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~マッサージの話 マッサージ療法~

呉竹医学会学術大会抄録 実技セッション 疼痛性疾患に対する手技療法 より
呉竹医学会学術大会抄録 実技セッション 疼痛性疾患に対する手技療法 より

 

 

先月末に母校の呉竹学園が主催する呉竹医学会学術大会(以下、呉竹医学会と表記)に参加しました。呉竹医学会は呉竹学園が運営する東京呉竹医療専門学校、横浜呉竹医療専門学校、大宮呉竹医療専門学校の3校が一堂に会する唯一のイベントです。鍼灸マッサージ科、鍼灸科、柔道整復科の各2年生は1組に1演題この呉竹医学会で研究発表を行わないといけません。なお鍼灸マッサージ教員養成科は卒業研究があるのでその規定はありません。私も鍼灸マッサージ科、柔道整復科で2度発表をしています。他にも教職員の発表、附属施術所研修生の発表、卒業生の発表も行われます。更に学外からも講師を招き講演や実技セミナーを行います。ここ数年はお昼に特別講演、午後は実技セッションというスケージュール。今回の実技セッションは5名の講師を招き、2回ずつ実技セミナーを行いました。その際にこれは見ておきたいというテーマがありました。それが一枝のゆめ財団専務理事、筑波技術大学名誉教授である藤井亮輔先生の「疼痛性疾患に対する手技療法―膝痛に対するマッサージ療法を中心に―」でした。

 

藤井先生とは。私にとっては初耳の先生でした。昭和29年(1954年)生まれの69歳。筑波大学理療科教員養成施設卒業後、視覚支援学校と筑波技術大学で計38年間教職に従事しました。筑波大学理療科教員養成施設というのは視覚障害のある人に鍼灸マッサージを教える教員になるための施設です。私の出ている教員養成科は厚生労働省管轄で筑波大学理療科教員養成は文部科学省管轄となります。筑波技術大学で教鞭をとりながら、社会鍼灸手技学、臨床鍼灸学、臨床解剖学などの領域を研究し平成25年(2013年)に明治国際医療大学で博士(鍼灸学)の学位を取得します。令和2年(2020年)3月で大学を定年退職し、現在は同大学名誉教授。日本東洋医学系物理医学会日本温泉気候物理医学会卒後鍼灸手技研究会などに所属し、「一枝のゆめ財団」専務理事も努めます。「一枝のゆめ財団」は平成29年(2017年)に財団設立された鍼灸マッサージ療法に携わる人、志す人を応援する団体です。理事長に明治国際医療大学学長の矢野忠先生、副理事長に私も鍼灸マッサージ科時代に習った東京有明医療大学教授の坂井友実先生がいます。藤井先生は教育、研究、臨床の3本柱を追求してきた先生といえるでしょう

 

今回の実技セッションでは変形性膝関節症(膝OA)に有用な「マッサージ療法」を紹介しました。変形性膝関節症とはどのようなものかを説明するのは省略します。本題の「マッサージ療法」とは何かということ。藤井先生が定義する「マッサージ療法」とはあん摩マッサージ指圧師が行うマッサージ施術だけでなく関節モビライゼーション、運動療法が合わさったもの。つまり①マッサージ②関節モビライゼーション③運動療法の3つの手技で構成されるというのです。①マッサージは一般に人が思い浮かべる衣服の上から揉む、押すという手技ではなく、皮膚に滑剤(オイルやパウダーなど滑りをよくするもの)を塗って直接皮膚に触れて求心性(体の中心に向かって行う)の手技を行う技術です。軽擦という技術が基本となります。一般の人が思い浮かべるのは按摩、指圧になります。あん摩マッサージ指圧師はそこの区別をしっかりします。②関節モビライゼーションは関節運動学理論に基づいた他動的な運動療法です。対して③運動療法は患者さん自らが動く自動運動を行わせるものです。

 

マッサージ療法は3つの内容から構成される。それが重要なポイントであり、②、③の関節操作を考慮するのです。この実技セッションで見せた膝関節への②関節モビライゼーション離開法前方滑り法後方滑り法の3種類でした。医療関係者だと文字で内容が想像できると思います。離開法は膝関節が開くように(大腿骨と脛骨の距離が離れるように)牽引をかける。前方・後方滑りとは脛骨を前後に押すもの。前十字靭帯・後十字靭帯損傷をチェックする理学検査法と同じようなやり方です。これは関節そのものに対するアプローチです。続いて(変形性膝関節症へのマッサージ療法での)③運動療法は膝関節伸展(伸ばす)、屈曲(曲げる)に対して術者が抵抗を加えるものです。ここでは患者さんが自分の意志で膝の曲げ伸ばしを行いその動きに対して術者が抵抗を加えます。患者にとっては自動運動(自らの意志で行う運動)であり抵抗運動(動きに対して抵抗が加わっている)です。筋力強化やリラクゼーションの効果を期待しています。抵抗運動のやり方や効果は幅が広いのです。複数回抵抗運動を行うのですが回数によって抵抗の負荷を変えているところが興味深かったです。②関節モビライゼーションは関節に対する他動運動で③運動療法は筋肉へアプローチする自動運動と比較できます。オイルを用いるマッサージはエステのイメージが世間に浸透しているため美容、慰安の印象が強いかもしれませんが、元々は軍医が日本に持ち込んだもの。リハビリテーションや筋力強化の一面を元々持っています。②関節モビライゼーション③運動療法は再認識させます。

 

そして①マッサージ。私がこれまで持っていたマッサージの認識は主に静脈・リンパに対して求心性に行う手技というものでした。これは按摩・指圧が主に筋肉に対して遠心性で行う技術であり、その比較としてマッサージの特徴を捉えていたからです。ところがマッサージ療法の①マッサージは、(テーマが変形性膝関節症ということもあるのでしょうが)、関節を構成する部位ごとで考えていました。静脈・リンパという循環器ではなく運動器に対してのアプローチ。具体的には

・大腿前側:外側広筋・大腿直筋・内側広筋

・大腿內側:薄筋・縫工筋・大内転筋

・膝内側:内側膝蓋支帯・内側側副靭帯・驚足部

・膝外側:腸脛靭帯・外側膝蓋支带・外側側副靭帯

・膝窩後部內側:半腱様筋腱・半膜様筋・腓腹筋内側頭・腱間

・膝窩後部外側:大腿二頭筋(長頭/短頭)・腓腹筋外側頭・腱間

・膝窩後部中央

・膝蓋骨周囲・膝蓋骨下部(膝蓋下脂肪体) 

と細かく分類していました。これまでの私が習ってきたマッサージはもっと大きなエリアで分けていて、足の前面、側面、後面といったような。ここまで細かく考えていませんでした。解剖学の知識を駆使して丁寧に細かく考えている技術だと思いました。

 

またもう一つ驚いたことがありました。それは藤井先生が椅子に座った状態で①マッサージを行っていたこと。マッサージは体重移動が重要だとこれまで習ってきました。そのために下半身をしっかりと使う。そのように習いそう意識してきました。ところが藤井先生は座ったまま。ちょっとしたカルチャーショックでした。確かに静脈・リンパに対して行い、流すことを意識すると立って動いた方がいいのでしょう。ここでの①マッサージは膝関節を構成する運動器に対して細かく行うもの。座った状態で構わないでしょうし、その方が効果的なのかもしれません。何にせよ20年持っていたマッサージの常識が崩れたのでした。視野が広がりました。

 

このようにこれまで持っていたマッサージとは異なる「マッサージ療法」。①マッサージ②関節モビライゼーション③運動療法の3つからなる治療を目的としたもの。実際に目の当たりにしたことでマッサージの概念が変わりました。意識も。この経験をどのように自分のものにするのか。練習をしながら身につけていきます。

 

甲野 功

 

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