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~灸の話 棒灸を使わざるをえない状況~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 棒灸の様子
棒灸 ※イメージです。実際の臨床の画像ではありません。

 

 

今年のテーマは「灸術を高める」。きゅう師としてお灸の技術を向上させようということを1年の課題にしました。具体的には艾を捻るお灸の技術を向上させたいということです。ただ艾を捻る灸だけが灸術ではありません。灸自体は開業当初の10年前からずっと行ってきました。ただ多くは台座灸であり、もっとレパートリーを増やしたいという気持ちです。一方、直接灸、台座灸以外にも灸術はまだまだあります。体に刺した鍼に艾の塊をつける灸頭鍼。お灸と皮膚の間に生姜やニンニクなどを入れる隔物灸。そして棒灸。などなど。

 

棒灸は様々なタイプがありますが、艾を固めて棒状にしたものを点火をして皮膚に近づけて熱刺激を与えるものが多いです。この場合だと長時間大量に艾が燃えるのと、不純物が多く含まれた低等級の艾であるため、非常に煙が出ます。匂いもかなりします。術者は煙たくなりますし、患者さんの髪や衣服、持ち物に匂いがつく懸念もあります。当院は強力な空気清浄機と脱臭機を用意していますが、それでも匂いや煙が気になるくらいそれらは強烈です。そのため器材はありますがほとんど使用することはありません。煙と匂いの問題を解消するのが炭化させたタイプのスモークレス棒灸。これですとかなり煙を抑えることができます。スモークレス棒灸は火をつけるのに時間がかかるのが難点です。

 

大量の煙と強い匂いというデメリットを除くと、棒灸を用いるメリットは幾つもあります。艾を捻る灸よりも扱いが簡単皮膚に近づけるだけなので火傷のリスクが少ない術者が手に持っているので患者さんが熱いと感じたらすぐに離すことができます。点灸という用語があるように1個所ずつ据える灸に対して棒灸は動かすことで線の熱刺激を与えることができます。ここら辺は数学の次元で考える癖がある私の独自解釈になります。点(0次元)から線(1次元)へ。スモークレス棒灸でもデメリットは別にあり、それは棒灸をずっと手に持っていること。例えば置鍼といって鍼を体に刺したままにしておくことが鍼はできます。台座灸なら複数の経穴を同時に温めることができます。なぜなら台座灸は置いておけるからです。棒灸は術者がずっと手に持っているので手がふさがります。灰が落ちてしまうことにも注意が必要です。

 

このような事情があり通常の棒灸はもちろんスモークレス棒灸もあまり臨床で使ってきませんでした。ところが最近棒灸を使わざるをえない状況になりました。個人情報があるので細かいことは書きませんが、これはお灸をした方がいいなと判断する患者さんがいました。患部にお灸をしようとしたのですが、ずっとそこがずっと動いているのです。これだと台座灸をしても外れて落ちてしまう可能性があり、直接灸はもっとできません。これは棒灸にするしかないなと判断しました。

まず断っておくことは患者さんが意図的に動かして邪魔をしているわけではありません。本人の意志ではないのです。そんなことあるのですか?と思われる方がいるかもしれませんが実際にあります。この患者さんがどのパターンなのかは明言しませんがいくつか例を挙げます。

 

・中枢神経障害による不随意運動

神経は大きく末梢神経と中枢神経に分けられます。一般的に神経と聞くと多くは末梢神経です。歯医者で神経を抜いた。坐骨神経痛の坐骨神経。など。対して脳と言われる部分が中枢神経です。脳と聞く頭にあるいわゆる“脳みそ”を想像すると思われます。それは大脳(終脳)にあたり、しわがあります。他にも間脳、小脳、延髄などがあります。そして首から下の脊髄も中枢神経にあたり、脳に分類されます。脊髄から出た脊髄神経は末梢神経になります。末梢神経に問題があると機能が低下、あるいは停止します。手足が動かない、感覚を感じないなど。一方中枢神経に問題があると機能が暴走することがあります。頭(大脳)では動かすように考えていないのに勝手に動いてしまうような。

末梢神経と中枢神経を自動車と運転手に例えると分かりやすいでしょう。末梢神経障害は自動車の不備です。エンジンがかからない、スピードが出ない、ブレーキのかかりが悪いなど。中枢神経傷害は運転手の問題です。この場合、自動車そのものは平常通りで一方通行を逆走したり、法定速度以上のスピードを出したり、建物に突っ込んでしまったり。

命令を下す中枢神経に傷害があって当人の意志とは関係なしに体が動いてしまうことを不随意運動と言います。

 

・認知機能低下によるもの

身体能力は問題ないのですが自分が置かれている状況が理解できなくて動いてしまう。動かないでくださいと言われてもそれが理解できなくて動いてしまう。

 

・単純に苦痛や不快のため止めていられない

頭では分かっていてもかゆい、痛い、辛いなどの刺激により、それらを回避させようと無意識に動いてしまう。身体・精神ともにストレスにさらされると自覚しない動作が現れることがあります。

 

細かく見ると他にもありますが何にせよ患部がずっと動いている状況なので、手でコントロールできる棒灸を選択しました。デメリットとしてずっと手で持っていないといけないと書きましたが、手に持っているから動いている患部に対応して熱刺激を与えることができます。艾を捻って皮膚の上に据えて線香で火を点けるという直接灸では火傷のリスクが高すぎます。台座灸も倒れて燃えている部分が皮膚に触れてしまうことを考えると割けないといけません。結果的に棒灸を使いました。普段は使用しない技術だったのですが持っていて良かったです。

 

図らずも棒灸を見直すきっかけになりました。灸術を高めるという今年のテーマに合致。これも天命かもしれないと考えて今後も灸技術向上に向き合います。

 

甲野 功

 

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