開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
昨日は母校の東京呉竹医療専門学校卒後臨床研修講座「臨床に役立つアスリートケアと東洋医学」に参加しました。これは東京呉竹医療専門学校卒業生を対象としたセミナーです。新型コロナにより中断していましたが復活しました。母校に関係する講師による特別講座。コロナ前から気になるものには参加していました。それこと鍼灸マッサージ教員養成科に入学する前の勤務時代から。なお同じ学校法人呉竹学園でも横浜校、大宮校の卒業生は参加することが原則できません。東京呉竹医療専門学校を卒業した者だけなのです。
今回の講師は古屋英治先生。私は直接授業を受けたことがありませんがとても有名な先生です。実は前日の呉竹医学会学術大会の記念講演も担当しており、その講演を途中から聴講していたのです。古屋先生は元呉竹学園東洋医学臨床研究所の所長。その名称から伝統的な鍼灸や漢方を扱っているような印象を受けますが、スポーツ鍼灸を研究する施設が東洋医学臨床研究所。多くのアスリートを担当し、かつ研究を続けてきました。私の同級生にはこの東洋医学臨床研究所に入りたくて他校から鍼灸マッサージ教員養成科に進学したという人がいるほど。私も学生時代に研究の被験者として参加したことがありました。私の場合、専門というか注目しているのが競技ダンス選手、社交ダンス愛好家。一般的なアスリートとやや事情が異なり、芸術面の要素が入る“審美スポーツ”というジャンルになります。ただバレエやフィギュアスケートなどよりもスポーツ外傷の程度は低く、それ以外のことが重要視されると私は考えております。まだまだマイナースポーツであり(そもそもスポーツなのか芸術なのかという議論もあります)自分自身で研究していく方が早いという感覚でした。そのため鍼灸マッサージ科の頃から独学で積み重ねてきました。そういう理由もあり東洋医学臨床研究所にはあまり興味が無かったのでした。
鍼灸マッサージ科を卒業し柔道整復科、鍼灸マッサージ教員養成科も卒業。あじさい鍼灸マッサージ治療院を開業して10年。やや行き詰ったというか、10周年を目標にしていたので達成して少し気持ちが落ちているというか。今一度学びに行くという姿勢が必要だと考えました。そこで情報が入ってきた古屋先生のアスリートケア。近いところにいたにも関わらず接点がなかった古屋先生の話を聞いて勉強しようと思ったのです。奇しくも金曜日に教員養成科で授業を担当、土曜日は呉竹医学会学術大会に参加、日曜日がこの卒後研修と母校関連のイベントが3日連続となります。最終日に今年4月に竣工した新本館に向かいました。
講義を受けて感じたことは知識が深い、そして広い。
まずアスリートに対する臨床現場の実際。様々な現場に出ていたからこそのエピソード。座学だけということではない。生きた情報でした。出てくる選手、団体の規模が大きすぎて圧倒されます。しかも長く携わっているので歴史や変遷を知っています。現状はもちろんどのような経緯でこうなっているのかを教えてもらいました。これはベテランならでは。
余談ですが専門学校教育のことも話してくれました。現在スタンダードとなっている理学徒手検査、評価。それを初めて導入したのが呉竹学園であると。私は教員免許を持っていて学校教育に関して興味があります。またその歴史にも。私が鍼灸学生として入学する20年前。それ以前から鍼灸師養成のために変革をしてきたのでした。それを知るとあの頃学んでいたことの意味というか重みを噛みしめます。たまに教壇に立つ側になったからこそ。合点がいくこともありました。
ドーピングについて。古屋先生は薬科大学を出た薬剤師でもあります。つまり薬物のプロ。ドーピングについても本格的な知識があるのです。そのためこれまで聞いてきたドーピング関連の講義では圧倒的な知識というか実感のある話でした。具体的にどの成分が検査に引っ掛かるのか。うっかりドーピングもある。漢方は生薬だからOKと思いがちだがそうではない。それは内容成分が特定できないかという理由で。またサプリメントにもドーピング検査に引っ掛かる成分もあると。余談でドーピング検査の実情も話してくれました。私も東京理大学応用物理科を出てからこの業界に入ったので親近感があります。一見鍼灸と関係ない薬学や理学を応用できる、活用できるというキャリアをみた気がします。
そこから東洋医学の話へ。古典の淮南子、虚実、脾胃、貝原益軒の養生訓、未病、四診、経穴。東洋医学概論の話が出ます。スポーツ鍼灸をする先生は比較的西洋医学的な思考が多いと思っていましたが(特に薬学をしてきた先生ですし)詳しい東洋医学の話もすることにちょっとした驚きがありました。アスリートのライフステージを東洋医学の腎精にあてはめるなど。東洋医学への造詣も深いのかと感じました。
実技は股関節と顎関節でした。病態把握、症状の鑑別、疼痛の機序など。現代医学の知識も当然あります。その前の東洋医学から一転、解剖生理学でした。学生のときは教科ごとに習うので東洋医学概論、解剖学、経絡経穴、生理学といったようにそのジャンルだけを考えがち。広く網羅して講義ができるということが素晴らしいですし、見習わないといけないと思います。どちらかに偏ることが多いので。実技はアスリート向けの鍼のやり方。一般の患者さんと何が違うのかをよく踏まえた上で現代的なアプローチでの技術でした。凄く変わったことをせず。きちんと評価して、きちんと指標を決めて刺す。あるいは接触鍼、散鍼によってエリアで刺激をする。基本的なことをきちんとする。そのような内容でした。
全体を通して、呉竹学園の到達点という印象でした。現代派と言われますが東洋医学もしっかりできて、科学的な視点も持ち、やることはシンプル。研究も臨床も教育もやり続けてきた結果。まだまだやることはあると思い知らされました。この年齢、このキャリアになると自分よりも年上や長い経験を持つ人と接する機会が相対的に減り、後輩・年下ばかりと交流するようになります。まだまだ未熟だという事を再認識し、10年、20年後を見据えて研鑽を積むことが大事だと知るのでした。
甲野 功
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