。まず医師、歯科医師らを除いて法律で開業が正式に認められている医療職種はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師くらいです。施術所を開設できるのです。この4資格は国家資格であります。国家資格を持たない“いわゆる整体師”や“揉み屋”を無資格者と呼んでいました。国家資格を持たないから無資格者。ところが国家資格を持っていれば構わないのだろうという解釈から理学療法士や作業療法士などの他の医療職種も“整体師”と称し開業するようになります。また柔道整復師免許しか持たない者があん摩マッサージ指圧師の領域であるマッサージ行為をしたり、鍼灸師が同じように整体と称して手技療法をしたりするという状況が常態化してきました。中には国土交通省認可の国家資格である普通自動車運転免許があるから“国家資格持ちの整体師だ”と称するとんちの様なやりくちも見受けられます。今回の指針案では
『
あはき又は柔整の免許を有していない者等(あはき又は柔整等の免許を有しているが当該免許に係る業以外の行為を提供している者も含み、以下「無資格者」という。)
』
とあります。
つまり
・あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の免許を有していない者(従来の無資格者)
・上記等の免許を有しているが該当免許の業務外の行為を行っている者(新たな無資格者の定義)
を「無資格者」と定義しています。このように各免許の業務(※具体的には業務独占にあたるものと推測されます)をその免許を持たない者が提供していればそれは無資格者であるということになります。これは既存のものとは異なり、範囲が広がっています。
続いて指針案の広告規制の考え方です。従来のものとは変わっていることを示しています。まず『利用者が適切に施術所を選択するために必要かつ正確な情報の提供を確保する観点からその運用の留意事項を定めることとした。』と記載されており、利用者の立場に立つものとします。術者側ではないと。そしてこれまで広告に該当してこなかったウェブサイト等の内容にも目を光らせて『関係団体等による自主的な取組を促すこととした。』と規制対象にすることを示しています。なにより
『
③無資格者による手技により発生した事故の情報が寄せられていることなどを踏まえ、その広告の適切な在り方について、本指針に定めることとした。
』
と無資格者の広告についてもはっきりと触れています。つまりあはき柔整だけが該当する広告規制ではないということ。更に関連する法律として「あはき法」、「柔整師法」だけでなく「医療法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称、医薬品医療機器等法・薬機法)」、「不当景品類及び不当表示防止法(通称、景品表示法)」、「不正競争防止法」、「健康増進法」といった法律を挙げてこれらの関連法令が広告規制の対象に含まれるとしています。なおあはき法、柔整師法における広告規制の文面は『何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない』とあり、“何人も”、つまり無資格者であろうと関係なくその法律は適応されるので無資格者の広告も同様に取り扱うべきだとしています。また
『
あはき・柔整に関する広告を行う者は、その責務として、利用者が広告内容を適切に理解し、適切な施術の選択に資するよう、客観的で正確な情報の伝達に努めなければならず、また、施術所が自らの責任により行う必要がある。
』
と、広告を行う者の責務を求めております。これはコンサルタントに指示されたから、みんながやっているから、といった言い訳を封じるためのものではないかと私は感じています。
更に行政らがきちんと取り締まりができるように
『
⑦違法性が疑われる広告等に対して、都道府県等が指導等の措置を適切に実施できるよう、どのようなものが広告違反として問題となるかを明らかにするため、広告に係る基本的な考え方を示すとともに、具体的な表示例や指導上の留意事項等を取りまとめた。
』
と記載し、指導時のマニュアルになる狙いが伺えます。
このように「Ⅰ.広告規制の趣旨」の部分だけでもあはき柔整の国家資格者には高い意識を持たせ、無資格者もこの指針に該当することをはっきりと明示していると思われます。
次の項目は「Ⅱ.広告規制の対象範囲」です。そもそも広告とは何か。広告の定義を示しています。広告とは次の①~③までの要件のいずれも満たす場合に該当するものとしています。①&②&③です。①or②or③ではないことが重要です。
①誘引性:施術者又は施術所が、自ら又は第三者をして利用者を自らの施術所に誘引する意図があること
②特定性:施術者の氏名又は施術所の名称が特定可能であること
③認知性:一般人が認知できる状態にあること
ホームページは敢えて検索するかURLを閲覧者が入れるかしないと閲覧できないので③認知性を満たさないと考えられるため、原則広告には該当しない考えです。ただ現在はその影響が大きいので後で詳しく条件を決めて広告扱いになるかどうかを示しています。口コミサイトに料金を支払うことで良い口コミ内容に操作すること(ステルスマーケティングに該当する)、対価を支払ってあたかも取材されたような記事を掲載させる(記事風広告)、タイアップ本やバイブル本のような掲載料を支払っている書籍といった、一見広告に見えないものも広告と扱われ規制対象になります。これは景品表示法の範疇にもなるものです。
広告における表現の扱いは細かく厳しく指導しています。『暗示的又は間接的な表現の扱い』として
・ディース鍼灸、レディースマッサージなど(女性特有の疾患を暗示させる表現であり認められない)
・病人が回復して元気になる姿のイラスト(病気を治す技能を保障するとの誤認を与える恐れがあり認められない)
・新聞が特集した施術方法の記事を引用するもの(施術方法を暗示させる表現であり認められない)
・雑誌や新聞で紹介された旨の記載(自らの施術所や勤務するあはき師、柔整師が新聞や雑誌等で紹介されたものは不可)
・施術の効果に関する専門家の談話を引用するもの(その内容が保障されたものと著しい誤認を利用者に与えるおそれがあるため認められない)
といった具体例を挙げています。これに関してはかなり厳しいと感じます。一方で無資格者にも同様に広告規制を課すと考えると、術者側からするとあまりに効果を誇大にかつ断定的に謳う広告表現があることも確かです。
続いて、あはき柔整に関する広告規制の対象者は誰か。これは施術者や院(施術所)はもちろんのこと、
・マスコミ
・広告代理店
・いわゆるインフルエンサー及びアフィリエイター
も規制対象に入るとしています。つまり第三者に広告してもらうこともその内容は規制対象になるということです。これは景品表示法でも同じです。インフルエンサーやマスコミ等に広告料を支払い宣伝してもらう場合、その内容は規制対象になりますし、インフルエンサーやマスコミの指導対象になるのです。広告媒体は看板、チラシ、ポスターといった以前からあるものはもちろん、リスティング広告、バナー広告、動画広告、SNS広告といったネット上のものも入ります。反対に通常、広告と見なされないものは
・学術論文、学術発表等(広告の定義①誘引性を満たさない。ただし、学術論文等を装い利用者を増やすような行為は広告となる。)
・新聞や雑誌等の記事(上と同様①誘引性を満たさない。もちろん費用を支払って、記事掲載を依頼する記事広告は対象となる。)
・利用者等が自ら掲載する体験談、手記等(依頼に基づくもの、謝礼を受けている又はその約束がある場合には広告となる。また利用者が施術所の利益のためと認められる場合にも広告となる。)
・施術所内で掲示又は配布するパンフレット等(既に施術所に入っているため①誘因性がない。)
・利用者からの申し出に応じて送付するパンフレットやEメール(既に認知しているので③認知性を満たさない)と具体例を挙げています。既に利用している状態であれば広告の定義である①誘因性は当てはまらず、利用した上で更に広告媒体を求める場合は認知した上なので③認知性を満たさないというわけです。第三者が勝手に宣伝することは表現の自由になるのでそれを広告規制することは難しいでしょう。
続いて「Ⅲ.広告可能な事項について」です。大前提として、あはき法第7条第1項と柔整師法第24条第1項で規定されている内容です。それ以外に「国家資格保有」が記載可能です。もちろんあはき柔整に限ったもので
・あん摩マッサージ指圧師(国家資格保有)
・はり師(国家資格保有)
・きゅう師(国家資格保有)
・柔道整復師(国家資格保有)
というもの。他の国家資格を保有していて単に「国家資格あります」は認められないことでしょう。
広告不可な事項の例として
・東洋医学療法、伝統鍼灸、漢方、整体、カイロ等といった、あはき・柔整以外の業務の種類や、これらの民間資格を保有している旨等
・外国におけるあん摩マッサージ指圧師等類似資格を保有又は経歴を有している旨
が挙げられております。「東洋医学療法」、「伝統鍼灸」も不可というのは解せないのですが最近は非あはき師でも東洋医学を標榜するケースがありますし、流派を示すこと(施術方法)は広告不可と判断しているので伝統鍼灸もダメなのでしょう。具体的に長生術、浪越指圧、経絡治療、太極療法といった固有の技術名称も不可になるのでしょうか。これは要確認です。また海外のライセンスを持っていることで優位性を示すというのも不可だと考えられます。海外では国家資格だが日本ではそうではないものなど。
施術所の名称、すなわち施設の屋号についてです。これはかなりあはき柔整等広告検討会で話し合われました。なお柔道整復師の整骨院は今回のガイドラインには掲載されない方向になったので(第11回の会議内容より)扱いは不明です。業態+治療院というスタイルは可。接骨院、ほねつぎも可。
ここで屋号として不可の例としてガイドラインに記載されているもので気になるものを挙げます。
・○○診療所、○○治療所、○○治療室、○○療院、○○はり科療院、○○(施術業態を含まない)治療院、メディカル、クリニック、リハビリ(医療機関と紛らわしいもの)
・カイロプラクティック、整体、リラックス、サポート(あはき柔整以外の業態と紛らわしいもの)
・○○鍼灸接骨院、○○マッサージ接骨院(提供する施術業態が混ざっているもの)
・○○女性専門療院、○○レディース、スポーツ、アスリート(対象者を限定するもの)
・東洋医学、中国鍼灸、美容鍼灸、不妊鍼灸、漢方(施術内容・技能・方法を含んでいるもの)
・姿勢改善、小顔矯正、骨盤矯正(効能を含んでいる名称、優良な施術所と思わせるもの)
・メディカル○○鍼灸院、サロン○○接骨院(広告不可とされている名称と広告可能とされている名称を併記しているもの)
・○○堂、○○館、サロン(その他、施術所と分かりにくいもの)
いかかでしょうか。これだけ具体例を挙げているのです。細かいところですが「○○鍼灸接骨院」は不可ですが「○○鍼灸院・接骨院」は可なのです。これは鍼灸と柔整では対象とする疾患が慢性と急性であるとし、混ぜるのはいけないからと(検討会構成員が)説明しています。併設しているという意味で間に・を入れれば可能だというのです。また「○○鍼灸整体院」というのは複数の意味で屋号が不可になることでしょう。規制対象になる施術所は結構あるのではないでしょうか。
他に細かいところでいうと診療、診察、休診日といった言葉は広告不可。病院等の医療機関と間違えるような表現は禁止ということです。主に接骨院が対象になるでしょうが「各種保険取扱い」、「労災保険取扱い」、「自賠責保険取扱い」、「交通事故取扱い」といった用語も不可。医療保険療養費支給申請が可能であってもそれと直接の関係がないと考えられるからと説明されています。複雑なのが『芸能人や著名人が、施術所の名称その他の広告可能な事項について説明することは、差し支えないが、実際に当該施術所の利用者である場合には、芸能人等が利用者である旨は、広告可能な事項ではなく、あはき・柔整に関する広告として認められないものとして扱うこと。』という点。例えば芸能人がテレビ番組で施術所を紹介するのは構わないが、その芸能人がそこの施術所を利用している場合は広告不可になるということ。これは有名人(芸能人、インフルエンサー等)を利用させて宣伝してもらう手法を認めないということではないでしょうか。
「Ⅳ.禁止される広告について」でははっきりと禁止する項目を述べています。まずあはき法、柔整師法で禁止されている広告内容はもちろん不可です。具体例で挙げていたのが
・施術者の技能、施術方法
(例)慢性病の根本治療、高い技術、唯一の技術、○○流指圧、痛くない鍼、気持ちの良いお灸 等
・施術者の経歴
(例)○○療法の第一人者である○○先生に師事、○○学会会員、○○(有名人)のトレーナー
です。前段の施術方法では流派が書けないという判断になるのでしょうか。既に述べた浪越指圧、長生術、太極療法といった具体的な流派は広告不可と判断されるのでしょうか。また後段の○○学会会員というものも術者の経歴です。それを広告不可としている点は注目です。
あはき法、柔整師法以外の他法令でも禁止されている広告は不可です。既に触れたように医療法、医薬品医療機器等法、健康増進法、景品表示法、不正競争防止法が示す内容、関連する広告ガイドラインで不可とする内容です。広告全般で行ってはいけない虚偽広告、誇大広告は認められません。誇大広告の定義として本指針案では『事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告を意味するものである。「人を誤認させる」とは、常識的に一般人が広告内容から認識する「印象」や「期待感」と実際の内容に相違があると判断されることを意味し、誤認することを証明したり、実際に誤認したという結果までは必要としない。』と説明しています。気になるのが最後の部分で利用者が誤認したと証明する、あるいは実際に誤認したという結果を必要としないということ。常識的な判断をするということなのでどこまでを「誇大広告」とするのかは難しいのではないかと思われます。また他と比べて優秀であることを広告する「比較優良広告」も不可です。優秀であることが事実であってもその表現は広告可能事項には該当しないとしています。そして当然ですが、公序良俗に反する内容は不可。
また品位を損ねる内容の広告も不可でその具体例が以下の文言として挙げられています。
・保険適用でとってもお得に施術が受けられます!!
・交通事故無料
・来院はムダ!いつでも出張施術します!
・今だけ駐車料金2時間無料キャンペーン
上記例が品位を損ねる内容であると厚生労働省は判断しているわけです。
ここまで多岐にわたり細かい広告規制があると感じられます。実際に広告ガイドラインが発令されて効果があるのかという疑問がわくのではないでしょうか。「Ⅴ.相談・指導等の方法について」では具体的な施策が書かれています。国家資格者であるあはき柔整における広告の指導については施術所開設届受付所管部署が行います。
ここでの「指導」とは、広告の違法性を指摘し是正に導くことであり結果を評価するまでをいい、指示するのみであったり指導の時点で排除を目的としたりしてはならない、としています。また苦情相談窓口の明確化を求めており、利用者からの苦情を受けるための担当係を決め相談窓口を明確化するように指示しています。相談連絡先を地域住民に周知しておくこと。消費者行政機関等とも連携して速やかに必要な措置を講じられるように連携体制を確立するようお願いしています。
広告指導の体制及び手順も細かく指導しています。もしも施術所開設等届出受付担当部署等で判断できない内容があった場合は、職員から厚生労働省医政局医事課あてに電子メール等によって照会します。行政指導に応じない悪質な場合は、刑事訴訟法の規定により司法警察員に対して告発を行うことを検討するように指導しています。告発の対象者は個人、施術所の開設者、広告代理店・雑誌社、・新聞社・放送局・公共施設・宿泊施設・商業施設等の場合はその代表者、法人自体又は当該広告違反の主導的な立場にあった者等を、事例に応じて対象とします。なお刑事告発等を実施した際には、必要に応じて事例を公表して注意喚起を行うよう求めています。
「Ⅵ.インターネット上のウェブサイト等について」です。ウェブサイトは広告の定義①誘引性②特定性③認知性の3つ全てを含まないので広告と原則みなされません。ただ①~③を全て満たす内容は広告とみなされます。バナー広告等も同様で①~③を満たせば広告となります。それは料金を支払ったりランキングの決定が恣意的であったりするものです。SNSの書き込みも同様のものとして①~③を全て満たすものと判断されれば広告と判断します。ウェブサイト等に掲載すべきでない事項として以下の項目を挙げています。
・内容が虚偽にわたる、又は客観的事実であることを証明することができないもの(いわゆるビフォーアフター、最上級表現を含む)
・他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの(口コミサイト1位、有名人が利用など)
・内容が誇大なもの又は施術所等にとって都合が良い情報等の過度な強調
・早急な受療を過度にあおる表現又は費用の過度な強調
・科学的な根拠が乏しい情報に基づき、利用者の不安を過度にあおるなどして、施術所等への受療を不当に誘導するもの
・公序良俗に反するもの
・品位を損ねる内容のもの
・あはき、柔整師法以外の法令で禁止されるもの
ウェブサイトだからこれはダメというものではなく他の媒体と同じです。科学的根拠が乏しい、不安を過度にあおるという点は新型コロナ以降、注目されていることではないかと思われます。
最後は「Ⅶ.無資格者の行為に関する広告について」です。個人的にこの章を設けたことは画期的であると思います。長いですが本指針案の「基本的な考え方」の項目を抜粋します。
『
これまで、消費者庁に対し、国家資格を有していない者による手技で発生した事故の情報が多く寄せられてきた。
平成24年8月2日に独立行政法人国民生活センターが公表した資料では、施術所を利用したきっかけ等について、家族や知人の紹介が最も多かったが、情報誌や雑誌広告、チラシ等を見て選択したという相談も多く、また、当該広告には、適応症の広告や、身体症状・疾病に効果があると受け取られるような広告など消費者に誤認や過度な期待を与えるおそれがある広告や、あん摩マッサージ指圧以外の施術所において、「マッサージ」という語句を用いた広告等がみられ、消費者に誤認を与えるおそれがあると指摘されている。
現在においても、無資格者の行為に係る不適切広告等の情報等が寄せられていることから、あはき、柔整の他に無資格者の行為の広告の適切な在り方について、本指針に定めることとしたものである。
具体的には、利用者にとって有用な情報源の一つとなっている広告の性格等も踏まえつつ、利用者保護の観点から、不当に誘引する虚偽又は誇大な内容等の広告に掲載すべきでない事項を示すこととした。
消費者庁に事故の情報が多数寄せられている現状からも、本指針を踏まえ、事業所等においては、営利を目的として、広告により利用者を不当に誘引することは厳に慎むべきであり、利用者保護の観点も踏まえ、広告に掲載されている内容を利用者が適切に理解し、あはき、柔整又は無資格者の行為を選択できるよう、客観的で正確な情報提供に努めるべきである。
』
平成24年すなわち2012年から問題視されてきたことを今回の広告ガイドラインを期に、広告規制という手段で向き合うことが伺えます。この件についてはまた別の機会に触れようと思います。
ただ本指針案では『関係団体等の自主的な取組を促すものである』としています。広告に掲載すべきでない事項として具体的に挙げた項目が以下の通り。
・内容が虚偽にわたる、又は客観的事実であることを証明することができないもの
・他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの
・早急なサービスの利用を過度にあおる表現
・費用の過度な強調
・科学的な根拠が乏しい情報に基づき、利用者の不安を過度にあおるなどして、事業所等へのサービス利用を不当に誘導するもの
・あはき師法、柔整師法等に抵触する内容を含むもの
・公序良俗に反するもの
・関連法令等で禁止されるもの
無資格者だからという点に注目すると「早急なサービスの利用を過度にあおる表現」、「費用の過度な強調」、「科学的な根拠が乏しい情報に基づき、利用者の不安を過度にあおるなどして、事業所等へのサービス利用を不当に誘導するもの」があります。あはき柔整でもこのようなやり方を用いた広告が無いとは言いませんが、特に無資格者(この場合は医療系国家資格を持っていない者というのがより当てはまると考えられる)に多い広告内容だとしていると思われます。そして「あはき師法、柔整師法等に抵触する内容を含むもの」での解説にはこのような説明があります。
『また、「腰痛」、「膝の痛み」等の痛み症状に対する施術、慢性の「肩こり・疲労」等の常態的な症状に対する施術の表現は、特定の疾患に対する施術或いは疾患の原因となる可能性を含んでいる症状に対する施術に当たる可能性が高いことから、広告及びウェブサイト等に表現すべきでないものである。』
痛み症状(腰痛、膝痛など)と状態的症状(慢性の肩凝り・疲労)に対する施術について広告不可としているのです。個人的にはあはき法・柔整師法を大きく解釈したと思うもので、ここまではっきりと不可と文章にしたことに驚きました。そもそものことですが、あはき法・柔整師法以外の関連法令(具体的には景品表示法や不正競争防止法など)の影響は当然受けることです。無資格者の行為は国家資格が必要なあはき柔整の業務とは全く異なることから、これらを行っていると利用者に誤認を与えるような表示は不適切である、と指針案では解説しています。あたかもあはき柔整の資格を持っているかのように広告すること自体を不可とするということが、全体を通して感じられます。
以上があはき柔整広告適正化指導指針案をざっと見てきたものです。細かく注意する箇所はまだまだあります。この指針案によってあはき柔整等広告ガイドラインが完成するはずです。ガイドラインが完成したらまたきちんとその内容をチェックしますが、大きな変更はないと予想しています。施行後もきちんと実行するように連絡システムを構築し、指導方法や相談方法にも具体的に言及しています。かなり進んだ内容だと私は考えています。疑問点や納得しかねる箇所もあります。いわゆる“真実広告”や“利用者の知る権利”、“利用者が知りたい情報を明示する義務”といった矛盾を感じるものもあります。施行されたらどうなっていくのかを見守りつつ自分の所も対応を考えていきます。
甲野 功
コメントをお書きください