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~自由診療のネット広告に対する消費者団体の差し止め請求~

弁護士JPニュース 「自由診療は野放しになっている」 より
弁護士JPニュース 「自由診療は野放しになっている」”ネット広告”が「優良誤認表示」に該当するとして消費者団体が医療クリニックに差し止め請求 より

 

 

最近、広告に対する取り締まりが強まっていると感じています。5年前は景品表示法という法律自体を知らなかったのですがよく目にするようになりました。それは私自身が勉強してアンテナを張っているからではないかと思います。本業に関わることだと理解して景品表示法について学ぶようになり、ここ数年で誇大広告に対する問題がよく見えるようになってきました。特に新型コロナウィルスのパンデミックからいわゆるデマに対する目が厳しくなったと感じるようになりました。生命の危機に関わることもあります。医療に関わる情報は健康被害に直結します。

 

そして先日、消費者団体がクリニックに対してネット広告を差し止める請求を行ったという報道が目に入ってきました。

 

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文章を抜粋します。

「自由診療は野放しになっている」 “ネット広告”が「優良誤認表示」に該当するとして、消費者団体が医療クリニックに差し止め請求 2024年09月10日 17:39

 

9月10日、NPO法人「消費者機構日本」は、医療社団法人「サカイクリニック62」によるインターネット上の医療広告が「優良誤認表示」に該当するとして、同クリニックに対する差し止め請求訴訟を提起した。

 

公式サイトやSNSの広告が「優良誤認」に該当すると訴え

 

消費者機構日本は、内閣府により消費者契約法に基づく「適格消費者団体」の認定、および消費者裁判特例法に基づく「特定適格消費者団体」の認定を受けた特定非営利活動法人。事業者による「不当な勧誘」や「不当な表示」などを止めるように求める差し止め請求や、多数の消費者に共通して生じた財産的被害について被害回復裁判手続を行う適格性を有すると認められている。

サカイクリニック62は渋谷区・道玄坂にある自由診療クリニック。主に歯科医療や美容皮膚科、美容外科や再生医療・免疫療法などの分野を診療している。また、エイジングケアグッズ(サプリメント・化粧品など)の販売も行っている。

今回の訴訟は、サカイクリニック62の公式サイト上の「再生医療・免疫療法」および「治療案内」のうち、「マクロファージ活性化療法」や「エクソソーム点滴療法」など8種類の項目に関する医療広告が景品表示法に基づく「優良誤認表示」(商品の品質や性能などについて事実と異なる公庫表示を行うこと)に該当するとして、差し止めを求めるもの。なお、公式サイトのほか、同クリニックのInstagramやYouTube、X(旧Twitter)などに表示される広告も差し止め請求の対象とされている。

 

エビデンスのない自由診療は「患者の利益に反する」

 

提訴後に開かれた記者会見で、原告代理人の宮城朗弁護士は「医療機関による医療広告について、治療法の効能や安全性の表示が優良誤認に該当することを根拠に、適格消費者団体が差し止め請求を行う訴訟は、日本で初めて」と、訴訟の意義を語った。

「本来、優良誤認表示を行った事業者に対しては、消費者庁や都道府県が措置命令を下し表示を停止させることができる。しかし、医療広告の優良誤認表示について措置命令が下された事例は、現時点において1件も確認できない」(宮城弁護士)

一般的に、保険診療を行う医療機関では、各専門分野の診療ガイドラインに基づき、確立した医学的知見が存在する治療法や、適切な審査・承認手続きを経た医薬品・医療機器を使用する「標準治療」が実施されている。一方で、自由診療を行う医療機関で実施される治療には、必ずしもエビデンスが存在しない。また、保険診療に比べて自由診療はかなり高額な価格で提供されている。原告が提訴した背景には、「このような状況は一般の患者(消費者)の利益に反する」との問題意識があるという。

「医療機関による治療は、単なる財産的被害にとどまらず、患者の生命と健康に直結する問題なので、重大と捉えている。また、医療広告にはガイドラインが一応は存在するが、自由診療の規制は他の業界に比べると非常に緩い。行政として監督・規制すべき問題であるはずだが、実際には、自由診療はほとんど野放しの状況となっている。今回の訴訟には、この問題を社会問題として提起し、本来あるべき行政の取り組みを引き出すという狙いもある」(宮城弁護士)

 

多数の医療機関が「優良誤認表示」を行っている

 

4月上旬、消費者機構日本は、治療法に関する医学的な疑問点について質問書をサカイクリニック62に提出。クリニックからは「直ちに、問題となっている広告を停止する」との回答があった。しかし、1〜2か月経過しても広告は表示されたままであった。機構が再度問い合わせたところ、クリニックは「来年あたりに改訂する予定」と返答。機構は5月と6月にかけて正式に広告の停止を求めたが、クリニックは「来年に改定する」との返答を繰り返した。機構はクリニックの対応を「時間稼ぎであり、差し止めに応じる意図はない」と判断して、消費者契約法に基づき「1週間以内に削除しなければ提訴する」と予告書面を送付。クリニックからは「顧問弁護士と相談しながら修正を進めている」という旨の返答があったが、具体的な修正時期は示されなかったため、提訴に至った。なお、訴訟中にクリニックが広告を修正すれば、和解で解決する可能性もあるという。

基本的に、適格消費者団体は、実際に起こった被害の相談を受けてからでないと事業者に対する訴訟の提起などができない。今回は、財産的被害の訴えが消費者からあったために、サカイクリニック62が訴訟の対象となった。

「医療広告の優良誤認表示を行っている医療機関は、ほかにも多数存在する。いずれも非常に問題がある。今回の訴訟は、あくまで『手始め』。今後、機会があれば、他の医療機関についても取り組んでいきたい」(宮城弁護士)

 

景品表示法を学んでいたので「優良誤認表示」はすぐに理解できました。本来の内容よりもはるかに優良であると誤認させる誇大広告(表示)のこと。消費者団体が提訴しているという状況がよく分かりませんでした。これまでの知識では、消費者を守るための国の機関である消費者庁が景品表示法違反として措置命令や課徴金納付命令といった処罰を下す。この報道では消費者団体が医療機関のネット広告内容を優良誤認表示であると差し止めを要求し、それに一向に対応しない医療クリニックを提訴するにいたったという。NPO法人「消費者機構日本」という国の機関ではない団体によるもの。どういうことでしょう。そこのところを調べました。

 

まず「適格消費者団体」、「特定適格消費者団体」というものがあります。消費者庁ホームページの解説によると以下の通り。

適格消費者団体・特定適格消費者団体とは

不特定かつ多数の消費者の利益を擁護するために差止請求権を行使するために必要な適格性を有する消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人を「適格消費者団体」といいます。全国に26団体あります。

また、適格消費者団体のうちから新たな認定要件を満たす団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人を「特定適格消費者団体」といいます。全国に4団体あります。

つまり全国に26団体ある内閣総理大臣の認定を受けた「適格消費者団体」があり、更にそれらのうち4団体が新たな要件を満たした「特定適格消費者団体」があるということ。特定適格消費者団体は以下の4団体でした。

 

消費者機構日本

特定認定をした日(平成28年12月27日)

消費者支援機構関西

特定認定をした日(平成29年6月21日)

埼玉消費者被害をなくす会

特定認定をした日(平成30年4月24日)

消費者支援ネット北海道

特定認定をした日(令和3年10月20日)

 

今回クリニックを提訴したNPO法人「消費者機構日本」は確かに入っております。適格消費者団体の根拠となる法律が消費者契約法消費者裁判手続特例法です。消費者裁判手続特例法は正確には「消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」と長い名称です。これらがどのような法律なのかは同じく消費者庁ホームページの解説を見てみましょう。

消費者契約法

消費者が事業者と契約をするとき、両者の間には持っている情報の質・量や交渉力に格差があります。このような状況を踏まえて消費者の利益を守るため、平成13年4月1日に消費者契約法が施行されました。同法は、消費者契約について、不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等を規定しています。

また、平成18年の法改正により消費者団体訴訟制度が導入され、平成19年6月より運用されており、平成20年の法改正では、消費者団体訴訟制度の対象が景品表示法と特定商取引法に、平成25年の法改正では、食品表示法に拡大されました。

その後、平成28年、30年、令和4年には、取り消しうる不当な勧誘行為の追加、無効となる不当な契約条項の追加等の民事ルールの改正が行われました。

消費者裁判手続特例法消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律

消費者被害には、同種の被害が拡散的に多発し、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差により、消費者自らその被害の回復を図ることには困難を伴う場合があるという特性があります。この法律では、そのような消費者被害の特性に鑑み、その財産的被害等を集団的に回復するための2段階型の訴訟制度(消費者団体訴訟制度(被害回復))を定めています。

この法律は、平成25年に衆議院における修正を経て成立・公布され、平成28年10月1日から施行されています。

令和3年には、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」(令和3年法律第72号)により、特定適格消費者団体に対し、特定商取引法及び預託法の行政処分に関して作成した書類の提供を可能とする仕組みの導入等の改正が行われました。(令和4年6月1日から施行)

令和4年には、「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」(令和4年法律第59号)により、標記法律に基づく消費者団体訴訟制度(被害回復)の対象範囲を拡大する等の改正が行われました。(公布日(令和4年6月1日)から1年半を超えない範囲内において政令で定める日(令和5年10月1日)から施行)

今まで聞いたこともなかった法律でした。施行されたのは割と最近のようです。適格消費者団体の制度や消費者契約法といった法律の存在をここで初めて知るのでした。

 

本題に戻ると、その特定適格消費者団体の「消費者機構日本」が医療社団法人「サカイクリニック62」のネット広告が優良誤認表示にあたると提訴したという。広告の種類は同クリニックの公式サイトだけでなく、Instagram、YouTube、X(旧Twitter)のSNSでの投稿も入ると。担当弁護士によると自由診療での広告は多数の優良誤認表示が含まれているといいます。保険によって行われる保険治療は標準治療と言われる最も効果が実証された(エビデンスがある)方法が採用されますが、保険適応のない自費による自由診療の場合は医療広告ガイドラインを守らず野放し状況である。医療広告に関して優良誤認表示の景品表示法違反による措置命令が下された例は一度もない。行政が監督する立場にあるが機能していないため消費者機構日本が行動を起こしたというのです。再三の警告に対しても同クリニックは行動を起こさなかったという。『今回の訴訟には、この問題を社会問題として提起し、本来あるべき行政の取り組みを引き出すという狙いもある』という弁護士の談から、行政が動かないなら適格消費者団体が、弁護士が、動くという意思を感じます

 

この報道はとても重要な意味を持つと考えています。景品表示法違反の措置命令は消費者庁だけでなく地方自治体でも出すことができます。国や地方行政が処分を出せます。来月10月からは直罰規定が措置命令に課せられることになるのでより処罰が重くなります(100万円以下の罰金が加わる)。ところが自費治療の医療広告は行政が動いていない。やりたい放題である。それならば適格消費者団体が裁判という場で差し止め要請をするという。司法の方からも誇大広告を取り締まる動きが出てきたわけです。私の鍼灸業界全般も無関係ではなくなるでしょう。この提訴のことを知り、気を引き締めておかないといけないと思います。広告内容に虚偽、あるいは騙すような内容は厳に慎むようにしないといけないと。

 

甲野 功

 

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