開院時間
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昨日は毎月恒例となっている学連OBOG練習会ラテンの部に参加しました。会場は今月末に白金にも新店舗をオープンさせる『DANCE GRAND Harajuku』で講師は東京外国語大学OBで元プロラテンアメリカン統一全日本チャンピオンの金光進陪先生です。
学連とは学生競技ダンス連盟の略称。社交ダンスを競技として行う学生競技ダンスをする全国の大学組織の集まりです。私は東京理科大学で学連と出会いました。この学連OBOG練習会は、原則学連を卒部した者が参加します。月に1回のペースで開催され、モダンの部とラテンの部を交互に行います。競技ダンスは2部門あり、それがスタンダード種目とラテンアメリカン種目です。スタンダードは20年くらい前の学連ではモダンと呼んでいて、私達世代の呼び方で学連OBOG練習会はモダンとしています。学連では入部して1年の部歴1年生の間はモダン・ラテン両方を練習し競技会に出場します。東京理科大学が所属する東部日本ブロックでは、部歴2年生からモダン・ラテンのどちらかを専攻として決定します。専攻種目の練習に専念し、競技会も専攻種目だけの出場に原則なります。私はモダン専攻でした。
1年生の時にはラテンのルンバ、チャチャチャの2種目を競技会で出場しました(デビュー戦にパーティーステップのジルバがありましたがこれは例外とします)。2年生でラテン新人戦という大会が当時はあり、それにチャチャチャで出場。3年生のラテン新人戦ではサンバに出場。これだけしか学連公式戦でラテン種目に出たことがありません。ツバメ杯という大会でスーパーシニアという余興のような部門でラテン種目3種をしましたがこれは公式戦とは言えない感じですので除外。1年生で最初に習うラテン種目はルンバとなります。よって経験が少ないラテン種目において最も長く練習したのがルンバということになります。
学連OBOG練習会は毎回テーマが事前に発表されます。今回のテーマは「結局のところファンポジション」でした。学連経験者ですとファンポジションが何かは察しがつきます。ルンバ及びチャチャチャになるのだろうなと。
学連という世界はかなり特殊で最初から最後まで競技ダンスをします。どういうことかというとアマチュアと言われるジャンルはだいたい社交ダンスから始めます。その名の通りパーティーで初対面の人とも踊れるもの。そこから技術を磨くことで他人と競い合う競技ダンスに移行していきます。ところが。学連は最初の本当に新入生歓迎くらいのところだけが社交ダンスであとは練習会が始まるとずっと競技ダンスです。社交、すなわち他者との交流を楽しむのが社交ダンスだとすると、他人よりも秀でることを念頭に置くのが競技ダンス。学連の人々は競技会のことを“試合”と呼び、“勝ち負け”で語ります。そのため競技で勝つための練習になるので厳しく、そして細かく練習をします。その現れとして基礎練習を滅茶苦茶やります。文字通り滅茶苦茶に。今ではサイドプランクといって体幹トレーニングとして世間に浸透している筋トレも30年以上前から当たり前のように練習メニューに入っていました。ポイズというダンスの構えをして立ち続ける。ウォークといって歩く練習をする。単純なステップを延々とくり返す。各大学で違いはあるでしょうが、だいたいどこでも根性練習と言われる長時間の厳しい基礎練習メニューがあるものです。社交ダンスサークルや社交ダンス教室ではまずやらない、時に狂気に満ちた練習。それを経ているのが学連とも言えます。
学連OBOG練習会は基礎練習をしっかりやることが特徴の一つ。一般的なグループレッスンではあまりやらない強度で行います。そこは講師も参加者も学連の練習会を経験しているという共通項があるからでしょう。私はこのようなスタイルが好きで、ただステップを教えて踊ってみましょうというものが好きではありません。そのため学連卒業後に少しだけ社会人サークルに入ったことがあるのですが短期間で脱退してしまいました。もっと年齢を重ねて近所の中高年が集まる社交ダンスサークルにも顔を出したことがあったのですがそれも馴染めませんでした。かといって競技選手に復帰することは考えられず。それをしたら生活が破綻すると思うで。そんなときに学連OBOG練習会が始まると知ってから参加するようになりました。
今回の練習会。準備体操をしたあとはルンバウォークの練習。ルンバの動きをしながら歩くのです。1年生の時に延々とやった練習です。母校の東京理科大学はラテン強豪校で入部した当時の4年生主将が後の全日本学生チャンピオン(冬全)に、同級生には後に全日本選抜学生チャンピオン(夏全)になる部員がいました。特に東京理科大学史上初の全日本選抜学生チャンプとなる男は1年生の頃から一人黙々とルンバウォークを自主練習していました。やってみると奥が深くて非常に難しいのですが、地味と言えば地味。それをしっかりと金光先生はやらせます。続いて前後ベーシック。これは前後にウォークします。数歩前に出て後退する。また前に出る。前後の方向転換が入ってくるのでウォークよりも動きが複雑になります。ただこれも前後に歩いて戻っているだけ。次に踏みかえ。その場で左右の足を踏みかえるのです。字で書くとそれの何が難しいのかと思われるかもしれませんがとても重要。私はモダン専攻でこの踏みかえにモダンの癖が抜けないことが今回の練習で分かりました。踵に乗ることができない。その後はクカラチャというラテン特有の横の動き。更にスイブルのウォーク。足を左右交互の横前に出して体を回転させていく動き。傍から見るとクネクネしているようですがきちんとすると全身運動で汗が噴き出ます。余談ですが俳優の鈴木亮平氏が実写映画『HK/変態仮面』で主演を務める際に、変態らしさを出すために社交ダンスを習ったといいます。我々がみるとその動きにルンバウォークやスイブルが入っていることが分かります。
ここまでで(社交ダンスですが)組むことなく一人でやり続けます。ここまで丁寧にグループレッスンで教えることはなかなかないでしょう。学連の練習会方式です。ここで私はモダンとラテンの違い、舞踏の違いが明確になり十数年越しの疑問がかなり解消された気がします。またこれまで金光先生が教えてきた内容が繋がってきた感じがしました。シンプルな動きを考えながら延々とするから気づくこと。それはまた別の機会に触れますが、こういう実感を得られるのが学連練習会の良さです。
そしてやっと本題の「ファンポジション」。これは学連1年生がルンバの最初の最初に習うステップです。性格には男女の位置関係を表す用語ですが一連の動きを示すことが多いです。オープンフェンシングポジションで男女が相対して、前後ベーシックをしてオープンヒップツイストをしてファンポジションに至る。もう30年近く前に東京理科大で習った一連の動き。これを細かく解説しながら繰り返していきます。二人の向き。体の回転量。位置関係。音の取り方。きちんと決まっています。何となくではなく、4/8回転、3/8回転、1/8回転と体の回転量があります。それをきちんとするとファンポジションになったときの男女の位置関係が重なることがありません。重ならいということはその後のステップがスムーズになります。足型、動きはモダン専攻でも嫌というほどやってきました。ところが正確なことは知らなかった。きちんと理詰めになっていたのでした。
回転量、位置関係に加えて特に重要だったのが男女の動作による駆け引き。リード・フォローというものです。モダンのリード・フォローよりもラテンの方がやることが多く高度です。それは私がそう感じているだけかもしれませんが、ラテンの方がやること・意識することがたくさんあります。これまで意識したことのないものがあります。フックとミート。これまでも何度か練習会で言われたのですが正直ピンときていなかったもの。学連OBOG同好会の方で新井健伊稚先生(元全日本ラテンファイナリスト)にも言われて引っ張り合うことがフックであることは分かってきました。反対に互いの体重が向き合うのがミートだと分かってきました。モダンの場合、ほぼずっと相手とミートした状態なので区別がなかったです。ファンポジションに至る過程でフック→ミート→フックとやることがあるのでした。ここは特別に新井先生も参加して金光先生と動きを実演してもらいました。おそらくトップ選手同士でないと細かい部分が見せられないのでしょう。異例のことで若い女性の先生を使うことがあってもマネージャークラスの先生が出てくることは今までなかったです。トップ選手同士だと確かに様々なことが行われていることが分かります。こんな単純(簡単)だと思っていたステップにここまで複雑で繊細な動作があったとは。驚きます。頭で理解しても体が対応できないのですが。
そして今回はルンバのファンポジションだけで終わりました。これまでは応用した派手なステップを練習会で紹介するのですが、今回はなし。ベーシックのベーシック、1年生が最初に習うステップだけ。それくらい突き詰めた練習会でした。私はやったことのないステップが出てくるとそれをこなすことに頭が一杯で何をしているのか分からなくなります。今回は本当に基本だけだったので考えて、理解しようとしてそれを実行しようとすることができました。本当に大切なことだということが分かりましたし、シンプルな分だけトッププロの凄さが(モダン専攻の私でも)理解できました。こんな地味な練習会をするのが学連の素晴らしいところだと思います。一般の社交ダンス愛好家相手だとつまらないと怒られそう。競技で勝つというのはこういう基礎練習を突き詰めることだよねという気持ちになりました。
金光先生が自ら今回は神回だと言いました。普通は受け手の生徒側がいうセリフです。自分で言うくらい充実したものなのでしょう。それは凄く分かりました。見栄えではなく本質をきちんと練習していこう。その想いが表わせる練習会だったのだと思います。私の母校、東京理科大学は部の名称が「舞踏研究部」といいます。そう研究する部です。学連では舞踏研究部(あるいは舞踏研究会)としているところが多く、学連選手のことを“舞研人”と称することもあります。学連とは研究してなんぼというところもあります。今回の練習会でファンポジション一つとっても金光先生らトップ選手は何年もかけて研究し練習し追及してきたのかが垣間見えました。
甲野 功
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