まず校名が東京医療専門学校から東京呉竹医療専門学校に変更しました。私も内原先生も教員養成科卒。母校の名称が変わっての授業でした。次に校舎が違います。前回までは代々木駅前の代々木校舎で行っていましたが今年8月に四ツ谷駅徒歩10分の5号館に教員養成科が移転したので東京校舎5号館でした。東京呉竹医療専門学校は四谷と代々木で校舎が分かれていたのですが今年4月に四谷校舎の新本館が完成。引っ越し作業が進み、四谷校舎で統一されました。5号館は先立って建てられた10階建てのビル。コロナ禍のときは鍼灸科、夜間鍼灸科などが入っていましたが引っ越しが完了し、教員養成科の校舎となりました。そして内原先生が関東鍼灸専門学校を退職し、副校長から同校の非常勤講師に、そしてフリーの鍼灸師と立場が変わりました。私だけが環境の変化がありません。ただ講義テーマが8回目にして変更しました。
始まったきっかけは関東鍼灸専門学校副校長だった内原先生のSNSを利用してクラウドファンディングを実施した活動報告です。そこに私が開業鍼灸師の立場からSNSの利用に関して比較するような感じで話をしたというものでした。2017年当時は鍼灸師がSNSをすることが珍しい方でしたし、クラウドファンディングも一般的なものではありませんでした。私は話すテーマを「開業鍼灸師のSNS活用」で固定し、このベースとなるテーマを残しておきながら、話す内容を毎年変えていました。社会状況も業界状況も変化していきます。前回の授業が終わってからの1年間で起きた時事ネタを踏まえて内容を決めていきます。そのため毎年資料は作り直してきました。特にこの1年は様々なことが起きたし、これから制度が変わるという状況。すごく重要な時期だと思いました。奇しくも9月末。10月1日から、また10月以降に、新しく導入される2つのトピックがあります。そのことを中心に話すことにしたら初回からずっと守ってきた「開業鍼灸師のSNS活用」という基本軸を無くすことにしたのです。タイトルは前日まで悩みに悩んだ末、「鍼灸業界のこれまでとこれから~広告規制を中心に~」になりました。内原先生が専任教員を辞めた今、教員と開業の対比という観点は完全に無くなります。開業鍼灸師として経営するには集客は避けては通れない必須事項。それをSNSの活用からどう患者さんを集めるか。広告、広報のノウハウみたいなことを伝えてきましたが今年はそれを捨てました。
私自身を知ってもらうことが大切な広報活動。鍼灸をアピールする前に“鍼灸をする鍼灸師”をアピールしよう、というのがずっと話してきたこと。そのため私の自己紹介をしっかりとするようにしていました。自分を売り込むという意図もゼロではありませんでした。今年は紹介することが多すぎて、自分のことを紹介する時間を削ることにしました。それも大きな変化でした。
内容を決めるにはまた例年と違いました。今月初めの9月1日に来年から鍼灸マッサージ専門学校に進学をするプレ学生さんに向けた、業界状況の展望を話すセミナーをしたのです。これが現時点で私が情報集して研究してきたことの集大成となるもの。関係法規、裁判、事件、ガイドライン、有識者会議など業界に関連の内容を自分が知る限り網羅したもの。360枚を超える(パワーポイント)スライド数の発表資料になりました。ここから必要なものを抜き出して再編集することにしました。授業を受けるのは全員鍼灸師国家試験を突破したプロ。関係法規や細かい事情を説明する必要はありません。必要な部分だけ取り出して4時間以上かかったものを40分くらいにします。
特に紹介したかったことは景品表示法とあはき・柔整広告ガイドラインのこと。景品表示法とは正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを規制する、また過大な景品類の提供を防ぐことを目的とする法律です。主に3つの項目を取り締まっており、それが優良誤認表示(実際のものや競争より著しく優良であると誤認させる表示)、有利誤認表示(取引条件を著しく有利にみせかける表示)、ステルスマーケティング(一見広告と分からない表示)です。ここでいう表示とは広告全般を指します。2018年あたりから私が重要視している法律です。それに付随する形でもありますがあはき・柔整広告ガイドラインは、7月に最終回を迎えたあはき柔整等広告検討会により、今後正式に導入される我が業界の広告ガイドラインです。施行に向けて9月28日までパブリック・コメントを募集しています。
そして再び紹介したのが2020年に総務省がまとめた「消費者事故対策に関する行政評価・監視-医業類似行為等による事故の対策を中心として- 結果報告書」のこと。総務省が健康被害の起きた事故に対して2018年3月~2020年11月までの2年半を費やした大規模調査の結果報告書です。健康被害の起きた消費者事故の多くは医業類似行為によるものとエステにおける施術の2つであること。背景には保健所がそれを指導できていない、消費者庁に事故情報が通達されていない、事故が起きたときにどこに通報すればよいのか定まっていないなどの問題点が判明しました。これを受けて総務省は厚生労働省と消費者庁に向けて是正勧告を出したのです。このことを2021年の教員養成科特別授業で私は紹介しました。ただこの時は総務省の調査結果と勧告を出したところまでしか言いませんでした。授業で話しながらも結局変化はないだろうなという気持ちがありました。しかし総務省の勧告から2年半。総務省は効果が出ているのかを調査するフォローアップを2回行います。それにより消費者庁は警察庁に協力を求め、厚生労働省は保健所に業務改善を通達しました。保健所の意識が変わってきていることがフォローアップの調査結果から見受けられました。
これまでに起きた鍼灸業界での景品表示法違反による処罰例。総務省の健康被害調査からの消費者庁と厚生労働省への勧告とその効果を調べたフォローアップ。これから導入されるあはき・柔整広告ガイドラインの内容。更に10月1日から導入される優良誤認表示・優良誤認表示が認められた際の直罰規定(100万円以下の罰金)。これらからこれまで見過ごされてきたことを取り締まる方向に進むのではないかということを伝えました。大きく変わる前兆を感じています。開業して10年。ルールやガイドラインといったことに敏感になり情報収集を欠かしてこなかったからの内容。奇しくも前日に消費者庁がいわゆる「No.1表示」に対する調査結果を発表し、当日自民党総裁選が行われ新総裁に石破茂氏が当選。次期内閣総理大臣が石破氏になることが確定的となります。間接的ですが鍼灸業界のこれからが変わるかもしれないというトピックがあったこの時期にこの授業内容をすることになりました。
8回目にして色々な変化があった教員養成科特別授業。このような機会を与えてくれた関係各位に感謝申し上げます。1年間の集大成として授業準備を進めております。次回はどのような内容になっているのでしょうか。
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