開院時間

平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)

: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)

 

休み:日曜祝日

電話:070-6529-3668

mail:kouno.teate@gmail.com

住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

~未知のマッサージを体験~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 露木美那先生と
露木美那先生と

 

 

私は現在4つの国家資格を取得しております。全て厚生労働省管轄の医療系国家資格で

あん摩マッサージ指圧師

はり師

きゅう師

柔道整復師

の4つです。加えて鍼灸マッサージ専門学校教員免許(厚生労働省)を取得しています。これらの中で私が最初に、そして一番取りたかったのが「あん摩マッサージ指圧師」免許でした。もともと手技療法の国家資格が欲しくて20年前に旧東京医療専門学校鍼灸マッサージ科に進学したのです。こういっては角が立ちますが鍼灸はそのついでという感じでした。それだけ徒手療法に愛着と情熱があり、今でもそれは変わっていません。

 

あん摩マッサージ指圧師という資格名は、按摩(あん摩)・マッサージ(massage)・指圧の3つの技術を並べたものです。一般の人には違いが分からないと思いますが発祥の国も技術も歴史も異なります。そして「あん摩マッサージ指圧師」と言いながら3つの技術を全て臨床で使っている術者はあまりいません。按摩だけ。指圧だけ。massageだけという。あるいは按摩と指圧はするけれどmassageはしないとか。私は「あん摩マッサージ指圧師」という名の国家資格を持つ以上、3つ全てできて常に臨床で使える状態にしておきたいと考えています。マッサージとmassageと表記するのは、あん摩マッサージ指圧師のいうマッサージとは皮膚に直接触って行う技術であり、世間一般の人がだいたい想像するマッサージは按摩と指圧のことになります。按摩・指圧は薄い衣服の上から行います。細かい技術や定義はさておき、あん摩マッサージ指圧師のいうマッサージはオイルなどの滑剤を用いて行うものなので敢えてmassageと英語表記にしてみました。なぜかというとmassageはヨーロッパから日本に入ってきた技術だからです。ちなみに按摩は中国、指圧は日本が発祥です(※指圧は法律が成立する過程で他の技術も取り入れて相称として指圧としている経緯があるので厳密な話をすると日本だけとは言えないのですが、複雑にしないよう日本としておきます)。このような事情があることを踏まえて、またmassageを読みにくいのでマッサージと表記します。以後出てくるマッサージとはあん摩マッサージ指圧師のいう皮膚に直接触れる手技のことだと認識しおいてください

 

あん摩マッサージ指圧師として長年、按摩・マッサージ・指圧の研究をしてきました。この3つの中で最も進まなかったのがマッサージです。どうしても日本だとエステの印象が強く、男性術者である私は距離が遠くなりがちです。圧倒的に按摩と指圧の方がやるのも受けるのも容易いのです。マッサージをできる環境を作りたくてあじさい鍼灸マッサージ治療院を開業したとも言えます。

 

鍼灸マッサージ教員養成科ではオイルマッサージを「銀座ナチュラルタイム」という有名な院の先生が講師でしっかりと習いました。鍼灸マッサージ科時代は3名の講師から実技授業を受けていました。そして教員養成科に入り、全国にあるあん摩マッサージ指圧師養成学校のことが段々と見えてくるようになります。そこは全国の鍼灸マッサージ専門学校を卒業した学生が集まります。北は北海道から南は鹿児島まで。学校名を聞いたことがあるかなくらいの学校や初めて認識する学校など様々な卒業生がクラスにいました。学校ごとに技術に特色があるのだと分かるようになります。教員養成科を卒業して開業してからは自ら足を運んで手技を受け、先生と話して知識を蓄えてきました。

 

長らく謎だったのが長生術です。視覚障害者のない晴眼者があん摩マッサージ指圧師になろうとすると養成施設である専門学校は21校になります。そのうち鍼灸科のないあん摩マッサージ指圧師だけの学校は日本指圧専門学校長生学園だけ。それぞれ浪越指圧、長生術という特有の技術をメインに教えています。浪越指圧と長生術は指圧に分類されるのですが別物といってよいほど技術が異なります。浪越指圧は有名で飯田橋近くに学校があったので体験する機会がありました。一方の長生術は長生学園を卒業した先生に会ったことがなく、どのような技術なのかほとんど分かりませんでした。それが開業して数年経ったときに長生学園を卒業した先生に何名か知り合い、長生術を体験することができました。またお話を聞いて、ネットで調べてみて理解が深まりました。この頃から全国にあるあん摩マッサージ指圧師養成学校の技術を全て体験してその特徴を研究したいと考えるようになってきました。

 

私の母校呉竹学園には呉竹指圧MP揉みという技術があります。東京医療福祉専門学校吉田流按摩という古法按摩の技術が継承されています。このように各学校で、あん摩マッサージ指圧師という一つの資格で括られている中でも、独自の技術体系があるのでないかと考えているのです。特に地方の学校はどのような技術があるのか定かではありません。鍼灸師に比べると(健常者の)あん摩マッサージ指圧師の数は少なく、また鍼灸ほど研究が活発ではないのが現状です。

 

母校の教員養成科にはほぼ入学しない学校がいくつかあります。それは同じように教員養成科を持っている学校です。具体的には東京医療福祉専門学校、東京衛生学園専門学校仙台赤門医療専門学校などです(※東京衛生学園専門学校と仙台赤門医療専門学校は現在教員養成科が無くなっています)。あと大阪に教員養成科がある学校が2校ありますが、地理的に大阪からうちの教員養成科に来ることはあまりないのです。東京医療福祉専門学校に関しては私自身が学校見学をしたことがあったのと個人的に吉田流按摩を受けに行った経験があります。というわけで東京衛生学園専門学校、その姉妹校である神奈川衛生学園専門学校を卒業した先生とは母校の教員養成科関連で会ったことはありませんでした。東京衛生学園専門学校は中医学が盛んな学校で鍼灸では何人か関係者を知っていたのですがあん摩マッサージ指圧に関しては本当にいませんでした。

 

ただ噂レベルで耳にしたことがあったのです。鍼灸マッサージ科と教員養成科が按摩を習った大ベテランの先生と手技について話をしていたとき。後藤学園さんはお腹のアプローチが丁寧で凄いよ、と言われました。後藤学園とは当時の東京衛生学園、神奈川衛生学園の学校法人名で業界では当時2校を総称して後藤学園と呼んでいました。ホームページによると1953年(昭和28年)に故後藤真一氏が東京衛生学園専門学校を創設。当時は准看護婦科とマッサージ師科のみだったそう。3年後に小田原校が開校し、これが後に神奈川衛生学園専門学校となります。つまり東京衛生学園専門学校はマッサージ師の学校から始まったのです。ルーツとしてはマッサージが強い学校なのもしれないと当時は思いました。なお母校の呉竹学園は鍼灸師の故坂本貢氏によって創設され、鍼灸の方が根強い学校といえるわけです。

そんなことがあってから約10年後。SNS上で「後藤流按腹術」と「結合織マッサージ」という文言をプロフィールに入れた術者を発見しました。按腹。それは按摩技術の一つで腹部施術のこと。あん摩マッサージ指圧師でなければ按腹という言葉を使いませんし、一般の人はまず知らないです。そしてこの業界で後藤といったら後藤先生の後藤であることは察しがつきます。すぐに衛生学園卒のあん摩マッサージ指圧師だろうと思いました。更に「結合織マッサージ」の文字。鍼灸マッサージ科時代に「あん摩マッサージ指圧理論(あまし理論)」の教科書でみた言葉です。教科書には掲載されており、試験のために覚えましたが実際にやっているところを見たことがない謎の技術。それが「結合織マッサージ」でした。よもやこの人は結合織マッサージもできるのか?!と内心興奮しました。ただX(旧Twitter)のプロフィールだけでは何者かよく分からなかったのでフォローするだけで様子見にとどまっていました。そんなときに当院に来ているプレ学生さんがこの方の手技を受けたという連絡をしてくれました。そして私のことも紹介したのでした。プレ学生さんが橋渡し役になってもらい、連絡を入れて手技を受けに行くことにしたのです。名前は露木美那先生といい、京王線・小田急線多摩センター駅の「はり灸治療院クオーレ」で施術をしていることが分かりました。

 

はり灸治療院クオーレ

 

京王線多摩センター駅はよく通る駅。子どもが小さいときはサンリオピューロランドに行ったので土地勘もある方です。これは幸いでした。そして私にとっては幻の後藤流按腹術と結合織マッサージを体験するために多摩センター駅に久しぶりに降り立ったのでした。

 

按腹自体は私もよく用いる技術です。櫓盪状揉捏という技術が特徴的です。按摩の基本手技なので按腹自体はどの学校でも教えているはずです。そこに100年の歴史があるという後藤流按腹術は何が違うのか。興味があります。それと私は非常にお腹が固いのです。子どもの頃からお腹が固くて人に触れるのが大の苦手。反射的に手を払ってしまいます。小学生の頃からトイレに入っている時間が長くてよく下痢になりました。今でも脂っこいものを多めに摂取するとすぐにお腹を下します。鍼灸の世界では腹診といってお腹を触る技術が西洋医学同様あります。実技時間にペアになったクラスメイトが触るとその固さに驚きます。名だたる鍼灸界の講師が集まる母校の教員養成科でも、講師がみんな驚くほどお腹が固いです。触られる私の方も、基本的にお腹を触られるのが嫌。専門用語で拒按といいます。そのためお腹の触れ方で相手の技量が分かります。上手な人はお腹を触ってもこちらに不快感が薄いのです。よって私自身は按腹を学ぶのに非常に適しています。もともと不調なので変化が分かります。

 

結合織マッサージ。これは本当に試験対策用に覚えただけでした。エリザベート・ディッケ(Elisabeth Dicke)によって生み出されたマッサージ技術。皮下結合織に牽引刺激を与える目的で、皮膚をずらすようにする手技。擦過軽擦(平たい滑擦)とカギ形軽擦(立てた滑擦)の2つが基本手技。これくらいしか知識がありません。実技を習ったこともありません。ほぼ頭の中から消えていた言葉でした。それを実際に受けることができる。期待しました。

 

現地で露木美那先生と対面。問診等をしたのちに施術へ。

 

まず按摩の範疇で衣服の上からの手技。並んで写るとはっきりしますが露木先生は小柄です。私と体格差があります。私は176cmの身長があり、按摩や指圧を行う際に体格面で困ることはほぼありません。相手が相当大柄でなければ。同じあん摩マッサージ指圧師としてどのような感じなのかとうつ伏せになっていました。圧の入れ方が絶妙でした。浪越指圧は垂直圧を強く意識します。皮膚面に垂直に圧がかかるように母指で圧を入れます。直線で刺激が体に入っていく感じ。私もこれに近い圧の入れ方をベースにしています。露木先生は円を描くというのか波状の刺激というか。斜めから圧が入ってきて方向を変えて圧が抜けていくような。手技でいうと輪状揉捏のような感じです。按摩の基本手技に揉捏という、いわゆる揉む技術があります。主に線状揉捏と輪状揉捏があります。線状揉捏は揉む方向が直線状です。呉竹学園ではMP揉みといって線状揉捏の際に圧が往復して入ります。吉田流按摩だと一方向で切るような印象になります。一方の輪状揉捏は字のごとく円を描くように回転方向に揉んでいきます。一度一緒に練習した呉竹学園の後輩が全身をほぼ輪状揉捏だけで施術してくれて輪状揉捏の奥深さを体感したものでした。露木先生の手指の使い方は輪状揉捏のようでそうではない感覚でした。波が打って引いていくような圧の入れ方抜き方でした。考察するに、マッサージの基本手技である強擦のテクニックが入っているのではと頭に浮かびました。圧が奥の方に入ってくる感じはしないのですがリズミカルに連続してくる。じわじわと浸透していく感覚でした。何とも文字にしづらいもの。こういうやり方があるのかという驚きがありました。

 

続いて背中を直接触れていく結合織マッサージへ。皮膚を摘まみあげる手技が入ります。これで皮下の状態をさぐっているのだとか。後で「あまし理論」の教科書を確認したらそのようなことが記載してありました。記憶から完全に消えていました。私はこのとき整膚という手技を思い出していました。読んで字のごとく皮膚を整えるというもの。過去に数回この整膚を受けたことがあり、同じように皮膚を摘まみあげていました。結構鋭い痛みがあるのですが終わった後の直後効果を凄く感じたものです。その後に背骨の脇を下から上に軽擦をされました。独特な感触で、これが擦過軽擦とカギ形軽擦だそう。中指を曲げて、押すのではなく引く動作で行う。滑剤を使用していなかったと思います。背面でどのようにしているのか見えませんが、私が知っているマッサージの軽擦とは違うものでした。後で指の形が圧の方向を聞いたのですが理解しきれませんでした。指が進む方向と指で入れている圧の方向が異なるようです。分かったことは狙っている部分が浅層、つまり浅いところであること。按摩や指圧は筋肉、その深部に向けて圧をかけることが多いのですが、これは皮下直下の浅いところ。だから体格差があっても影響が少ないようですし、より指の使い方が繊細であると思いました。他にも摘みあげるまではいかない、指でつまんでいくような手技もありました。自然とプライベートで家族にマッサージをするときに使っていた手技に近いものでした。臨床であるテクニックなのかと自分のセンスをちょっと褒めたくなりました。自画自賛。

 

そして腹部へ。まず露木先生の触れ方が非常に繊細でした。鍼灸師の腹診だと奥をさぐるように指先を立てて圧をぐっと入れることがあるのですが、私の場合息が止まって硬直してしまいます。どうですか?と聞かれても声が出ないくらい苦しいのです。それを見越しているのか非常に優しく表面から中を探っているような触れ方でした。前に述べた通り私はお腹の触れ方で相手の力量が分かります。それくらいいつもお腹が固くて緊張しているので。そこから露木先生の後藤流按腹術が始まりました。タルクというパウダーをお腹にかけて行います。後で調べたらお臍のところに溜めるようです。タルクは学校のマッサージ実技で最初だけ使用しただけ。臨床現場で使っているケースは初めてでした。そこから色々な手技が出てきました。このとき腹部の緊張が取れてきてリラックスし、所々記憶が飛んでしまいました。そうなので全てを覚えていません。印象的だったのは仰向けの状態で背中まで指を入れて持ち上げるような手技。腹部だけでなく背部までこの体勢で行うのかと思いました。それと指先で叩くタッピングのような手技。これは本当に体験したことがないし、私自身考えたこともなかったもの。腹部を叩く腹診がありますが、それとも違います。おそらく両手の五本指でリズミカルに叩いていた気がします。後で露木先生とメールのやり取りをしましたが、腹部の状態で心理面を推察したいたそうです。そこは腹診を大切にしてきた東洋医学に通ずるものです。

 

他にも手足への押し方、揉み方など細かい部分で勉強になりました。

 

全体を通して、また会話していて思ったのは手技がメインの人だという事。私と同じように露木先生はあん摩マッサージ指圧師・鍼灸師です。鍼灸をメインにしている人の手技とあん摩マッサージ指圧がメインの人の手技というのは受けていて分かるものです。私の場合、状況によって変えますがベースはあん摩マッサージ指圧がメインの手技を行います。更に露木先生はマッサージ、すなわち皮膚を直接触る術者の手だと感じました。言語化するのは難しいのですが浪越指圧の先生、長生術の先生とはちょっと違う感じがありました。布越しではなく皮膚を直接触る指の触感。これは熟練した鍼灸師が出す感覚です。もちろん鍼灸師でもある露木先生ならそうなのでしょうが、マッサージの技術にそれが表れてくる感じです。凄く圧が入るというわけではないのですが繊細にじわじわと浸透してくるような。新しい感覚でした。

 

別の先生の施術を受けると何かしら刺激をもらいます。物理的なものも心情的なものも。まだまだ世界は広くてマッサージに、手技療法に、未知の世界があるのだと今回強く思いました。ますます全国のあん摩マッサージ指圧師の手技を体験して学校や流派の違いを研究してみたいと誓うものでした。私自身も今年は灸術向上に力を注いでいますが、マッサージもまだまだ発展途上だと再認識させられました。もっと手技療法全般の技術を上げられる。そう感じた体験でした。

 

甲野 功

 

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