開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
昨年、静岡県浜松に行きました。母校の東京呉竹医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科の同窓会でした。静岡県というと神奈川県の隣でさほど遠い印象はありませんでした。ところがいざ向かってみると想像以上に時間がかかりました。理由の一つは浜松駅に東海道新幹線ののぞみが停車しないこと。こだま、ひかりしか停車しません。普段西方面の名古屋や京都まではのぞみを利用します。こだま、ひかりはのぞみに比べると本数が少ない上にのぞみの通過を待つため途中駅で停車することがあります。普段は新横浜から名古屋まで一気に通過してしまうのです。のぞみは東京駅から数分に1本のペースで出ていますがこだま、ひかりはそうはいきません。
もう一つ遠いと感じた原因は熱海が近いからです。熱海は神奈川県小田原の少し先。静岡県の中でも最も東京寄りです。浜松も熱海も同じ静岡県なので静岡県は近いという先入観があったのです。落ち着いて地図をみれば静岡県はかなり大きい。東海道新幹線は太平洋側を延々と進んでいくのです。小田原はよく行くのでそこから近い熱海はとても身近に感じていました。実際にこれまで何度も熱海は訪れています。
その熱海ですが前々から気になっていた神社がありました。パワースポットで知られている來宮神社(来宮神社)です。
正確には旧字の來宮ですが駅ではJR伊東線来宮駅が最寄り駅になります。熱海駅からバス、あるいは徒歩でもいけなくありません。私が訪れたときは、行きは熱海駅からバス、帰りは徒歩で熱海駅まで戻りました。
來宮神社を知ったのはいつかみたテレビ番組でした。大きな巨木があり、それが霊験あらたかだという。熱海は何度も行っているのですがそのような場所があるとは知らず。画面越しにみる景色が不思議に思いました。
創建時期は不詳で、木の根を神体としたため「木の宮」と称した。大きな木、岩、滝など巨大な自然創造物に神々が宿るというキノミヤ信仰です。江戸時代までは木宮明神と称していました。伊豆地方にはキノミヤ神社という社が十数か所あるといいます。この來宮神社は全国44社のキノミヤ神社の総社にあたります。古くから来宮大明神として来福・縁起の神として信仰されてきました。平安初期の征夷大将軍坂上田村麻呂は戦の勝利を神前で祈願し、分霊を東北地方はじめ各地に鎮座させたという伝承もあります。キノミヤ信仰の通り、來宮神社境内にある御神木(ヒモロ木)「大楠」は樹齢2000年を超え、平成4年(1992年)度の調査で全国2位の巨樹の認定を受ける大きさです。大楠以外も自然豊かな境内になっています。
御祭神は三柱で日本武尊(やまとたけるのみこと)、五十猛命(いたけるのみこと)、大己貴命(おおなもちのみこと)です。日本武尊は非常に有名です。東征の際に住民を労い産業を奨励した功績と武勲をたたえ祭られます。五十猛命は素盞鳴尊(すさのおのみこと)の子で、朝鮮に渡って樹種を日本に持ち帰った神。大己貴命も同じく素盞鳴命の子で大国主命(おおくにぬしのみこと)とも言います。自然崇拝とともに国津神系の神社だといえます。
来宮駅近くに鳥居があります。境内の左側を糸川が流れており緑と水に囲まれたという表現がぴったりです。鳥居の右側には「鳥居の結びの葉」というショップがありソフトクリームやお酒を楽しめます。手前には「第二大楠」があります。大楠が御神木なのですが2本あるのです。第二大楠は樹齢1300年超とされ約300年前に落雷を受けて幹の中身がほとんどなく、張りぼてのような状態になっています。黒く焦げた跡が確認できます。しかし第二大楠は今も生きていて青々とした葉をたくわえています。そのそばには末社として三峯神社があります。埼玉県にある三峰神社はとても有名で日本武尊が創建したと伝わります。大正期に祭られるようになりました。黒い鳥居が珍しいです。
参道の左側には末社七社が並びます。昭和7年(1932年)に焼失するも令和4年(2022年)に復興しました。小童社、秋葉社、神武天皇社、八坂神社、雷電社、床浦社、柿本社が並びます。末社七社の前には鳥居のトンネル(千本鳥居)があり稲荷社があります。京都伏見稲荷大社より勧請したものです。その先、階段を上ると本殿に出ます。
本殿前の広場、左手には参集殿があります。お守りや神札の授与所やオープンカフェ「茶寮報鼓」が入っています。屋上はスタンドカフェ「楠の香」があります。本殿奥には「大楠 五色の杜」というイベントスペースがあり、また「茶寮 五色の杜」もあります。五色は東洋思想の五行式体表に基づいているので鍼灸師としては注目してしまいます。このように鳥居横も加えてカフェ施設が充実しているのが來宮神社の特徴です。熱海エリアが衰退して観光客が激減した際に、インスタ映えを狙って2010年代に施設を新しくしたといいます。それにより2017年度の参拝者は2008年度の4倍以上に増えました。歴史と伝統に胡坐をかかず新しい施策をして反映する姿勢が見られます。
本殿前広場の右側には弁天岩戸と弁財天があります。弁天岩の前には池がありとぐろを巻いた蛇の像があります。階段で上った先に弁財天の社があり境内を見下ろすことができます。
本殿向かって左奥に御神木である天然記念物の大楠(第一大楠)があります。その姿は圧倒的。受精2100年以上とされ樹高約26m、幹周約24mの大楠で本州一の大きさです。戦前の昭和8年(1933年)に国の天然記念物に指定されました。周囲をまわって歩くことができて一周すると寿命が1年延びる、願い事が叶うという伝説があります。私はこれほど太い木を見たことがなく、神秘的でした。なおかつて來宮神社境内には7本の大楠があったのですが、安政年間(1855〜60年)の頃、漁業権を巡る争議が起こり訴訟費等捻出のために5本が伐採されました。残った2本が第一大楠と第二大楠となります。階段を上ると高い位置から第一大楠をみることができます。
1000年以上の歴史があり、樹齢2000年を超える巨木がある來宮神社。歴史がある一方、カフェやライトアップ、イベントスペースなど現代風に整えていることが伺えます。熱海観光の一つとして来訪者アップにつなげている様子。境内の至る所に工夫があることがわかります。想像以上に面白い、素直に楽しめる神社でした。熱海を守りながらも熱海に人を呼び込む神社です。
甲野 功
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