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~オリンピック柔道からみる鍼灸業界~

パリオリンピック公式サイト 柔道より
パリオリンピック公式サイト 柔道より

 

 

連日日本選手団の活躍が報じられているパリオリンピック。私はかなりオリンピックが好きで毎回注目しています。いわゆるにわかファンでオリンピックになると普段見ていない種目をみるという感じです。そこでこのような競技があるのか、こんな国があるのか、今日本選手はこれだけ世界に通用するのかということを確認して学んでいます。

 

特に注目している競技が柔道とレスリングです。中学校のときに好きになったプロレス。大学で学生競技ダンスと出会うまでは最も熱中したものだと思います。プロレスラーになる者は相撲、レスリング、柔道経験者が多いです。特に相撲は日本プロレス界の祖、力道山が大相撲出身であるため角界からの転身が多かったです。そしてプロレスリングということでアマチュアレスリングからの転向組も多くなります。更に柔道。日本人だけでなく外国人でも柔道出身はいます。プロレスから派生してオリンピック競技である柔道とレスリングに注目するようになったのです。オリンピアンからプロレスへの転向はかつてよくありましたので。

更に30歳になる年に私は柔道整復師になるために現東京呉竹医療専門学校柔道整復科に入学します。柔道整復師になるためには専門学校で柔道実技を行わないといけません。そのため30歳手前で柔道着を購入して柔道の授業を受けることになりました。ちなみに高校のとき、私は山岳部に所属していて2年時は部長でした。クラスに柔道部の部長、剣道部の部長がいて同じ部長ということで3人は仲良かったです。そのとき柔道場に遊びに行き柔道を少し習ったものでした。そのような過去があるので少々柔道の知識と経験があります。

 

20年以上オリンピック柔道を観戦していると色々な変遷を知ります。今回のパリオリンピックでは、柔道に限りませんが、多くの疑惑の審判が挙げられています。SNSでは、あれは誤審だ、と叩かれるものもあります。確かにそれはないだろうというジャッジがあったと思います。ただ長くオリンピック柔道を見ていると過去にも山のようにおかしなものはありました。ビデオ判定導入になる原因となった返し技を相手の有効にしたもの。反対に審判が優勢勝ちを宣告したのにビデオ判定のジュリーにより覆って負けになったもの。もうオリンピック柔道はこういうものだという認識に私はなっていて、もちろん日本選手団も同じだと思います。文句なしの勝ち方をしないとやられるという。

そしてオリンピック柔道はどんどん変化していきます。カラー柔道着が導入され、ルールが変わっていく。昔は効果、有効、技あり、一本と4種類ありました。旗判定といって時間切れだと試合を見ていた審判がどちらが優勢か判断して勝敗を決めていました。相手が寝て亀(うつ伏せになって体を縮こまって耐える防御姿勢)になるとすぐに「待て」がかかり仕切り直しになるので寝技の攻防がほとんどなかった。今回のオリンピックでもあれはタックルだろう、レスリングではないかという批判の声がありましたが、かつての柔道もレスリング化した時代があります。元々柔道には双手刈、朽木倒、掬投といった足を掴んで投げる技があります。ある時期に海外選手がそれらの足を取る技を多用し、組み合わずそれこそレスリングのタックルをするように下半身に組み付いて倒す柔道が流行しました。現在のオリンピック柔道では立ち技で足を触れるのは禁止です。寝技も今はすぐに「待て」がかかることがなく攻防させるようにしています。寝技自体が非常に進化していて柔術やグラップリングの技術が導入されていることが伺えます。

 

さて柔道には2つルールがあるといいます。講道館ルール国際ルール。元々嘉納治五郎氏により実践格闘術だった柔術から、合気道などのエッセンスを取り入れて、武道として創られたのが柔道です。格闘術から武道へ。根幹となるベースが武道であります。ちなみに柔術から柔道に移行することをよしとしなかった嘉納治五郎氏の高弟の一人は、反発し海外に渡りブラジルで柔術を普及させます。その結果、平成の世にグレイシー柔術ブームが起こり柔術は世界的に脚光を浴びることになります。日本体育の父とも称される嘉納治五郎氏は柔道普及に尽力します。それは日本国内のみならず海外へも。日本で生まれた柔道は世界中に普及して1964年の東京オリンピックから正式種目に採用されるほど。その過程で柔道は日本の手から離れてJUDOになっていきます。現在は柔道の競技人口はフランスの方が日本よりも数倍あると言われています。国際的なルール改訂はヨーロッパが中心になっているといいます。白の柔道着だけでやってきた日本は、青のカラー柔道着導入を反対しましたが止めることはできませんでした。オリンピックはスポーツの祭典であり、武道の場ではありません。スポーツとはルールの制約を楽しむもの、と表現したのは元プロレスラーの前田日明氏でした。ルールがあればそれに違反しない限り勝つために何でもするというのが根底にあります。ポイント判定で勝負が決するなら効果、有効をこつこつ溜めて投げられないように工夫して判定勝ちを狙うポイント柔道があり。組むと投げられるなら組まないで足を取って押し倒すタックル柔道があり。そのような変遷を経て、今現在の国際ルールができています。世界と戦うために日本の柔道家は国際ルールに対応していかないとオリンピックでメダルを取ることはできません。講道館はこうだから、嘉納治五郎先生の願いはこうだから、武道であるのだから、といった理屈が通用しないのです。

 

そのような事情を考えながら今回のパリオリンピックの柔道競技をみていました。そうすると鍼灸業界と似ているなと考えました。中国で生まれて日本に伝わった鍼灸。日本独自に発展していき、いわゆる日本の鍼灸が育まれました。一応、日本・中国・韓国が鍼灸の先進国とされています。中国は国をあげて鍼灸を世界へ普及させる活動をしています。経絡治療らのいわゆる日本鍼灸と近代中国による中医学。そして現代医療をベースにした(伝統的な東洋医学、東洋思想を排除したような)鍼灸。それが入り混じって海外、そして日本国内にも普及してきたと言えます。アメリカのニクソン大統領が中国を訪問し鍼麻酔をみて強い衝撃を受けたという話があります。アフリカの結核患者を救いたいと考えた2名のイギリス人は日本のお灸に関する論文からモクサアフリカという支援団体を設立します。数十年前より世界に鍼灸が、東洋医学が、普及しているのは確かです。国内に目を向けても近年はNHKらで東洋医学、鍼灸が特集される機会が増えていて20年前より認知されてきている実感があります。

 

しかしメジャーになり関わる人数が多くなれば、手から離れていくのは世の常。武道の柔道が国際的スポーツのJUDOになっていくように。日本で育まれたいわゆる日本鍼灸。しかし現在の鍼灸専門学校で学ぶ東洋医学概論の教科書は中医学ベース。私が学生のときは経絡治療(日本の鍼灸理論)と中医学の折衷でしたが。世界基準は中医学になりつつあります。歴史的には、鍼灸が禁止された期間がある中国は技術・知識が衰退し日本に学んだという事実があります。しかし中国は鍼灸は漢方を含めて国の伝統医療としてしっかりとアピールしていくことにします。ユネスコ世界文化遺産に登録しました。日本では明治の医政発令、戦後のGHQ指導と鍼灸は消されるピンチがありました。鍼灸よりも西洋医学・現代医学を善しとし、鍼灸は禁止して無くそうという。その時代の変化に立ち向かった先人たちのおかげで今も日本に鍼灸が残っています。

 

世界標準になれば自分のところだけで済むことにはならない。

柔道は講道館ルールをしたければその中でやるしかない。武道としての在り方を守りたければオリンピック正式種目を目指さなければいいわけです。剣道や合気道のように。しかし柔道はオリンピック種目となり世界中で競技されるスポーツになる道を選びました。世界中に普及した代わりに日本固有の武道である柔道からは離れた国際スポーツのJUDOに変遷していくことを止められませんでした。その最たるものがオリンピックの柔道競技と言えるでしょう。

同じように鍼灸が世界に広く認知されるようになると多くの人間が関わることになります。臨床、研究が進めば検証され客観的評価されることになります。そうなると科学的な批判も受けることになるでしょうし、合理性が無いと判断されることも出てくると思います。昔からそうだったから、大家の先生がそうおっしゃっていたから、古典ではそう判断しているから、などの理屈が通用しない。客観性が確保できないことは排除していこうという動きが出てくる。日本の鍼灸師はこうするのが常識だか、世界はもうそんなことはしない、信じない。そのような状況が生まれるのではないかとオリンピック柔道を見ていて思いました。

 

世界標準、世界の価値観が嫌なら世界に出ていかなければいい。柔道ならば国内で講道館のルールで大会を開いて国際大会に出ていかなければいい。そういうことです。同じように鍼灸も自分達のやり方を守りたい(批判されたくない)のであれば世間や世界に浸透することなくローカルなところで身内だけでやっていけばいいわけです。広がっていく、メジャーになっていく過程で変化を求められることがあり、それに対応していかないといけないことが自ずとあるのだと感じます。それでも柔道選手は国際大会に出て次回オリンピックでメダルをとるために日々努力を重ねるのでしょう。状況に対応しながら。鍼灸ももっとメジャーな存在になりたいのであれば対応しなければならなくなるのであろうとオリンピック柔道を観戦して思いました。

 

甲野 功

 

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