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~2024年教員養成科特別授業内原先生パート~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 2024年教員養成科特別授業 内原先生
2024年東京呉竹医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科特別授業 内原拓宗先生の講義

 

 

先月の9月28日に東京呉竹医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科で特別授業を担当しました。年に一度の特別授業。今年で8回目となりました。毎年、内原拓宗先生と一緒に担当しております。内原先生は長年勤めた関東鍼灸専門学校を退職しフリーの状況になっていました。Xの固定ポストによると

千葉大学医学部付属病院和漢診療科鍼灸外来

諏訪の杜整形外科と附属鍼灸院

なのはなクリニック鍼灸外来

ハリトヒト。鍼灸院

関東鍼灸専門学校(非常勤講師)

と複数の勤務をこなしています。古巣の関東鍼灸専門学校で非常勤講師を続けながら医療機関3か所。そして鍼灸院も。ハリトヒト。鍼灸院での勤務を始めたときは鍼灸を受けに行きました。関東鍼灸専門学校副校長時代から千葉大学での勉強会に参加していた内原先生。そこから大学病院鍼灸外来で臨床を行うことになります。教育、臨床、研究という3分野をこなしている非常に稀有な存在です。なお私にとっては教員養成科での先輩にあたります。

 

内原先生と担当するこの授業は毎年内原先生が先に話します。その時間は学生同様、私も授業を受ける立場になり毎年勉強させてもらっています。今年のテーマは「医療施設での鍼灸の可能性」でした。大学病院やクリニックといった医師がいる医療施設で鍼灸を行う内原先生らしい、そして秘めたる想いがあるテーマだと思いました。それはある意味で対立を内包したものです。あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師(正確にははり師、きゅう師)、柔道整復師は正式に(法的に)開業が認められた医療職種です。現代医療制度において、これは特殊なことです。ほとんどの医療系国家資格は“医師の指示の下”、“医療機関(医療施設)”でその業務を行うものです。開業できるということは医師が存在しない状況、すなわち個人の判断で施術を行えるということです。私も鍼灸師として大学病院で柔道整復師として整形外科クリニックで勤務したことがあるから分かりますが、まず医師が診断をしてそれから医師の指示があって、鍼灸なり柔道整復なりの施術を行います。大学病院ではオーダーといって医師からの指示(オーダー)が入らないと全て進みません。看護師の行動も、薬の処方も、お会計も。そのため病院内で医師が看護師に「先生、はやくオーダーを入れてください。先に進みません。」と急かされる様子が見られることがありました。鍼灸院なり接骨院なりマッサージ院を開業できるということは自己判断でできるということです。言い換えると医療施設で鍼灸を行うということは医師の診断があってからの鍼灸施術ということです。鍼灸院で勤務し、一人で患者さんと向き合うこともしている内原先生は異なった環境を体験しています(加えて非常勤講師という立場も)。「医療施設での鍼灸」と「鍼灸院での鍼灸」は例えやることが同じであっても環境は大きく違います。私を含めて多くの鍼灸師は「鍼灸院での鍼灸」をしていて、少数が「医療施設での鍼灸」をしているのが現状です。

その珍しい「医療施設での鍼灸」とはどのようものか紹介していきます。医療施設と一括りにしていますが、大学病院と市中の病院では状況や求められているものが異なります。婦人科クリニックでもそうです。漢方(湯液)と鍼灸も同じ東洋医学でありながら違います。実情を知っている内原先生が解説します。医療施設での鍼灸はどのようなもので、どのようなスキルが必要なのか。そして鍼灸は何を求められるのか。また医学部教育の変遷にも言及しており、教育面でも解説がありました。医学部では鍼灸や漢方がどのような位置にあるのか。詳しいことは守秘義務があるので具体的なことは書きませんが貴重な情報と意見でした。

 

書けることでいうと、内原先生の言葉に「東洋医学vs西洋医学の対立思考で鍼灸師が自らの可能性を狭めている」というもの。当然と言えば至極当然のことなのですが、実は深い意味があると感じました。医療施設、すなわち医師がいる場面、での鍼灸はベースに現代医療(≒西洋医学)があることは間違いありません。医師が東洋医学を学んでいてできたとしても、一緒に働くコメディカル(看護師や理学療法士など)は西洋医学で話さないと通じません。気虚で脈が沈、といった東洋医学的な表現はできません。一方、鍼灸院での鍼灸であれば、個人院ならやりたいように、複数の鍼灸師がいる場所でも共通事項として東洋医学で会話ができます。医療施設での鍼灸は他の医療職種と足並みを揃えることが必須であり、そこは東洋医学ではなく西洋医学が共通語。そこで西洋医学と東洋医学を対立させてしまうのは自身の可能性を狭めるというわけです。

 

そもそも対立できるのは双方をきちんと勉強する(国家試験に出題されて国レベルでその知識を担保している)鍼灸師ならでは。鍼灸師は西洋医学も東洋医学も最低限勉強しています。対立という概念が他にはありません。私は柔道整復師ですから分かりますが、骨折をみたときに東洋医学的処置など考えません。鍼灸師だから洋の東西で対立すると言えます。そこを乗り越えるというか整合性を取ることが大事なのだと私は考えました。これは授業を担当した東京呉竹医療専門学校の前校長である斎藤秀樹先生がいう「バイリンガルたれ」という言葉に通じます。バイリンガル、つまり2か国言語が話せる。東洋医学と西洋医学の両方を話せて翻訳できる。そのような人材になるように。斎藤秀樹現大宮呉竹医療専門学校校長がよく教員養成科で語っていました。

 

専任教員から複数の医療施設で鍼灸を行う立場となった内原先生。この特別授業は内原先生が当時はほとんど知られていなかったクラウドファンディングを成功させたことから始まりました。8年が経過し、社会のホワイト化、鍼灸は医療なのかという問い、そして医療施設での鍼灸の可能性という内容に変化していきました。個人で開業した私にとってやや遠いが考えないといけないことでした。

 

甲野 功

 

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