開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
一人で開業していると煩わしいことがないかわりに他人からの刺激や練習ができないという難点があります。勤務時代は良くも悪くも他のスタッフの影響を受けていました。切磋琢磨するのはいいのですが、周囲の身内にいい恰好を見せたいという感情が強くなりすぎると患者さん第一にならなくなります。修行した鍼灸整骨院を去った理由の一つがそれで、年数が経過し年齢もキャリアも上の方になり、役職がついて指導するような立場になってくると患者さんよりもスタッフに気が向いてしまいます。プレイヤーからマネージャーへ。それが成長の結果なのかもしれませんが、私はまだまだ臨床の前線にいたかったですし学ぶことが山のようにありました。その学ぶことが臨床に関するものから経営、マネジメントの比重が高くなっていくのが嫌でした。当時は国家試験を控えた柔道整復専門学校3年生でしたし。経営やマネジメントの勉強を嫌々ながらもやっていた経験が今に活きていますし、あの頃の体験が人と一緒に働こうという気持ちが芽生えないとも言えます。
時が経って一人であじさい鍼灸マッサージ治療院を運営していると色々と弊害も出てきます。前に進むために外に出て新しいモノを見る知ることが必要になります。モノというのは者であり物。自分よりも優秀な人物や技術、機材。その点でいうと9月末の呉竹医学会学術大会と卒後臨床研修の参加は大事でした。私より遥かにキャリアがあり年齢が上の先生方の話を聞き、技術を目の当たりにできたこと。まだまだ足りないと思い知らされました。
そんな時期に面識のあるあん摩マッサージ指圧師さんを呼んでマッサージの練習をさせてもらいました。9月末に医学会と卒後研修がありましたが、9月の初めには露木美那先生の名称は知っていたが実態を知らなかった「後藤流按腹術」と「結合織マッサージ」を受けました。あん摩マッサージ指圧師にとってのマッサージ(massage)とは皮膚の上から直接触って行う技術を指します。一般の人が思い浮かべるマッサージは我々の技法でいうと按摩(あん摩)か指圧になります。この場合の指圧も単に指で押すことだけではありません。この細かいところまで話ができるのはあん摩マッサージ指圧師免許を持った者どうしになります。マッサージの体験、見学をしたことで練習をしたいと考えてオファーをしました。その方は学生時代から当院に来て勉強会などに参加していた先生です。気兼ねなく声を掛けました。
後藤流按腹はお腹にパウダーを塗って直接触るものでした。結合織マッサージも皮膚を直接触ります。そして呉竹医学会学術大会の実技セッションでみたマッサージ療法も当然、膝関節でしたが、オイルを塗って皮膚に直接触るものでした。これらを受けて、見学して、それまで持っていたマッサージの概念が変わりました。何となくこういうものだろうという固定観念ができていたことに気付きました。鍼灸に比べると臨床で行っている先生が非常に少ないマッサージ。あん摩マッサージ指圧師でも指圧、按摩はやっているがマッサージはやらないという方が珍しくないのです。実践レベルの技術を学ぶチャンスは多くありません。9月の体験を刺激として自分で試してみようと思いました。それまで持っていた自分の型を崩して違うスタンスでマッサージをしてみました。練習ということで自由に色々と試してみながら行い結局2時間ほどマッサージを続けます。
今回考えたことは
・圧の入れ方を変える
・身体の細かい部位ごとで考える
・牽引、ストレッチなど他動運動を取り入れる
ということでした。露木先生の圧の入れ方は体験したことのないものでそれを真似てみようと試してみました。後者の2つはマッサージ療法の概念を取り入れたものです。解剖学的に細かくマッサージするところを分けて考えてアプローチをする。運動療法を併用する。これらを意識して行いました。実際にやってみると頭も体も馴染んでいなくてもっと練習しないといけないと分かりました。
続いてお相手の練習です。経絡按摩をしてくれました。経絡按摩とは高名な鍼灸マッサージ師だった故柳谷素霊氏が行っていたものだそう。柳谷氏が創設した東洋鍼灸専門学校で教えているもの。呉竹学園卒の私はその名前しか知りませんでした。今回、東洋鍼灸専門学校卒の先生が経絡按摩を行ってくれました。技術は呉竹学園で習う按摩とほぼ同じでしたが経絡を基本とした概念があることが違いました。経絡とは簡単に言ってしまうと気の通り道。全身にある気の経路(ルート)。経穴がポイントだとするとそれを結んでいるのが経絡というイメージです。その経絡を切るという考え。受ける方の体勢、手技の順番など独特であると感じました。というより知らなかったので私のこれまでの知識にある按摩とは違うなという印象でした。東洋医学では触診にあたるもので切経(せっけい)というものがあります。経絡を切ると書きます。今思い返すとなぜ“切る?”という疑問が浮かびます。学生当時はそういう言葉だと気にしていませんでしたが。経絡按摩でその意味が少し理解に繋がるように思います。
練習後は近況報告や情報交換をしました。母校が違うので習ってきたことが違います。学校の文化が異なります。私の東京呉竹医療専門学校と相手の東洋鍼灸専門学校は対極にあるようなところがあります。現代医学中心か伝統医学重視かみたいな。その点だけでも互いに学びがあります。得意分野が違うゆえに。母校は研究、論文といった学術的な面を重視しているので最初に紹介した呉竹医学会学術大会のようなイベントがあります。他にも鍼灸マッサージ教員養成科卒業研究発表会も。学内で研究発表をする場があることを紹介しました。興味をしめしていました。
一人ゆえに自ら場を作らないといけません。しかし誰かがセッティングしたものではない分、自由にできます。開業して会場(場所)を持ったことのメリットです。もうとうに学生ではないので自分で学ぶ場を作らないと成長できない立場です。この仕事は結局職人技だと考えているので修行はずっと続きます。いい練習ができました。
甲野 功
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