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~按摩指圧と灸の組み合わせ~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 按摩指圧とお灸の組み合わせ
按摩指圧とお灸の組み合わせ

 

 

最近、臨床で新しい取り組みをしています。それが按摩指圧と灸を組み合わせることです。

 

当院では『鍼灸+按摩指圧コース』というものを用意しています。これはその名称通りで按摩指圧徒手療法)と鍼灸器具を用いた療法)を組み合わせたものです。ベースとなっているやり方です。私はあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師の資格を取得していて按摩指圧、一般の人が“マッサージ”と認識しているもの、と鍼灸を両方行うことができます。鍼灸単発にすることもできますが、指で刺激を与える按摩、指圧を原則用いるようにしています。私のベースはあん摩マッサージ指圧師であるという自負があるからです。これが何が良いかというと按摩、指圧を先に行うことで患者さんの体の状態を指の感覚で確認する、話を聞いて状況を知るといったことが先にできること。触診、問診を按摩指圧の時間にやってしまうということです。初診時ではきちんと問診、触診、理学検査等をするのですが、何度も来ている方だとさっさとやってほしいという感情が強くなってきます。何か変化があれば患者さん自ら最初に言いますので。按摩指圧によって患者さんの身体を緩めて、気持ちをリラックスさせて、情報を得ていく。そして更に刺激を加える部分に鍼をするというのが私の基本スタイルです。メンタル面、不定愁訴、婦人科系の問題などだと経絡治療というスタイルをとりますが。

 

このように按摩指圧と鍼を組み合わせるということを従来は多用してきました。私も日常的に鍼灸と一括りにしますが、厳密は鍼術と灸術は別です。国家資格としても「はり師」と「きゅう師」に分かれているように。私の場合、多くは鍼灸と言いながら鍼だけをしています。周囲の同業者をみると鍼の方が多くて灸をする術者は比較的少ないです。私も卒業後の修業した場所がそういう環境だったせいで灸よりも鍼を重要視してきました。灸は長生灸、達磨灸といった既製品を経穴(いわゆるツボ)に置いて火をつけるやり方ばかり。元々の艾(もぐさ。蓬の葉を乾燥させて精製したもの。)を捻って皮膚に置いて線香で点火させる直接灸はやってきませんでした。艾を捻る直接灸の技術がほとんどありませんでした。

直接灸ができない。このことが何年も懸念でして、今年は灸術を高めることをテーマに掲げました。直接灸の練習をして臨床でやる機会を増やしていく。そう決めて練習を重ねてきました。最近、直接灸を臨床で行う機会が増えてきたのです。これまでほとんどしてこなかったのですが、受けみたらこれはいいと気に入る患者さんも出てきました。鍼ではなく直接灸をする。その違いは何か。どのような状況のときに選択するのか。今一度知識を増やすように勉強もしています。

 

そして今は按摩指圧と灸をどのように組み合わせてやっていくかについて試行錯誤しているところです。既に述べたように灸には直接灸、長生灸と2種類を主に組み合わせています。長生灸はこれまでもずっと使用してきました。どこに置くか、何個置くかくらいしか考えることがありません。メーカーが作った製品ですから製品のムラはないと判断しています。ところが艾を捻る直接灸には透熱灸知熱灸という熱をどれくらい与えるかで違いがあります。熱刺激量を細かく技術によってコントロールできるのです。更に紫雲膏という軟膏を皮膚に塗った上で艾を置くのと、灸点紙という熱を緩和する器材を介して艾を置くのと、そのまま皮膚へ直に艾を置くのかでも違ってきます。また何壮(艾の数は壮という単位で数える)するのかも。当然1壮するより10壮した方が熱刺激量は上がります。

 

直接灸は選択肢が一気に増えるのですが、そこに間接灸をどう組み合わせるのか。間接灸はだいたい温かいなと感じるものでその時間は長めです。対して直接灸は艾が一気に燃えるので瞬間的な熱です。場合によっては熱い!痛い!くらいの刺激になります。これは体に刺す毫鍼と同じで1か所の刺激量が大きくなります。やり方次第で毫鍼以上の刺激量になります。間接灸と直接灸の配分も考えるところです。直接灸だけピンポイントで行うのか。一度にたくさんの経穴に持続的な熱を与えられる長生灸をするのか。併用するのか片方だけにするのか。灸だけでもどう組み合わせるかを試行錯誤しています。

そこに按摩指圧を組み合わせる。正確には按摩指圧で身体の状況を把握してどのように灸をしていくのかという感覚です。鍼ならばこれまでの経験で予測して鍼の刺激量を踏まえて選択できるのですが、灸はまだ掴み切れていいません。按摩と灸(紫雲膏灸がメイン)というやり方は有山優子先生が行っています。押圧刺激と熱刺激を組み合わせたネパール棒灸という技術もあります。直接灸と鍼を用いるのは飯塚聡先生や滝沢佑三絵先生がいます。私が面識がある同業者の技術を受けて、参考にしながら自分自身にとって最適な塩梅を考えているところです。灸術に注目すればこれまでほとんど用いてこなかった棒灸、箱灸といったものもあるわけです。今年のテーマである灸術を高めるだけでも様々な展望があります。そこに従来のベースとなっている按摩指圧とどう組み合わせていくのか。組み合わせが非常に多いので果てしない感じがします。

 

灸術が高まることで技術の引き出しが一気に増えます。それくらい疎かにしてきたから。まだまだ伸びしろがあると前向きに考えて自分自身にとって、何より患者さんにとって、最適な技術体系を構築したいと考えています。

 

甲野 功

 

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